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幕間:龍の伝説

この世界には人族、亜人族を含め数えきれないほど多種の生物が確認されているが、その中でもとりわけ頂点に近いのではないか、とよく謳われる魔物が存在する。


それは龍。竜ではなく、龍。

太古から天空を支配し続ける、人智及ばぬ最強生物だ。

巨大な翼で世界を悠々と飛び回り、その強靭な爪で如何なる敵をも破壊しうる。地上にはめったに降りてこないため、どこに生息しているのかも定かではない。何体いるのか、また何の魔法を使うのかすら不明の、誠に謎多き存在。極稀に人里上空を飛行することもあるが、人間などには目もくれず、すぐ雲の上に消えてしまうため、その姿を目に収めた者は龍神の加護が与えられるという風説が流れているほどだ。


どんな人間よりも賢く、どんな魔物よりも強く、またどんな生物よりも長寿である完璧な存在とされている龍。そんな龍に関して一つ、にわかには信じられないような噂がまことしやかに囁かれている。


それは、“龍は元々人間だったのではないか”、という噂だ。


人類は歴史上一度たりとも龍から被害を受けてはいない、と冒険者協会の文献には記されている。分類上は魔物であるのにもかかわらずだ。そもそも地上に降りた姿さえ確認されていない。これは冷静に考えればおかしな話であろう。身体の構造上、降りられないのではない。なぜなら飛行中の姿から、龍の胴体にも他の生物同様に四本の足が付いている事が判明しているからだ。これは要するに地に足を着ける習慣があるということ。


ではなぜ地上には降りてこないのか。

この命題は研究者達を大いに悩ませ、今まで様々な意見が飛び交った。


一つ、天空に浮島があるのではないだろうか。

一つ、地上の魔力が影響しているのではないだろうか。

一つ、龍種自体に何か呪いのようなものがかけられているのではないだろうか。


そして一つ、人類を意図的に避けているのではないだろうか。


最後の一つは特に反対意見が多数を占めたのだが、なぜか最も世間に浸透した。またこれが民衆にウケた結果、この意見に関して数多の迷信が生み出されたのだ。


そのうちの一説に、“龍とは元々人類の進化先であり、人間と関わる事の危険性を十分に理解しているため、本能で避けているのではないか”、というものがある。これが先ほど説明した噂の起源である。生物として圧倒的である龍が人間如きを恐れるなど、これくらいでしか説明が付けられないのだ。


人よりも遥かに優れた知能。それを強引に捻じ曲げるほど、人間という生物の恐ろしさが龍のDNAに刻みこまれているのかもしれない。実際、人類の危険度に関しての認識は、非常に正しいと言えよう。しかも今がピークではなく、時代が進むごとに文明は発展していくため、その危険度は徐々に上昇していくだろう。であれば、最初から人類と関わりを持たなければいいだけのこと。


しつこい様だが、もしこれが事実ならば、龍は元々人間であったとしか言いようがないだろう。


そしてもう一つ明言できることがある。

それは……


『龍の魂は人間の魂と同じ形をしている』。


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