夏が来る
「今年の夏も暑いらしいね」
「毎年、10年に1度のとか言ってない?」
いつもは鬱陶しい6月も、今年は天文部のおかげであっという間に過ぎて行った気がする。
新体制になった直後はどうなるかと不安に思ったりもしたけれど、実際はそんな事を考える間も無く色々な出来事があった。
「これで自由だー」
「やばっ。補習だ」
「海派?それとも山派?」
周りから聞こえて来るのもすっかり夏の話題。
そう、恐怖の期末テストが終わり、季節は7月、もうすぐ学生生活最大のイベント夏休みが始まる。
テスト前に取り組んだロケット作りも面白かったけれど、最近僕が気になっているのは夏合宿の事だった。
予定では7月の末から2泊3日となっていたけれど、まずはテストに専念という事で、詳しい内容はテスト終了後のミーティングで、とだけ告げられていたからだ。
「お疲れ様です」
「おう、お疲れ!!」
「お疲れさまだよ〜」
珍しく遠山先輩が早めに顔を出している、やっぱりアウトドア関連になると血が騒ぐのかな。
「フフフ、久しぶりね」
「ご無沙汰してます。この前はありがとうございました」
珍しく都築先輩も来ているけれど、夏合宿に参加するつもりなのだろうか。
「フフフ、もうすぐ縁日もあるからよければいらっしゃい」
「わあっ、縁日ですかっ」
「去年行ったけれど楽しかったよ〜」
宮前先輩と高塚さんが楽しそうに盛り上がっている。
「もうそんな時期なのね」
結星先輩も何だか楽しそうにしているけれど、誰か行く相手とかいるのだろうか。
地元の縁日の思い出といえば、中学時代にも遊びに行った事はあるけれど、男同士では盛り上がる訳もなく、少し冷やかし程度に歩いた後は、結局家に戻ってゲーム大会とかになっていた。
今年はあわよくば、なんて思ってみたりもするけれど、みんなはどうするのかな。
「あの、みんな揃った様だし、そろそろ夏合宿の事もいいかな⋯⋯」
申し訳なさそうな声に振り返ると、幸田部長がプリントを抱えて立っていた。
縁日の話題で盛り上がっていたみんなも今日の本題を思い出したように、座り直して話を聞く。
「今年の夏も高見原で2泊3日の合宿がありますが⋯⋯」
気を取り直した幸田部長からの説明と共に、計画表が手渡される。
合宿地となる高見原という所は、どうやらこの間行った宙柱神社から更に上の方にある高原地帯らしい。
その名の通り、見晴らしの良い所で、夜の天体観測だけでは無く、キャンプ場や展望台があったりと自然に恵まれた環境で人気の有る場所みたいだった。
「フフフ、ひと夏の思い出作りね」
相変わらず不穏だけれど、さっき縁日で、出来れば⋯⋯。なんて考えていた今の僕には何も言えない。
「次に活動内容ですが⋯⋯」
観測テーマは夏の星座と流星群の観測、昼間にはバーベキュー大会も開かれるらしい。
「サマーキャンプみたいだねっ」
「高塚!! 自然をなめるなよ!! 全力で向き合いより良いキャンプにしよう!!」
遠山先輩はサマーキャンプを通り越して、完全にキャンプ気分だけれど、目的は天体観測ですよね?!
「信満、今回こそはしっかり観測するぞ」
「勝志さん、この前みたいな事は勘弁してくださいよ」
佐藤先輩と大山君は何かあったのだろうか。
その他、幾つかの注意点を確認してミーティングは終了した。
「ねえねえ、牧田君はどうするっ?」
「えっ?」
「ほらっ、宙柱さまの縁日の話っ」
すっかり忘れかけていたけれど、そんな話あったな。
「矢口君と一緒に行かないの?」
「こういうのってみんなで行くのも楽しそうじゃないっ」
確かにこの前の集まりも楽しかったけれど。
「結星先輩も紗英先輩も一緒に行くって言ってるよっ」
「えっ、そうなの?」
少し声がうわずったけれど、気付かれただろうか。
「とりあえず考えておくよ」
表面上は冷静に受け答えしたつもりだったけれど、僕の気持ちはもちろん決まっていたのだった。
すっかり季節外れの話となりましたが気にしない
次回、『縁日に行こう(仮)』は12月26日(金)21時頃更新予定です




