【挿話】春の精霊の長とアシュリーン
読みに来てくださってありがとうございます。
どうしてもうまくまとまらないところがあるため、今日も挿話となります。
よろしくお願いいたします。
「長! アシュリーンが虹の橋に連れ去られてしまいました!」
長と呼ばれた精霊は立ち上がると、遠くまで見渡せるレンズを持って塔の上に駆け上がった。レンズ越しに虹を探せば、人間界の方に降りていくのが見えた。
まずい。あんな幼な子が人間に捕まったら、何をされるかわからない。
長はすぐさま精霊王に相談した。だが、精霊王は捨ておけと言った。
「虹は迎えに来たのだ」
分かっている。だが、アシュリーンは、200年ぶりに生まれた春の娘なのだ。人間が木を切り、畑を作るようになってから、精霊が生まれにくくなった。自然界に濃い力が溜まらなければ、精霊は生まれない。力が溜まる前に、人間が農業のためとしてその力を使ってしまう。もっと待てば大いなる力を持った精霊へと変化し、自分たちを助ける存在になるというのに、待てない。人の命が短いとはいえ、困ったことだと嘆いていた所にようやく生まれたのがアシュリーンだった。幼い娘を守らねばと長はいきりたつ。
「暫く苦しむことになろうが、それはあの娘に精霊として与えられた試練。あの娘は、最も偉大な春の精霊となる。まあ、見ておれ」
それでも心配で、長はアシュリーンの気配を追って人間界に何度も降りて探した。近くにいるはずなのになぜか見つけられず、泣きながら精霊界に戻ったこともある。
数年後、長は精霊王に呼び出された。
「春の娘が、龍の子を産む」
長は仰天した。震えながら、長は尋ねた。
「アシュリーンは、どうなるのですか?」
「今、自分の力を少しずつクリスタルにため込んで、出産時に開放するよう準備している」
「もしや」
「そうだ。四龍の時と同じだ」
「我らにも、何かできることはないでしょうか」
「そなたたちの何人かを出産時に傍に行かせ、クリスタルの力が不足しそうになったら助けてやればよいだろう。いや、その必要は無いかもしれぬが」
「それほどの力を、アシュリーンは持っているのでしょうか?」
「それもあるが、龍の子がせっせと自分の力を、アシュリーンを介してクリスタルに注ぎ込んでいる。まあ、そなたたちはあくまで『保険』じゃな」
「ホケン……?」
ホケンの意味は、春の精霊の長にはよく分からない。だが、出産が近づいたなら、助けてやりたい。
「ならば、その前にアシュリーンに会わねばなりませんな」
「そうだな。いきなり同族が行けば、アシュリーンが驚くかも知れぬ。精霊教会を通じておくとよかろう。出産時には水の精霊ネイリウスもはせ参じるつもりらしい」
春の精霊の長は思った。
アシュリーンは苦しい時期を過ごしたが、自分たちとは違う形で仲間を増やしたのだな、と。
後日精霊教会を通じて春の精霊たちと面会を果たしたアシュリーンは、出産をサポートするという言葉に驚き、そして感謝した。ディアミドは、春の精霊の長がアシュリーンを連れて帰るのではないかとハラハラしたが、アシュリーンが「私の居場所はディーの隣よ」と言ったことで、ようやく落ち着いた。
「これだけのサポートが得られるのだから、私、絶対に死なないわ」
アシュリーンの力強い言葉に、全員が大きく頷いた。
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(使用人たちによる秘密のおしゃべり)
「ねえ、若様、よっぽど心配だったのね」
「そりゃそうでしょうよ、だって花嫁様のお仲間なのでしょう?」
「それにしても、本当にみんなピンク色の髪に黄色い瞳なのね」
「でも、よく見るとみんな少しずつ色が違うのよね」
「いわゆる個性って奴?」
「そうよね、人間だって髪の色も瞳の色もいろいろあるんだから」
「それにしても、今日はいつも以上に空気がふんわりしていたわよね」
「きっと春の精霊たちがいるからだね」
「「「「「違いない!」」」」」
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