始まりは拒否から始まる
「あんたなんて死ねばいいのよ!」「学校に来るな寄生虫!」「きめぇんだよ、早く死ね!死ね!」
僕の教室は今日も地獄だった。
「こいつ、|今日も泣いてるぜ。うわーー涙きもーーーー!!」
「感染するかもしれないから早く行こうぜ」
ホームルームが終わり、放課後になると、いつもの
罵詈雑言の地獄が始まる。これをなんて言うか。僕は知っている。あってはならない『いじめ。』
担任がいなくなると見計らったように、毎日のように始まっていた。メンバーは五人。男子三人女子二人。クラスメイト達は、自分達は被害を被りたくないのか、知らない振りをしている。噂にもなっていない為、教師達も知らない。完全な地獄絵図。
静かになった教室で、今日も彼女は酷く深く深く傷ついていた。声を抑えて泣いていた。
髪が顔まで隠れていて、ショートカットの女の子。時雨唯
ただただ、この教室には泣き声が響くだけ。夕日が差し込み彼女を照らす。
この学校に入学して三ヶ月。僕は、彼女が少し気になっていた。
毎日いじめられているのに対して、朝登校してくると、笑顔で挨拶しているのだ。もしかしたら、心の強い子なのかもしれない。仲良くなりたくて努力してるのかもしれない。でも僕はいつかの彼女の口から出た「死にたい……」という弱音と、腕にあるリストカットの後を見逃さなかった。でも、おかしいのだ。まるで記憶が消えているかのような振る舞いで、前日死にたいなんて言ってた子には見えない。そして明らかなのが、リストカットの跡が消えていた。
ある時は、立ち入り禁止の屋上に入り、フェンスを登る、泣きじゃくりながら、いじめっ子に反論、そんな事をしていた。にも関わらず、朝になると、忘れている、いや、元々、そんな事なんて起きてないかのように振る舞う彼女に僕は、少し興味があった。
クラスメイト、僕は当然記憶があり、いじめっ子達はもちろん、クラスメイトの一部も、とても気持ち悪がっている。
女子に話しかける、それもいじめられている女の子に話しかけて、僕までいじめれないか不安だったけど、興味がある、と同時に、助けたいと思っていた。
「時雨さん」
僕は、席を立ち、彼女の席に向かい、彼女の名前を呼ぶと彼女は、寂しそうにこちらを見つめる。
「来ないで」
酷くかすれた低い声。それが、僕と彼女が初めてした会話だった。