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消えゆく世界で星空を見る  作者: 星逢もみじ
果ての存在編

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22/38

二十一、終戦

 迫りくる星影を次々と斬り倒す。

 国王が変星を倒してくれているおかげで、諦止と凛心は星影との戦闘に集中することができていた。

 更に、倒壊した家々から火災が発生したこともあって、星影の姿は僅かだが視認し易くなっていた。


 それでも、星影の数は時間が経つ毎に増えていき、最速を更新する勢いで星影を倒し続けても全く休む暇が無かった。


「くそっ……!」


 戦闘の最中でも目の端に映る犠牲者の姿、崩壊する家々を見て諦止は胸が張り裂けんばかりに痛くなる。

 躰も疲労で音を上げる中、内から湧き出る悲しみと怒りを力に変えて最後の一振りを何度も繰り返す。


 隣で戦う凛心も疲労の色が濃く見えてきていた。

 自身を護ることで精一杯な諦止と違い、凛心は諦止だけでなく周りの人間も可能な限り援護しながら戦っていたからだった。


「ぐおおぁあ!!!!」


 そんな中、変星を一人で相手取っているにも関わらず、国王はまさに人外といえる速度で星影や変星を薙ぎ倒していた。凛心の強さにも目を見張るものがあったが、国王は別格だった。


「ぬぐっ!」

「あっ!?」


 そんな事を考えていると、国王から苦悶の声が漏れる。


「はぁ、はぁ……大丈夫ですか、国王様!」


 凛心が心配そうな声を上げながら国王に声を掛ける。


「ああ、問題ない!!」


 いかに剣技や立ち回りで他を圧倒していても、既に老齢。

 体力は全盛期と比較にならないほど落ちているのだろう、(かす)る程度だったが初めて星影の攻撃を受けていた。

 少しでも躰を休める時間があればよかったが、更に激しさを増す戦場にそんな暇は一瞬たりとも存在しなかった。


(まだか……! まだなのかっ!!)


 既に永遠とも思える時間が過ぎたように感じた。

 星影に呑まれたのだろう。戦っていた桜護衆も一人、また一人と姿を消していた。

 時間稼ぎをするのも限界だった。


(このままじゃ、全滅する……!)


 そう思った瞬間、星影達の動きが止まる。


「な、なんだ……?」


 思いが通じたのだと思いたかった。

 周りを見ても同じように状況が掴めていないようで、一様に困惑の表情を浮かべていた。


「……これは……?」


 凛心も同じ気持ちのようで、理解ができていない様子だった。


「凛心――」


 話しかけようとした矢先、まるで初めからそこにいなかったかのように、星影達は(もや)のようになって消えてしまった。星影を倒した後の現象と全く同じだった。


「……終わった、の……?」


 周囲の人の想いを凛心が代弁する。

 その答えを知りうる人間はこの場に一人だけで、自然とその人物に視線が集まる。

 国王も困惑していたようだったが、なんとか説明しようと口を開く。


「……正直、まだはっきりとは言えない。だが、これまでの星影は倒さない限り消えることはなかった。そしてこの消え方は星影を倒した時と同じだ」

「ということは……」


 周りの人達も同じ考えに行きついたのか、一人、また一人とざわつき始める。

 国王は暫く思案する素振りを見せた後、意を決したように宣言する。


「状況から察するに作戦は成功したと見ていいと思う。……この度の戦い、我々の勝利だ!!」


 その宣言と同時に歓喜の声が上がる。

 やがてそれは国王の宣言が聞こえていなかった人間も巻き込み、辺りは歓喜の声で溢れた。

 もう空を見上げて不安に思う必要は無いのだと。


「お疲れ様、諦止」

「っ!?」


 肩に手を置かれ、思わず肩が飛び跳ねる。


「だ、大丈夫?」

「凛心か……」


 凛心の姿を確認した瞬間、安堵からか疲労が溢れ出してくる。

 足に力が入らずに、その場に座り込んでしまった。


「うわっ!? だ、大丈夫? 見た感じ怪我はしてないみたいだけど」

「ああ、大丈夫だ。……立ち上がるにはもう少し時間がかかるかもしれないが、怪我はしてないよ」


 あれだけの激戦の中でも星影から一切攻撃を受ける事が無かったのは、ただ運が良かったというだけでなく凛心の援護によるものが大きかった。


「それなら良かった。私は負傷者の救助に行くから歩けるようになったら――」

「ああ、すぐに行くよ」

「ごめんね! お願い!」


 そう言うと凛心は足早にその場を後にした。


「ふぅ……」


 あの日に起きた悪夢のような出来事から、それほど時間は経っていなかった。

 無事だなんてとてもじゃないが言えなかったが、それでもこれで全てが終わりを迎えた。


(…………本当に全て終わったのか?)


 胸の中の(わだかま)りの正体が掴めないまま空を見る。

 桜城の陰から朝日が顔を出そうとしていた。


 結局、国王の作戦とは何だったのだろうか。

 気にはなったが、恐らく聞いたところで教えてくれないだろう。

 そんな国王の姿を何の気なしに見ていると、桜護衆の一人が血相を変えた様子で国王の元に向かって走っていっていた。


「……なんだ……?」

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