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君がいるから

朝、やはり、彼女はいつも通り笑顔だった。


「あのさあのさ!!!」


いじめっ子の一人、千巻ちまきほたねが他のメンバーにコソコソと耳打ちする。


「私さ!見ちゃったんだけど!あの二人、屋上にいて何か話してたよ!??!」


「おお、これは一大スキャンダルだな」


「きゃーーーー胸熱ぅぅぅ!」


僕と時雨さんが屋上にいたことがバレた?あの場所は滅多に人は通らないのに……。


「吉沢と何話してたん?教えてくれるかなぁ?」


「何の事?」

彼女は意味が分からないというように吐き捨てた。


「惚けても無駄だよ?」


「興味ない。それより勉強でもしたら?そんな話ばかりでしか盛り上がれないあなた達よりゴリラの方が賢いわよ?」



クラス中の空気が凍った。僕も彼女が、一瞬何を言っているのか分からなかった。だけど、


机と椅子が壊れる音を聞いて、僕は咄嗟に彼女の手を引き、教室から逃げた。


「いきなり何?」


屋上付近の階段にまで走って、息切れしてる僕を睨みつけてくる。


「い、いきなり、何言ってんの!」


「思った事を言っただけなんだけど」


「またいじめられるよ!!もっといじめエスカレートするよ!」


「ふうん……私っていじめられてるんだ」


彼女が何を言ってるのか、現実がわからなかった。でも、ひとつ疑問があった。


「別に……」


彼女の悲しそうな表情を、僕は見逃さなかった。


「時雨さん、昨日の出来事、覚えてる?」


「………………さあ。起きたらベッドの上で、いつも通り学校に行って、毎日それの繰り返し、だったけど」


彼女の言葉で、疑いが、確信に変わった。


そう、この子は。時雨唯しぐれゆいは前日の記憶がない。だから、放課後泣いていても、次の日何もなかったかのように現れたのかもしれない。でも、どうして急に性格が変わったみたいに、あんなこと言ったんだろう……。


僕が考えていると、先生が僕達を見つけ、教室に戻れと言ってきた。さすがに今教室に戻るのは、空気が重い。でも、先生に言ったところでいじめはエスカレートするだけだろうと思った。


先生に促され、教室に戻る。クラス中の目線がすごく痛かった。


昼休み。


「時雨さん、ちょっと来てくれるかな?」


先程煽られた吉沢が、指の骨をポキポキと鳴らしている。


「吉沢く~ん。さすがに女の子相手に暴力は可哀想だよ~」


「殴ったり蹴ったりはしねぇよ。でも、こいつには俺が恥をかいた倍恥をかいてもらう」


吉沢は、ハサミを持って、開いたり、閉じたりしている。時雨は、聞こえているのか無視しているのか、分からないが、本を読んでいた。その行動が、吉沢をもっとイライラさせた。


「放課後、校舎裏に一人で来い」


「ええ、分かったわ」


恐れることもなく、怖がることも無く冷徹に答えた。


放課後。


『一人で来てと言われてるからあなたは来なくていい。足でまといだし』


彼女からそうは言われたが、気が気でなく、隠れていることにした。


校舎裏には、男が三人いた。


「話って何かしら?ゴリラと話してる時間はな……」


きゃっ!!!


女の子の悲鳴が響いた。制服をハサミで切り刻まれ、肌が露出しており、男から押し倒されている。


「女の癖に、舐めやがって!!!!」


「やめろ!!!!」


吉沢が、ハサミを振りあげようとした時、僕は動いていた。


「お、彼氏君の登場じゃん」


「お前ら、時雨さんから離れろ」


「お前ら、カップル共々殺してやる」


押し倒している男に突き当たり、よろけた所で、彼女を立ち上がらせる。


「唯走れ!!」


「で、でも……あなたが……」


「俺のことはいい!どうせ一日だけの記憶なんだから!!」


「逃がすと思うか?」


吉沢はポケットからナイフを取り出し、突っ込んでくる。男二人も押し倒そうと、突っ込んできた。


「はっ!!定番のシチュか、つまんねーな」


「ガキがああああああああ!!!!!」


なんで僕ここまで言えるんだろう。


今まで、嫌なことを嫌だとも言えなかった。助けて、って言えなかった。ずっと周りに流されて、苦しかった。家族も、先生も、もちろん分かってくれる友達もいない。そんな人生が嫌だった。


「少しは、俺の人生輝けたかな」


「そうだな。あの世で、生き様自慢でもしてきな!!!」


「何やってるんだ!!君達!!!」


大声で何かを叫ぶ聞いたことのある声を聞きながら、僕の意識はプツリと切れた。



目が覚めると、保健室だった。


保健の先生から、校舎裏で倒れていたと聞かされたが、記憶がなかった。


その日はそのまま帰宅した。


そこからは彼女と話さなくなった。時雨唯に、友達が出来たようで、屋上にも来なくなった。


ある日の昼休み。僕は、いつも通り屋上の階段前で弁当を広げていた。コツコツと階段を上ってくる方に顔を上げると、時雨唯がいた。いつかのように、何事もなく、南京錠を鍵で開けると、屋上の扉を開ける。


「付いてこないで――――――って、二回目かな」


屋上に出るとあの日と変わらなかった。吹き抜ける風。照りつける太陽。雲ひとつない青空。でもひとつ違うことがある。


「あの時は、助けてくれてありがとう」


「記憶戻ったの?」


「いいえ。記憶はリセットされているようです。だから、初めて出来た友達にも呆れちゃった」


そう言う彼女のはにかむ姿はとても可愛かった。


「でも、あなたとの記憶はあるみたい」


「じゃあ、僕が君を助けるよ」


「余計なお世話。――――だけど、あなたとならいいかもね」


ふふっと彼女は笑う。



照りつける太陽の下に影が二つ出来ていた。その影は、ずっとずっと。重なっている。

















勢いで書きました笑


読んで下さった皆様ありがとうございましたm(_ _)m

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