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龍の騎士団長の花嫁は、1年後に死ぬことになっている【連載版】  作者: 香田紗季


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27 アシュリーンのお願い

読みに来てくださってありがとうございます。

話の展開上、今日はかなり短めです。

よろしくお願いいたします。

 翌日から、グラディス王女は真面目に離宮で講義を受け、図書館で調べ物をし……そして必ず龍の騎士団の演習場が見えるところに行って、団員たちが訓練している所をうっとりと見ているらしい。ディアミドは定期的に騎士団や王城周辺の警備を兼ねて、龍の力で匂いを嗅ぐ。グラディス王女が身につけていた柑橘系の香りには独特の甘さがあり、ディアミドはその匂いを嗅ぐと苛々するのだが、それは爬虫類の要素を持つ龍にとって、若干ではあるが毒性を持っているからに他ならない。


 アシュリーンはディアミドからその話を聞いた時、グラディス王女の言動に一貫性がないと思った。いや、違和感しかない。グラディス王女は黒龍について研究していると言っていた。もし分かってやっているのだとしたら、許せないとアシュリーンは思った。


 一体、北の国は黒龍の何を調べているの?


「花嫁様は何を悩んでいるのかな?」


 寝る前の日記を書いていたはずなのに、手が止まっていたらしい。ディアミドが後ろからハグをしてきた。そのままその手が、膨らんだ腹をそっと撫でる。


「もうすぐだな」

「ええ。この子が私の力を吸い取る力が、どんどん強くなっているわ。出てくる時期が近いことを、この子も感じているのね」

「クリスタルの方はどうだ?」

「あれ以上力を注ぎ込んだら、壊れてしまいそうなの。だから、今は掌で握れるくらいのものに少しずつ、ね」

「あれだけ食べてもこんなに痩せてしまったんだ。まったく、この息子は強欲だな」


 ポンポンと蹴りが入る。アシュリーンには、この子が既に自分たちの会話を理解しているように思えてならない。


「だが、お前がお母様の力を全部奪ってしまったら、お母様と一緒に過ごせなくなるんだ。だから、絶対に余力を残せよ」


 蹴りが止まった。と思ったら、ディアミドの手に重ねるように、優しく何かが内側から押されるのを感じた。


「これは……手か?」

「さっきの場所より随分下だし……手かもしれないわね」

「そうか、お前、ちゃんと分かっているんだな」


 優しく内側から押し返すその力に、ディアミドとアシュリーンはお互いの顔を見合って微笑んだ。


「ああ、お前はよく分かっているんだな。お父様は、お母様とお前に会えるのを、楽しみに待っている」


 もう1度だけ内側から押し返されたのを感じると、感触がなくなった。


「ディー。1つ聞きたいことがあるの」

「ん? なんだ?」

「ディーには、生まれる前の記憶ってあるの?」

「いや、ないが、どうして?」

「理解しているとしか思えないでしょう? それでね、北の湖にいらっしゃるお父様に、当時のことを聞けないかと思うのだけど」

「どうして?」


 ディアミドはいやそうな顔をした。それはそうだろう、失った妻を思い続けて抜け殻のようになった父は、龍の力を使うための訓練以外、ディアミドに一切の興味を示さなかった。ディアミドは龍の騎士団長の地位を継いだものの、代替わりは宣言していない。代替わりしたら自分はもう不要とばかりに、妻を追いかけてしまいそうだからだ。だから、名目上だけでも、ドラガン家の当主はディアミドではなく、父のままにしてある。それを父も知っていて、「そうか」と言っただけで北の湖に行ってしまったのだ。


「お父様は、ディーが生まれた時のことをきっと覚えていらっしゃる。その(・・)瞬間について、予習をしておきたいの」

「ああ、そういうことか……分かった、手配しよう」


 ディアミドは逡巡していたようだったが、アシュリーンの頼みとあればと心を決めたようだ。


「だが、もうアシュリーンを乗せていくのは危険だ。だから、父さんに来てもらう」

「ディーが迎えに行くの?」

「今はグラディス王女の件もあるからアシュリーンの傍を離れない方がいいんだが……使いを送って、その使いに何かあったらいけないからな、必ず1日で帰ってくるよ」

「私のわがままだもの、大丈夫、この邸のみんなはちゃんと守ってくれるわ」

「いいや、そこは心配しろ。アシュリーンはこの邸の中にいたのにネイリウスに誘拐され、風の精霊に助けてもらって脱走したこともある。想像できないようなことをしでかすのがアシュリーンだからな」

「うう、もうその話はしないで!」


 ディアミドは明日休みを取って北の湖に行くと言う。ディアミドの不在を、グラディス王女にできるだけ知られたくない。本来休暇申請は3日前までと決まっているが、緊急対応として、明日の朝、連絡することにした。もっとも、休暇申請を認めるサインはディアミド自身がするのだが。


「最大限、用心するんだ。何かあっても、必ずこの黒龍の紋を通じればアシュリーンを見つけられるから」

「わかったわ」


 翌朝、ディアミドはまだ日も昇らぬうちに邸の草地から北の湖に向かって飛び立った。一刻もはやく、アシュリーンの元に戻るために。


読んでくださってありがとうございました。

次回、ディアミドのパパが登場します。

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