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成り行き天文部員牧田君の日常 〜愉快なセンパイを添えて〜  作者: 甘木 


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1年生の外出(前編)

「お待たせっ」


「おはよう」


 今日は中間テスト前に約束していた、僕達天文部1年生だけの集まり。


 いつもはひと癖ある先輩達に振り回されてばかりな気がするから、こうして4人だけで行動するのはなんだか新鮮かもしれない。


 今日の予定は、午前中に高塚さんお勧めのパワースポット体験の後、午後からは大山君の案内で科学館の見学。


 どうやらこれは、他の3人に比べて、あまり天体に詳しくない僕の為に考えてくれた入門編ツアーらしい。


 持つべきものは友というけれど、天文部に入って良い仲間に恵まれて本当によかった。


「それじゃあ行くよっ」


「よろしくね」


 こうして僕達1年生だけの長い1日は始まったのだった。





「愛純、本当にこの道であってる?」


「大丈夫っ。ちゃんと教えてもらってきてるからっ」


 矢口君が不安そうになるのも無理はない。


 高塚さんの案内で電車とバスを乗り継いでやって来たのは、僕達の他には誰も居ないような山の中。


 僕も同じ様な気持ちだったけれど、高塚さんとは幼なじみの矢口君が口に出してくれて本当によかった。


 そして高塚さんは一体誰から何を教えてもらってこんな所まで来たのだろう。


「結構遠いんだねー。」


 大山君はあまり気にしていないみたいだ。


「うんっ。パワースポットって自然のエネルギーを貰うみたいなところもあるからねっ」


「なるほどね。今日行く場所もそんな感じ?」


「そうだねっ。もう少しで着くかなっ」


 スマホでナビを確認しながら山道を歩く事数十分。


 やがて目の前に見えてきたのは、古そうな石造りの鳥居とその先に続く長い石段。


宙柱(そらばしら)神社って読むのか」


「そうっ。天文部らしいところでしょっ」


 高塚さんの説明によると、昔、大きな音と共に光が流れ、この山の中に吸い込まれていったらしい。


「それって火球だったのかな?」


 さすが大山君だ、すぐにピンと来たらしい。


「大山君、火球って」


「うん、流れ星の中でも大きめのサイズで、燃え尽きずに地上に落ちた物が隕石だよ」


「そうなんだっ。それでねっ、空からの柱が降りた場所として祀られたみたいだよっ」


「そうなんだ」


「ねえ愛純、神社の由来はわかったけど、もしかして今からここを登るの?」


 あまり運動が得意では無さそうな矢口君が見上げているのは僕達が立っている所から更に上に続く苔むした石段。


「大丈夫っ。そんなにかからないはずだからっ」


 そう言って登り始めた高塚さんを、仕方なく僕たちも追いかけ始めたのだった。


「50、51、52⋯⋯」


 どうやら矢口君は段数を数えながら登っているらしい。


 初夏の陽気に少し汗ばみながらも登って行くと、少しずつざわめきが聞こえて来た。


 今まで自然の中の鳥のさえずりや、通り抜ける風が木々を揺らす音しか無かったのに、急に人の住む地域に戻ってきている!?


「ここって山の中だったよね?」


 石段を登りきった僕達の目の前に広がっていたのは、車が行き交う道や休憩所らしい建物。


 道沿いにはバス停もある。


 ここにもバスが停まるという事は僕達の辿ってきたルートは一体何だったのか。


 思わず高塚さんの方を見ると、誰かと連絡をとっているようだ。

 

「喉乾いたね、とりあえずジュースでも」


 仕方無しに3人で喉を潤しながら高塚さんを待つ。


「おまたせっ。すぐに来てくれるって」


「愛純、他にも誰か来るの?後、どうしてこんな回り道を⋯⋯」


「フフフ、良く来たわね。」


 なんでここに都築先輩?


 しかも巫女装束?!

 

「驚いたでしょっ」


 驚いたというよりも理解が追いつかない。


「フフフ、どうやら私の巫女姿に見とれている様だけど、年下は好みじゃ無いの」


 誰もそんな事思ってません。


「先輩、もしかしてここで就職活動を?」


「フフフ、違うわよ大山君。ここは私の実家」


「「「実家!?」」」


 事情を知っていた高塚さん以外はあまりにも予想外の展開に頭を抱えたのだった。


1年生だけじゃなかったんですか!?

そんな疑問はおいて『1年生の外出(中編)』は明日21時頃に更新予定です

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