青い翼
よく晴れた日、空の片隅に青い翼が現れた
りりしく、力強く
ふわりふわりと、俊敏に
雲の間を、すり抜けて
「あの翼は…誰の翼ですか?」
鳥に聞いても、違うという
天使に聞いても、知らないという
竜に聞いても、わからないという
落とし主がわからない、青い翼
広い、広い空の上で…優雅に羽ばたいている
高い、高い空の上で…パタパタと飛んでいる
「あの翼は…どうしてあそこにいるんだろう?」
自由に、気ままに
軽やかに、ゆったりと
雲をかき分け、日差しを浴びて
青い、青い空を背に…楽しそうに
白い、白い雲に向かって…はしゃぐように
正体がわからない、青い翼
正体はわからないけれど、幸せそうに羽ばたく翼を見て…みんな、うれしくなった
正体は謎だけど、幸せそうに飛び回る翼を見て…みんな、笑った
……やけに雲の多い、夏の日
いつものように、青い翼は空で舞っていた
いつものように、青い翼は空に浮かんでいた
いつものように、青い翼は空を楽しんでいた
……地上が、きらりと光った
青い翼は、なにかに撃ち抜かれた
青い翼は、空から落ちて行った
青い翼は、地上でバラバラになった
「あの翼は、一体何だったのでしょう?」
青い翼が何だったのか、みんな知らない
青い翼がどうなったのか、知るものはいない
……けれど
青い翼がいなくなった空を見て、みんなは悲しい気持ちになった
青い翼が消えてしまった空をみて、みんなは残念な気持ちになった
青い翼がいなくなった空から、みんなは大地を見下ろした
地上から空を見上げるものがいた
地上から空を狙うものがいた
地上から空に向かうものがいた
みんな、青い翼のようになりたくないと、逃げ出した
そして、空には……、誰もいなくなった