リンのお見舞い
「リン。おはようございます。体調はいかがですか?」
パタンとドアを閉める音とともに、リイナールがリンの部屋にやってきた。リンは、
「調子も気分も、とても良いです。」
といってにっこり笑った。体の調子はあまり良くなかったのだが、リイナールがお見舞いに来てくれた嬉しさのあまり、嘘をついてしまったのだ。
「小鳥が元気よく鳴いていますね。」
リイナールは笑顔で窓の外を見つめた。遠いのでどんな種類の鳥かはわからないが、鳥が美しい声で鳴いている。
チュン、チュンチュン。
空は青く、出かけるにはもってこいの天気だ。まあ、出かける予定はないのだが。
そろそろ、アイザが来る頃かしら?
リイナールがアイザの顔を想像していると、ちょうどノックがコンコンコン、と三回なった。
「どうぞ。」
リンが声をかけたのとほぼ同時に、アイザが部屋に入ってきた。
「おはようございます、お嬢様。ご報告に参りました。」
あの日から三日。リンが傷を癒している間に、アイザは後処理を進めていた。
「本日より、お嬢様がこの館、およびお嬢様のお父様が所持していた領地がお嬢様のものとなりました。」
アイザは嬉しそうにそういった。
「なんだか嬉しそうですわね?」
リイナールはふふふと笑った。
「な、なんだかお嬢様とお近づきになれたようで嬉しくて…。」
お近づきになれた、というのは、立場のことだろう。嫌われ者で不安定だったリイナールの立場が、より確実に、より高くなったのだ。自分の王族という立場の高みに近づいたようで嬉しかったのだろう。
「それよりも、これから大変になりそうね。そう言えば、私の家族、お父様はどうなりました?」
リイナールの母親は、リイナールを生んだと同時に死亡している。だから、より一層リイナールは疎まれた。
「はい。お嬢様のお父様は警備兵に捕まったのち、幼女誘拐、監禁の罪で牢にいれられています。今後一切、貴族社会に出てくることはないでしょう。」
アイザは懐から新聞の記事を差し出し、リイナールに渡した。
「まあ…。」
少しショックのようなふりをしてそう呟く。
ま、ざまあみろって感じですけれど…。




