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成り行き天文部員牧田君の日常 〜愉快なセンパイを添えて〜  作者: 甘木 


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12/20

相談してみよう

 先日の降って湧いた様な3年生の引退の話を聞いた後、僕は天文部にとって自分に出来る事は何かあるのか悩んでいた。


「先輩、少し相談があるのですが」


「なんだい、牧野君」


 その日、普段あまり部室に顔を出さない松井先輩を見つけた僕は、この間入りそこねたカメラ屋の件もあって、初心者用の機材について聞いてみることにした。


「あの、星を見るのに、初心者でも簡単な道具ってどん物があるでしょうか」


「そうだね、簡単な所からだと、まずは星と言っても、月や惑星みたいな太陽系の星を見るか、流星群みたいな物を見るかでも変わってくるけれど」


「色々種類が別れるんですね」


「専門的な事は、幸田君の方が詳しいけれど、まずは双眼鏡からというのもありかな」


「双眼鏡ですか?」


 星を見る道具といえば、望遠鏡と思っていた僕は、少し意外だった。


「双眼鏡にも天体用の専門的な物もあるけれど、普通のものでも構わないよ。簡単に星の位置を確認出来るし、他の用途にも使えるからね」


「そうなんですか」


「難しく考えなくても良いんだよ。それなりの機材なら部室にもあるから。」


「ありがとうございます」


「うん、安い物でも、1万円前後はするから。まずは今度の観測会で雰囲気をつかんでからでも遅くはないし」


「はい、そうしてみます」


「ところで、部活は楽しいかい?」


 少しドキっとする。


 こんなに早いとは思っていなかった3年生の引退を目前にして、何かやらなくてはという悩みを見すかされて様な言葉。


 そんな僕の動揺を見透かすように、先輩は優しく語ってくれた。


「僕も最初は星に興味があった訳でないのだけれどね。」


 少し意外な言葉。


「知ってのとおり、僕は元々写真部だったけれど、天体写真を撮るのを手伝って欲しいと言われて参加したのがきっかけで」


 そういうパターンもあるのか。


「いい経験になるかなと思って参加したら、色々と星の動きについて解説してくれてね」


 優しい人が居たんだ。僕もなれるかな。


「それからだんだんと星の世界にも詳しくなって」


 そうだ、僕も勉強していこう。


「気付いたら2人だけでも出掛けるようにもなってさ」


 おや?


「やっぱりお互いを高め合える存在って大事だよね」


 これってもしかして?


「その為にもこの先を見据えて頑張っていかなければと思っている」


 この先ってどちらへ?


「そうだね。いつか僕達の子供が進学してこの部活に入ってくれたら」


 先へ進みすぎでは?


「フフフ、おかげでこの2年くらい、色々捗ったわ」


 都築先輩、居たなら止めて下さい。


 


 その後は合流した他の部員達との雑談になり、僕は、色々な迷いも忘れて帰宅した。


「ちょっと出かけてくる」


 別に難しく考え無くてもいい。気が楽になった僕は、少し空でも見上げてみようかと、いつかの川沿いの遊歩道に足を向けた。


「懐かしいな」


 まだひと月も経っていないけれど、あの時、偶然に倉野先輩に会っていなければ。


 そんな事を考えながら途中のベンチに座り、空を見上げる。


 夕暮れから少しずつ暗さを増していく空には、まだ名前も知らない星の輝きが、その数を増やしていった。




「あれっ、もしかして牧田君?」


 聞き覚えのある声に振り向くと、結星先輩とオリーちゃん、宮前先輩も白い小型犬を連れて立っていた。


「お二人とも散歩ですか」


「そうね、私達、元々こうして散歩していて知り合ったのよ」


「色々な知り合い方があるんですね」


「牧田君と私もね」


「確かにそうですね」


「なになに〜。ちょっといい感じじゃん2人とも〜」


 2人で顔を見合わせて、あの日の事を思いだしていると、宮前先輩のちゃかすようなツッコミが入った。


「別にそんなのじゃ無いわよ。牧田君、また学校で」


 色んな知り合い方か、僕も松井先輩と竹内先輩のように⋯⋯


 少しだけそんな想像をしながら僕は家に帰った


 

 

もう少し真面目な回になるはずがどうしてこうなったのか

次回『GWの観測会(前編)』は10月10日(金)21時頃投稿予定です


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