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成り行き天文部員牧田君の日常 〜愉快なセンパイを添えて〜  作者: 甘木 


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10/20

気分転換に行こう

「春の天体かぁ⋯⋯」

 

 先日の部活でGWに歓迎会を兼ねた観測会があると聞かされて、とりあえず図書室で参考になりそうな本を借りてきた僕は、悩んでいた。


「春の星座、1等星、大三角形に流星群⋯⋯。」


 こうしてみると、星の事なんてあまり気にした事は無かったけれど、時期によって色々テーマがあるんだな。




「今度の週末空いてる?」


 メッセージは中学時代の連れからだった。


「久しぶりに集まらない?」


 進学先が分かれた何人かで近況報告みたいな感じで集まるらしい。気が早いけれど、同窓会みたいなものか


「何時集合?」


 気分転換になるかもと思った僕は、とりあえずそう返事をしておいた。




 週末、少し早めに家を出た僕は、駅前のカメラ屋を覗いてみる事にした。


 今の所は、個人で観測機材を揃えるつもりは無かったけれど、どんな物が売っているか、雰囲気だけでも確かめてみたかったからだ。


「あれっ」


 店の近くまで来た時に、ちょうど中に入って行く、見覚えのある2人連れ。


「もしかして、松井先輩と竹内部長?」


 なんだかいい雰囲気っぽい感じだったけれど、もしかして。


 例の高速詠唱は別として、普段は落ち着いた雰囲気でしっかりとした竹内部長と、クールで頼りがいのありそうな松井先輩、結構お似合いかも。




「時間余っちゃったな」

 

 カメラ屋に入りそびれた僕は、ショッピングモールか量販店でも行って時間をつぶそうかと行き先を変えた。


「あれーっ」


 交差点を渡ろうとすると、どこかで聞いたような声。


 声のする方を見ると、右手側の交差点から、こちらを見て、大きく手をふっている女の子。


「高塚さんだ」


 少しボーイッシュな格好をしているけど、間違いない。


 隣には、彼女よりもう少し背の高い女の子が居たけれど、高塚さんの手を引いて、違う方へ行こうとしている。


 何かを必死で訴えているようにも見えるけれど、そりゃあ知らない男がいたら、いきなりは緊張するよな。


 しかし、高塚さんは全然気にした様子も無く、こちらに向かってくる。


「こんな所で何してたのっ」


「そちらこそ、友達もいる⋯⋯し!?」


 高塚さんの隣にいたのは、女の子っぽいコーディネートをして、顔を真っ赤にしている矢口君だった。


 フリルの付いたブラウスに、キュロットパンツ、軽くナチュラルメイクもしている。


「こ、これには深い理由が⋯⋯」


「矢口君、落ち着いて」



 とりあえず近くにあった、ファミレスに入って席につく。


 そこで、説明してくれたのは、元々従兄妹同士で家も近かった事もあり、時々はお互いの気にいった服を交換して、遊んだりもしていたらしい。


 今日は高塚さんが服を見に行きたくて誘ったけれど、矢口君が女の子ばかりの空間を恥ずかしがったので、無理やり昔のノリで、ユニセックス系のコーデとメイクで女の子同士に見えるようにして無理矢理連れてきていたそうだ。


「頼むからこの事はみんなに内緒で」


 少し涙目になるとますます女の子っぽく見えてしまう。


 こう言うの、男の娘っていうんだっけ。


「大丈夫。誰にも言わないから。」 


 その雰囲気に、冗談でも似合っているよとは、とても言えなかった僕だった。


 


 その後、僕は昔の仲間達と合流して、ボウリングやカラオケで盛り上がったのだが、後で聞いたら、何かを忘れようとするかのように、かなりはっちゃけていたらしい。


「久しぶりだと結構盛り上がるよな」 


 ごめん、違うんだ。いや、違わないけど、違うんだ。


「たまにはまた会おうぜ」


 うん、そうだね。たまにならいいよね。たまたま知り合いに会うのはあまりよくないよね。


 


 気分転換に出掛けたはずが、とんでもない秘密を抱えてしまったような気がして、僕の頭からは部活の課題の事はすっかり抜けていったのだった。

 


天文部らしい話題は何処へ行ったのか

次回こそはという事で『GWの前に』は来週9月26日(金)21時頃投稿予定です



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