表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍の騎士団長の花嫁は、1年後に死ぬことになっている【連載版】  作者: 香田紗季


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/42

【挿話】グラブジャムンな2人

読みに来てくださってありがとうございます。

この話の方向性について、少し考え直したいことが出てきたので、今日は挿話の形で投稿します。

ちなみに「グラブジャムン」は、インドのお菓子で、世界一甘いとされています。随分前に一度食べましたが、あれは甘党の私でも半分で十分でした。

よろしくお願いいたします。

 ドラガン家の邸の中にある広大な「離着陸広場」の一角に、10人は入れるかという東屋がある。元々何もなかったその場所に東屋を作ったのはディアミドである。


「邸の周りの庭園も、手入れされていて素敵よ。でも、私には自然のままの草地も必要みたい。大地や木や花から、力をもらえるような気がするの」


 そう言われたディアミドは、嬉々として庭師たちに東屋を作らせた。大きな物にしたのは、そこで寝転がるためである。


 誰が?


 もちろん、ディアミドである。


 少しずつお腹が膨らみ始めたアシュリーンは、自分の力が腹の子に吸い上げられているのを感じている。つわりはおさまったが、胃がまた小さくなってしまったアシュリーンは、一度に食べる量は少ないかわりに1日に8回食べるようにしていた。それでも足りないと、クリスタルに注ぐための力を補充すべく、アシュリーンは1日に3時間はこの草地にやってきて、自然の力を取り込んでいた。


 本来精霊は食事を必要とせず、今、アシュリーンがしているように、自然から力を取り込んでいるものらしい。アシュリーンは食べることが好きだから食事からも力を取り込んでいるが、それはアシュリーンが精霊界よりも人間の世界に長くいたことが影響している。


 3時間も外にいるとなると、一緒に行く侍女のエーファやサーシャだけでなく、護衛たちも一緒に日差しを避けられる場所が欲しい。ずっと日傘を指すことになるのはかわいそうだ、とアシュリーンは願った。


 そう、アシュリーンは、「みんなが日陰に入れるようなもの」を願ったのだ。間違っても、ディアミドがアシュリーンに膝枕してもらうために寝そべる屋外用ベッドを置くためではない。


 だが、ディアミドは、アシュリーンと自分の為の場所にしてしまった。当然アシュリーンはプリプリと怒った。


「わたしはみんなとここで過ごしたかったのに!」

「俺がいれば護衛も何もいらないだろう」

「安全面ではそうかもしれないけれど! でも! これじゃおやつも食べられないわ!」

「なんだ、甘い物がほしいのか?」

「ちが!!!」


 軽食も食べたいのだと言おうとしたアシュリーンの唇を、ディアミドの唇が塞いだ。いくら敷地の中にあって邸からは離れた場所であるといっても、真っ昼間の屋外である。抵抗しようとしたアシュリーンは、だががっしりと体をつかまれ、後頭部も支えられて、離れられない。


「んんん!」


 ようやく離されたと思った瞬間、最後にディアミドがアシュリーンの唇をペロリと舐めた。


「ディー!」

「どうだ、俺の力を補充してやったが、まだまだ足りないだろう? いくらでも龍の力をやるぞ? その方が、腹の子とも親和性が高いだろう」

「もう!」


 あの黒龍の紋を刻みつけられてから、ディアミドに口づけられると確かにディアミドから温かく大きな力が流れ込むのを感じる。だが、アシュリーンは大地や木や花と話をしながら、その力を少しずつもらいたいのだ。


「緊急の招集だってあるんだから、ディーは自分の力をちゃんと温存しておいて」

「だが、こうやって俺の力をアシュリーンに分ければ、アシュリーンの力になる。それがあのクリスタルにためられれば、出産のその時、俺も間接的にアシュリーンを救えるってことになるだろう?」

「ディー……」

「俺にも手伝わせてくれ。力はできるだけたくさんためておきたいのだから」


 ディアミドはごろりと横になると、アシュリーンの膝を枕にした。そして、そっとその腹に手を当てて言った。


「父さんは、お前が母さんを知らない子にさせたくない。だからお前も、母さんから力をとりすぎるなよ」


 トントンと腹の中からディアミドの顔の辺りに向かって蹴りが入る。


「おや、父さんの力ももらっているのに、既に反抗期か?」

「待って、胎児の反抗期なんて聞いたことないわ! あったら怖いわよ?」

「それもそうだな。いいか、3人で生きるんだ。自分だけ生きることを考えるなよ」


 再びトントンと蹴りが入った。


「やっぱり、トントンは肯定ね。理解できているんだわ」

「反抗期なんてないって言ったじゃないか。矛盾しているぞ」


 明るい笑い声が遠くで聞こえる。距離を取って待機している使用人たちは、ひそひそと語り合う。


「激甘」

「グラブジャブン並み」

「グラブジャムン? 何それ?」

「おいしいの?」

「激甘!」

「具体的に!」

「ピンポン球くらいの揚げドーナッツを」

「うん」

「シロップに漬けてある」

「シロップ!」

「そのシロップも激甘!」

「つまり、若様と花嫁様は」

「グラブジャブンである!」

「うわあ」

「食べたの?」

「食べた」

「どうだった?」

「別世界の甘さ」

「やっぱり」

「若様と花嫁様だ」

「わ~」


 今日も楽しいドラガン邸である。


読んでくださってありがとうございました。

明日には続きを書けるといいのですが、もし書けなかったら挿話にするかもしれません。

いいね・評価・ブックマークしていただけるとうれしいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ