活動再開
「終わったー」
「どうだった?」
「なんとかなるでしょ」
そんな会話が飛び交う放課後。そう、高校生活初のテストが終わりを迎えたのだ。
中学時代に比べて、科目数が増えた分戸惑いもあったけれど、それなりに出来た、と思いたい。
「こちらに来るのも久しぶりだな」
部室に向かう階段を上がりながらふと、そんな言葉が口をついて出てきる。
元々成り行きで入部した天文部だけれど、知らないうちに愛着がわいてきているのをあらためて思うと同時に、思ってもみなかったGWでの3年生の先輩達の引退で、さみしさもあるけれど、あらためて頑張っていこうという気持ちが湧いてきた。
「⋯⋯いらっしゃい。⋯⋯どのようなご要件で」
「?!」
この流れ、初めてここにきた時の???
「なんで居るんですか、竹内先輩!?」
「⋯⋯なんだ、牧田君か。⋯⋯確かに松井君は引退したけれども、私は全く顔を出さない訳ではないと言っていたはずだけれど」
そういえばそんな事も言っていた気がするけれど。
「そういえばそうでしたねー」
「⋯⋯この時期はテストの出来、不出来で悩んでいる人の悩みも解決してあげるのが、占星術を嗜む者の務め」
うん、なんとなくだけれど竹内先輩の進路は安泰そうな気がする。
そんなやり取りをしている間に他の部員達も顔を出し始めて、久しぶりに雑談なんかをしているうちに、また1つテスト期間からの解放感を感じた僕だった。
「皆さん、テストお疲れ様でした。また少しすれば期末テストがありますが、乗り越えてしまえば、夏期合宿での天体観測もあります。今年の計画でしゅが⋯⋯」
噛んだ。
ツッコむとまた幸田部長が不幸になりそうだから止めとくか。
「ちょっとみんな、聞いてくれないか」
佐藤先輩が何かを言い出すのは珍しいな。
「俺と大山の他に、モデルロケットって知っている人は?」
「モデルロケット?」
他の部員達もよくわかっていなさそうだけれど、ペットボトルロケットとはまた別なのかな。
「佐藤君、確かに宇宙関連だけど、天文とは少し違うかも⋯⋯」
知っているのか?幸田部長。
「確かに天文とは少し離れるけど、よかったら話だけでも」
そう言って佐藤先輩から説明されたのは、僕達みたいな学生でも比較的簡単に作る事が出来る、教育用の小さなロケットがあるらしい。
自作したり、市販されているモデルを使っての全国大会や世界大会でも高校生が頑張っているのだそうだ。
話を聞くと、もうすぐ世界大会の時期であったり、秋には日本での高校生の大会もあるらしくて、出来れば自分達でも作って挑戦してみたいらしい。
テスト前に大山君が言っていたのは、これの事だったのか。
「あたし達でも簡単にロケットが作れるって事〜?」
意外と乗り気だな、宮前先輩。
「せいぜい、高度100メートル程度の物だけどな」
「実際に打ち上げできるのか!!」
遠山先輩は新しいアウトドアのアトラクション気分なのでは?
「私も少し興味あるけれど、まずは高木先生に相談してみましょう」
しっかりと話をまとめてくれようとする結星先輩、さすがだな。
「フフフ、イベントをキッカケに深まる2人の仲」
あっ、都築先輩も来ていた。
2人の仲って、カップリングの内容は気にしたら負けのような気がする⋯⋯
「それで、あの⋯⋯今年の夏期合宿の事を⋯⋯」
あぁ、幸田部長の影が薄くなっていく。
どうやら、天文部では夏と冬の2回の長期休暇中に、星がよく観察出来る場所での2泊3日の合宿があるそうだ。
「合宿もあるけど、ロケット作りまで出来るのかな」
「意外と簡単だよ、僕と勝志さんはライセンスも持っているし」
大山君と佐藤先輩は、市販されている物を実際に作って飛ばした経験もあって、必要なライセンスも既に持っているらしい。
高校生になって初めての夏休みに向けて、色々楽しい事が待っている予感がする僕だった。
なんだか色々気になる話題が出てきましたが、まずはテスト前に約束していたお出かけ話をお届け
次回『1年生の外出(前編)』10月31日(金)21時頃投稿予定です




