初めてのモデルロケット作り(前編)
「みんな、聞いてくれ。許可が取れたぞ。」
いつもは大人しめな佐藤先輩が興奮気味に話している。
「勝志さん、もしかして。」
大山君は早くも察した様で嬉しそうにしている。
この2人に関係する事といえば⋯⋯
「佐藤君、もしかしてモデルロケット?」
幸田部長も気になっていたらしくて、すぐにピンときたようだ。
「そうだ。次の週末、天候次第だけど校庭を使って打ち上げさせてくれるって」
「おめでとう」
「すごいね〜」
「おめでとうございます」
みんなからも祝福されて、なんだか照れくさそうにしている佐藤先輩。
実は、中間テストの前から顧問の高木先生に相談していて、テストの成績を見てから具体的な話を進める事になっていたらしい。
なんだかんだで、部活をまとめてくれている幸田部長とはまた違った頼もしい先輩だな。
「それで、当日は私達何をすればいいの?」
早速フォローに入ってくれる結星先輩もさすがだ。
「うん、いつかは自分達で設計したロケットも飛ばしてみたいけれど、今回は市販のキットを使ってみんなにも体験してもらいたいんだ」
「僕達でも組み立て出来るんですか?」
まさか自分の手でロケットが作れるなんて。
「少しコツはいるけれど、2、3時間あれば出来るから」
「じゃあお弁当作ろうか〜?」
宮前先輩の言葉に、この前の試食会がよみがえる。
「いや、午後からでも間に合うんじゃないかな。必要な物は用意しておくし」
少し慌てた様に断る佐藤先輩を見ていると、この前の試食会みたいな被害?があったのかもしれない。
「一応前日に天気予報もチェックしてまた連絡するからよろしく」
「は~い」
「わかりました」
そして迎えた当日は、梅雨時とは思えないほどの良い天気で、一足先に夏がきたような感じだった。
「あれっ、一輝。こんな時間から珍しいね」
組み立ては午後からだったけれど、男子組は先に発射台の準備があるという事で、早めに家を出たら途中で知り合いに声をかけられた。
「真理恵ちゃん、久しぶり」
「久しぶりだね。最近何やってるの?」
彼女は小野 真理恵。小学校時代からの連れ、友也の双子の妹で別の学校に進学して、最近はバスケ三昧だと聞いていたけれど。
「部活だよ。」
「陸上続けてるの?」
「いや、天文部」
「なんかイメージ違うけど、彼女でも出来たの?」
その言葉に思わず、ドキッとしたけれど何気ない風をよそおう。
「そんなんじゃないけど、たまたま知り合いが出来てさ」
「なんか怪しいけど、友也みたいにフラフラしているよりはいいんじゃない」
双子とはいえ、辛辣な言葉だな。
というよりも、誰に対しても遠慮なくハキハキと物を言うし、スポーツ万能系の明るいキャラクターは男女問わずに結構人気があった方だと思う。
小さい頃から友也と3人で遊んでいたりもしたから、女の子というよりは、仲の良い悪友みたいな感じもあったけれど、少し見ない間におとなびた感じもする。
「ごめん、私も部活あるから。またね」
そう言って駅前で別れると、ちょうど向こう側から大山君がやってくるのが見えた。
「おはよう。誰かといたみたいだけど、もしかして彼女?」
「違うよ、ただの幼なじみ」
「びっくりした。いつの間に、とか思っちゃった。」
「今は、天文部でそんな事考えている余裕無いし」
「そうなんだ。高塚さんは矢口君といつも一緒だし、先輩達はどうなんだろうね」
そんな会話をしながら、少しだけ焦りを感じる。
3年の先輩方はすでに付き合っていたりしていたけれど、2年の先輩達は気になる相手とかいるのかな。
少し前にも同じ様な事を考えていたけれど、またしても気になりだす。
「そう言う大山君はどうなの?」
「⋯⋯今はロケット作りひとすじだし」
「そうだね。今日の打ち上げうまく行くといいね」
答えるのに少し間があったのは気のせいかな。
とりあえず、今は目の前の事に集中しよう、そう思いながら僕達は打ち上げの準備を始めるのだった。
少し気になるキャラが出てきましたが、まずはロケット作りを、次回『初めてのモデルロケット作り(中編)』は12月5日(金)21時頃更新予定です




