忘れ去られたルイ
どうしてルイのことを今まで忘れてしまっていたのかしら?疑問に思いながらも馬車に乗り込む。久しぶりに車にでも乗りたい気分ですわ。あれならば、もっと乗り心地がいいでしょうに。ああ、でも、環境にはあまりよくありませんわね。
「お嬢様?」
「え?ええ。なんでもありませんわ。」
ボーッとしてしまっていたのか、リンが私に声をかけてきた。
「にしても、申し訳ないことに、私もルイのことについて忘れていました。お嬢様に言われるまで、思い出すことさえも……。」
「え、私も!」
え、アイザやリンも?……何かおかしい、と、何か心当たりはないか心の中を探る。
「ねえ、二人とも。もしかしての話なのですが……。」
アイザの国につくなり、ルイの部屋へ駆け込む。ルイは右腕に包帯を巻いていなかった。おそらく、回復魔法で治したのだろう。けれど、なんだかその姿は以前より痩せ細っているように見えた。
「ルイ!やっぱり……。」
「……なあ、どうなってんだ?」
駆け寄ったリンに、ルイはお腹を鳴らしながら答えた。
やっぱり、忘れていたのだ。ルイの世話係を任命されたものさえも、ルイのことを。
「確認しよう。」
アイザがルイに近づき、魔法陣越しにルイを見る。
「やはり、かかっています。魔法が!」
ルイには、やはり魔法がかけられていた。おそらくは、みんなにルイの存在を忘れさせる魔法が。
馬車の中で話していたのだ。
「もしかして、ありません?その……ある人を忘れさせるような魔法が。」
あの日からもう2日も経っている。
「廊下であったら思い出してくれるんだが、すぐに忘れてしまうみたいで……。」
いったいだれが、なんのために。……ああ、ヒカリのことで大変なのに、面倒なことになりましたわね……。




