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『これが神々による異世界創造ゲーム!?:第六章』~ケモミミ獣人少女は未知なる洞窟を行く~   作者: 釈 余白(しやく)
第六章 未知の迷宮と新たなる冒険編

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118.キラキラ

 笑顔のチカマと震えているナウィン、対照的な二人と共に森へと向かってみる。お目当てはもちろんキラキラ光りながら浮遊しているなにかである。いったいあれはなんなのだろう。


「あの魔獣なんで動かないのかなあ。

 ずっとあそこでふらふらしてるね」


「間違いなく魔獣なのよね?

 光ってるのはなんでかしら。

 もっと近づかないとわからないわね」


 一定の場所から動かず光っている魔獣らしき生物をめざし、三人でじわじわと歩み寄っていく。やがてその姿がはっきりわかるくらいの距離までやってきた。


「えええ!? なにこれ!?

 チカマこれがなにか知ってる?」


「魔獣? 虫? 人?

 ボクしらないよ」


 三人がそばまでやって来ると、ようやくキラキラ光って浮遊するものの正体が判明した。そこには蜘蛛の巣に引っかかった小さな魔獣がいたのだが、手のひらに乗るくらい小さな人間? いやトンボのような羽の生えた妖精? だったのだ。


 まさかこの世界にこんなかわいらしい妖精がいたなんて驚きだ。だが人類に分類されている中にはいなかったはずだし、やっぱりこれがチカマの感知した魔獣と言うことになるだろう。


 蜘蛛の巣から懸命に逃げようとしている姿は見ていて痛ましい。魔獣と言っても確かに敵意はなさそうなので助けてあげることにした。


「妖精さん、今助けてあげるからね。

 こんなのに引っかかっちゃだめだよ」


 そう言いながら蜘蛛の巣を掃おうとしたが手で軽く引っ張ったくらいでは切ることが出来ない。もしかしてこれは蜘蛛型の魔獣が作った巣なのだろうか。ミーヤはポケットから包丁を取り出して蜘蛛の糸を少しずつ切っていった。


 ようやく自由を取り戻した妖精は嬉しそうにミーヤの周囲を飛び回っている。どうやら会話はできないようだが意思疎通は可能に思える。


「自由になれて良かったわね。

 名前とかあるのかしら、そもそも言葉通じるのかな?」


「ミーヤさま、これ妖精っていうの?

 ボク初めて見たけど全然知らないや」


「あの、えっと、あの……

 私も妖精って言うこれ? 知らないです。

 ミーヤさまは物知りなんですね」


 どうやらこの世界で広く知られている存在と言うわけではなさそうだ。でもこれは昔からよくある物語に出てくるような、典型的な妖精の姿だ。それが魔獣に分類されていることに驚くとともに、なんだかかわいそうな気もしてくる。


「ねえチカマ?

 探知すると動物と魔獣の違いが判るんでしょ?

 それによるとこの子は魔獣で間違いないの?」


「ううん、この妖精ってのは動物。

 魔獣はあそこにいるの」


 チカマはそう言って木の上を指さした。その先をよく見てみると木の枝のように擬態した何かがいるようだ。もしかしてあの細長いのが蜘蛛の巣の主ってこと!?


 魔獣化した木の枝のような蜘蛛なのだろうが不思議と敵意は無いようだ。魔獣は見境なく攻撃してくるものだと認識していたが、実際にはそうでないものがいるなんて思ってもみなかった。


 とりあえず蜘蛛の魔獣は害もなさそうだし放っておいていい。今は妖精のことが気になる。もしこちらの言うことを聞いてくれるのなら連れて帰ってレナージュに見てもらいたいと考えていた。


「妖精さんは私の言っていることわかる?

 まあどっちでもいいけど一緒にいらっしゃいよ。

 あなたがどういった存在なのか興味あるのよね」


 しかしやっぱり言葉は通じてい無いようで返事は無い。それでも手を差し出してみると近くまで寄ってきては離れていき興味を持っているようにも見える。なんとなくネコくらいの知能はありそうだと思い、餌で釣ることを思い立った。


 だが妖精がなにを食べるのかなんて知らない。とりあえずポケットから果物を取り出して差し出してみると、リンリンとかすかな鳴き声のようなものを発して近くまでやってきた。


「果物でいいのかしら。

 干し肉もあるわよ?」


「ミーヤさま、動物調べるやつは?」


 そう言えば生体研究スキル使うのを忘れていた。試してみると『シルフ Lv12』と表示された。ミーヤやチカマよりは大分高いレベルなのでもしかしたらかなり強いのだろうか。


 こうしてステータスを確認しているうちにいつの間にか持っていた果物が奪われており、少し離れたところで果実にかじりついているシルフを眺めることになった。


 餌を与えたことで信頼を得たのか、ただ単におかわりが欲しいのかわからないが、妖精はミーヤの周囲をクルクルと回ったあと肩へと腰を下ろした。


「ミーヤさま、妖精も仲間になるの?

 食べたらだめなんだよね?」


「そ、そうね、食べるのはちょっと止めておいてね。

 一緒について来てくれるようなら仲間になれるかもしれないわ。

 どうかな妖精さん、一緒に来る?」


 そう言ってもう一つ果物を取り出すとミーヤの手の上で果実へしがみついてかじりはじめた。よほどお腹が空いていたらしい。蜘蛛の巣に引っかかってから何日経っていたのだろうか。


 シルフが果実に夢中になっているうちに、ミーヤたちは馬車のところまで戻ることにした。収穫した野菜をたくさん抱えて来た道をトコトコと戻るうちにシルフは逃げてしまうかと思ったのだが、餌を貰える相手と安心したのか馬車までついて来てくれた。


 まだまだ起きる気配の無いレナージュとヴィッキーたちを眺めながら、昨晩遅くまで行われていた宴の後始末をする。出掛ける前に果物を食べたくらいだったのでお腹も減ってるし、ミーヤたちも遅い朝ご飯を食べることにして用意を始めた。


「ミーヤさま、芋とチーズのやつたべたい。

 あと羊の乳もちょうだい」


「わかったわ、ナウィンも同じでいいかしら?

 ベーコンもつけようか?」


「はい、えっと、あの……

 ありがとうございます」


 チカマのリクエストで千切り芋のチーズ焼きを作りながら、スキムミルクを水に溶かして二人へ手渡す。収穫作業でのどが渇いていたのか、あっという間に飲みほしてしまったのでおかわりも渡した。


「はい、出来たわよ。

 熱いからやけどに注意して食べてね」


「はーい、いただきまーす。

 おいしいね、ナウィンもこれ好き?」


「あひ、えっと、あの……

 あつあつでおいひいです。

 はふう、ほっほ」


 今日は狩りに行くと言っていた六鋼の人たちもまだ寝たままで、夕飯に肉が使えるか怪しい雰囲気である。このまま待っているよりもミーヤたちで行ってきた方が間違いないかもしれない。


「これからどうしようか。

 みんなが起きるのを待つよりも私たちで狩りへ行った方がいいかなって思ってるんだけど」


「ボク鳥がいっぱいいるとこ知ってるよ。

 あとトカゲもいっぱいいるの」


「全員分獲れるかしらねえ。

 昨日は猪か熊でも狩ってくるって息巻いてたから期待してたのにね」


「大きい方がいいの?

 それなら牛がいるところあるよ」


 牛! この世界に来てから初めて聞いた言葉だ。牛一頭仕留められれば一週間くらい余裕で賄えるだろう。でも野生の牛なんて見たことないしどんな種類なのかもわからない。もしかしたら水牛やバッファローのような動物だろうか。


「その牛って私たちでも倒せるくらいの強さなの?

 見たことないから見当もつかないわ。

 危ないならやめといた方がいいと思うのよね」


「うーん、わかんない。

 でも大きい角があって強そうかな」


「とりあえず見るだけでも行ってみようか。

 ここから近いの?」


「もう一つの洞窟のほうだから近いよ。

 さっきの畑よりは先だけどね」


 どうやら歩いて数十分程度のようなので行ってみることにした。念のためナウィンはまた留守番と言ったらかなり不満な様子だったが、冒険者は無茶をする物じゃないと知ったようなことを言って説得に成功した。


「それじゃ牛のいるところへ出発!」


 ミーヤとチカマはナウィンへ手を振って歩き出す。するとシルフは何のためらいもなくミーヤの頭の上に乗り、一緒についてくるのだった。


シルフ:風属性の妖精でかなり珍しい存在らしい

枝蜘蛛:木の枝に擬態しつつ巣に掛かった獲物を待つ。臆病で他の生物の気配があると動かない


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