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消えゆく世界で星空を見る  作者: 星逢もみじ
復讐編

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33/38

三十二、綻び

「――以上となります」

「そうか。また何かあったら教えてくれ」

「分かりました」


 報告を終えた桜護衆が一礼して退出する。


「これで五人目か……」


 報告書に目を通しながら国王は溜息をつく。

 桜樹国では桜星祭後の約三箇月間で、行方不明者の数が五人もでていた。

 これまでは行方不明者が出たとしても、二、三年に一人のペースだっただけに、その数は明らかに異常な数字だった。

 行方不明になった五人はそれぞれ出身が別だったが、その中には半年前に桜護衆になった月見里諦止の名前も入っていた。


「それにしても、どうして急に行方不明者が増えたんでしょうか。この数は異常です」

「……さてな」


 国王は椅子に座ったまま、目を閉じて粟峯凛心の問いに答える。


「行方不明になった身内の方に聞いてみても、変わった様子は見受けられなかったみたいですし。そうなると、やはり何らかの事件に巻き込まれたとしか考えられません」


 月見里諦止を含めた行方不明者が現れ始めてから早三箇月。

 夢霞が果ての存在を倒しに行ったきり戻らなくなってからも、三箇月が経過していた。


 国王は夢霞の読心術で、いつ誰が殺人を行おうとしているのか分からない以上、できるだけ国民の不満が溜まらないように、贅沢を尽くした過剰なまでの政策を行ってきた。

 このままいけば国の財源はすぐにでも尽きてしまう。

 それが分かっていても、もし殺人事件が起きたらと考えると止めることはできなかった。

 それほどまでに国王は、桜樹国内で()()()()が起きる事を恐れていた。


 夢霞がいない今、殺人事件が起きれば隠蔽することは不可能。

 そもそもが、夢霞の力を借りなければ殺人事件数ゼロなど到底無理な話だった。


「今日も手掛かりは無し、か……」


 粟峯凛心も、また酷く落ち込んでいた。

 少しの間だったが、共に時間を過ごした人間が自身の出した任務を最後に姿を消したとあっては、責任を感じるのも仕方なかった。


「私はもう一度ポソリ村の周辺を捜索してこようと思います」

「何度も言うようだが、責任を感じる必要は――」

「いえ、彼を任されたのは私ですから」


 この三箇月間で何度も交わされたやり取りだった。


「分かった。だが十分に気を付けろ、もし何者かの仕業なら何が起きるか分からないからな」

「分かってます。国王はこの後どうするつもりですか?」

「今日も雑務だな。各国から送られてきた星影の情報を整理しなければ」

「そうですか。……国王も少しは息抜きしてくださいね」

「……ああ」


 覇気の薄れた顔をした国王は、未だにシアエトの死を引き摺っていた。

 星影との防衛戦が終わったすぐ後にシアエトの死は伝えられた。

 国王の悲しみは他の人の比ではなかったが、職務に追われる毎日で今日に至るまでゆっくりと休む時間は取れていなかったのだ。



 ♢



「はぁ……」


 執務室を出た凛心の表情は曇っていた。

 それは行方不明者の手がかりが得られていない現状への焦りもあったが、国王に対して疑いを持ってしまっていたからだった。


 三箇月前のある日、国王宛に一通の手紙が届いた。

 その手紙を見た後、どこか慌てた様子で出掛けた国王は、帰ってきてすぐに封印洞窟への立ち入り禁止令を布いた。


 それまでは国民に封印洞窟の場所を隠してきたが、封印石が破壊されたことによって桜護衆が警備しなくなったのもあり、万が一の事態を考慮して、間違えて近づかないようにと封印洞窟の場所を桜樹国周辺の人間にも知らせた。

 更に、封印洞窟の後始末をするという理由で桜護衆の立ち入りも禁止されていた。

 その時は何も疑惑を持たなかったが、その日を境に行方不明者が現れ始めたように粟峯凛心には思えてしまった。

 一度疑いの目を向けてしまっては、直接確かめるしかその疑惑を晴らす方法は無い。


 だが、もし想像通り一連の行方不明者の件に国王が関係しているなら、封印洞窟を調べた事が国王に知られれば無事では済まないかもしれなかった。

 それでも、他の場所は既に何度も調査をしており、手掛かりがあるとすればもう封印洞窟しか思いつかなかった。


「……行こう」


 そんな訳が無いと自身に言い聞かせながら、心のどこかで覚えた一抹の不安を取り除くために、凛心は封印洞窟へと向かった。

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