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成り行き天文部員牧田君の日常 〜愉快なセンパイを添えて〜  作者: 甘木 


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13/19

GWの観測会(前編)

「それでは、今年度の第1回天文部観測会を始めます。3年生にとっては一つの節目となる活動であり、新入生には初めての観測会となりますが、先輩方との交流の中でしっかりと学び、これからの活動に活かしていってもらいたいと思います。」


 顧問の高木先生の挨拶の後は幸田部長だ。


「今回から僕達2年生が中心となって部活動の企画、運営を実行していきます。各自の得意分野を活かして、実りある1年にしていきたいと思いましゅ」


 噛んだ。


 フォローするように結星先輩が後を続けてくれる。


「今回の企画は、佐藤君とそれから大山君がメインとなって、スケジュールをたててくれました。ありがとうございます」


 いつもは少しぶっきらぼうな感じの佐藤先輩が照れくさそうにしている。


「まあ、基本的なこの時期の空がどんな感じかは大体わかっているとは思うけれど、この地方に合わせてのタイムスケジュールを計算して組んでみた。俺と大山は昔からPCで衛星の軌道計算とかも趣味にしているから、聞きたい事があったらいつでも聞いてくれ」


 普段は情報処理部と掛け持ちで、今まであまり絡む機会も無かったけれど、頼もしいな。




「よーし、まずは腹ごしらえだ!!」


 自然公園の隣にはドッグランやキャンプ場も併設されている。


 日没にはまだ少し余裕があるという事で、軽食を取りながら、今日の観測目標の説明や歓談の予定なのだが、ここでアウトドア好きの遠山先輩が張り切らない理由が無い。


 例年通り、ピザやホットスナックなどの軽くつまめる物と、ジュース類で良いのではという意見が出たのだが、家庭部でもある宮前先輩を巻き込み、キャンプ場の炊事棟で何やらアウトドア料理を振る舞ってくれるらしい。


「最初はこれだ!!」


 そういって配られたスナックの載った皿とカップが配られる。


 スパイシーな香りの立ちのぼるカップの中には、赤く染まった豆類とひき肉らしい物が見える。


 いきなり本格的な物が出てきたけれど、完全に遠山先輩の趣味だな。


「遠山君特製のチリコンカーンよ〜。まだ夜は肌寒いからあったまってね~」


 そう言われて一口食べると、少し刺激的な辛さに、それを包みこんでくれる豆類の甘みと、トマトの酸味が食欲をそそる。


「トルティーヤチップにつけて食べるのもおいしいよ〜」


 そう言って勧めてくれたスナックと一緒に食べていると、観測会の目的を忘れそうだ。


「そしてメインはこれだ!!」


 香ばしい煙の立ちのぼるグリルの上には、骨付きの肉がジュウジュウと音を立てて、いい感じに脂が滴り、焦げ目を付けている。


「こちらはあたしと結星の合作で〜す。特製スペアリブをど〜ぞ」


 そう言って取り分けてくれたスペアリブはあっさりと骨から外れ、口の中に香辛料の香りと肉の旨味を届けてくれる。


(これって、実質結星先輩の手料理なのでは)


 そんな馬鹿な事を考えながら、みんなとの会話も弾んでいった。





「お腹いっぱいだね」


「ちょっと眠くなってきた」


「これからが本番でしょっ」


 予想外に本格的なアウトドア料理を味わった僕達はすっかりくつろいでいたその時だった。


「バウッ」


「待ってよ〜」


 何処かからそんな声が近付いてくる。


 歓談を中止して声のする方を見ると、レトリバーっぽい茶色の犬と、必死に追い掛けてくる女の子の姿があった。 


 どうやらドッグランで遊ばせていた犬が、肉の匂いに誘われてこちらに向かってきてしまったらしい。


「嫌だー」


 みんなが、呆気に取られる中、突然幸田部長が必死に駆け出した。


「バウッ」


 その姿を見たレトリバーは、遊んでくれると思ったのか、その手に持っていたスペアリブにつられたのかはわからないけれど、尻尾を振りながらその後を追って行く。


「あ゛ーっ」


 噛んだ。


 違った、噛まれた?


 慌てて様子を見に行くと、倒れた幸田部長を嬉しそうに舐め回しているレトリバーの姿があった。


「本当に申し訳ありませんでした」


 追いついてきた女の子とその両親が申し訳なさそうにする中、レトリバーは知らない顔で残されたスペアリブにかじりついていたのであった。


果たしてこの調子で無事観測会は成功するのか!?

気になる後編はせっかくの3連休という事で、明日の21時にお届けします

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