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消えゆく世界で星空を見る  作者: 星逢もみじ
果ての存在編

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16/38

十五、一人でも多く

「大丈夫ですか?」

「あ、ありが……ぐっ!」


 凛心と救助活動に当たっている諦止は、瓦礫を退かして足を潰された青年を助ける。

 痛みに顔を歪めながら感謝の言葉を伝えて来ようとする青年の言葉を聞き届ける前に、別の助けを求める人の下へ行く。

 想像していた通り、多くの人が助けを必要としていた。


「すみませんっ!! 夫を見ませんでしたか!?」

「え?」


 瓦礫を退かしていると、女性に声を掛けられた。

 突然の事で暫し呆気に取られる。


「夫がいないんです! どこかで見ませんでしたか!?」

「いえ、すみません……」


 どうやらご主人を探しているようだったが、夫と言われても誰だか分からなかった。

 気が動転しているのだろう。

 この状況では無理もないし、探すのを手伝ってあげたい気持ちもあったが、今は目の前の命を救う事だけを考えるべきだと結論付ける。

 そうすることで、結果的に女性の探す人にも辿り着けるかもしれなかった。


「あぁ、どうしてこんなことに……」


 女性は独り言を呟きながら、ふらふらとした足取りで、同じ様に周りの人に行方を聞いて回っていた。


「何かあった? 話しかけられてたみたいだけど」


 同じように救助活動に当たっていた凛心が声をかけてくる。


「ああ。ご主人を探しているようなんだが……」

「そう……。一段落ついたら探してあげよう」

「そうだな」


 凛心も同じ結論に至ったのか、再び救助活動に精を出す。

 動ける人間が総出で救助活動をしているためか、桜樹国に着いた頃と比べると、目に見える範囲での重傷者の数は大分減ったように見えた。


 しかし、冬の寒さに凍えながらひたすら瓦礫を退かす作業は、賽の河原を錯覚するほどだった。

 そんな心まで凍えそうな状況を癒してくれたのは、辺りを灯す松明の火と、月明りだけだった。



 ♢



「はぁっ……っ……」


 集中していたため、どれほどの時間が流れたのか正確には分からなかったが、寒さと疲労で躰が上手く動かなくなってきたことからして、短くない時間が経過していることが分かった。


 作業を中断して辺りを見る。

 何人助けたのか覚えていなかったが、助けを求める人も声も今は聞こえなかった。


「お疲れ様」


 背後から凛心の声がして振り返る。


「終わった、のか?」

「とりあえず、この辺りは大方終わったわ」

「そうか……。それなら次に行こう」


 歩きだそうとする諦止の腕を凛心が掴む。


「その前に少し休みましょう。こんなに凍えた躰じゃ効率も上がらないでしょ?……手も怪我してるし」

「俺は大丈夫だ。それより早くしないと、間に合わなくなる人も出てくるかもしれない」


 怪我人を見る度に、脳裏に咲音の最期の姿が思い浮かんでいた。

 居ても立っても居られず、凛心の手を振りほどこうとするも、躰が上手く動かずに難儀する。

 そんな様子を見かねてか、凛心が優しく諭す。


「動ける人達や桜護衆の皆も救助に当たってるから心配しないで。……それよりも、無理をして迷惑をかける方が邪魔になるでしょ?」

「それは、そうだが……」


 思案してると、ふいに手に温かいものが触れる。

 それが凛心の手だと気付くと同時に、自分の手がどれほど凍えていたか身に染みて感じる。


「……分かった……」


 緊張が緩んだ瞬間、疲労がどっと溢れ出してくる。

 瓦礫で切ったであろう手や膝の痛みも、ようやく脳まで伝わってきていた。


「よし! 桜城内に私の部屋があるの、案内するからそこで休んでいて」

「休んでいてって、凛心はどうするんだ?」

「私も後から行くわ。でも、休む前に星影の事でシアエト様と話しておきたい事があるから」

「そうか、分かった。有難く使わせてもらうよ」


 正直なところ、躰は限界に近かった。

 眠らないように気を付けなくてはいけなかったが、座って休むぐらいはできるだろう。


「じゃあ付いてきて。私の部屋は三階にあるんだけど――」


 凛心に付いて歩こうとしたその瞬間、桜護衆と思しき叫び声が辺りに木霊する。


「星影だああああ!!」

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