潜入①
アイザがリイナールから命令を下された翌日の夜中。誰もが寝静まった二時頃、アイザはリイナールのすむ館へと到着した。
「ここ、か。」
今回の作戦に動員されたのは、アイザ、ルイ、ヒカリ、ヤミのみだ。
最初にヤミの簡単な紹介をしておこう。彼はアイザの武官で、右腕とも呼べる人物だ。接近戦に長けているが、弓や魔法も得意。とにかく、強い。アイザの国では一番と言っていいだろう。
さて、到着した四人はさっそく潜入することにした。
ルイを連れてきて、本当に良かったのだろうか?
今回ルイが来たのは、本人の希望があったからだが、アイザはそれを後悔していた。が、今更後悔してももう遅い。もう目標の建物は目の前だ。
「さ、入るぞ。」
「「「了解。」」」
小声で最低限の会話だけを交わしながら、四人はゆっくりと屋敷の中へ入っていった。
進んでいくと、リイナールの部屋の前を通った。リンは地下室に隠されているらしいので、一階にあったリイナールの部屋の前を通ることになったのだ。
お嬢様、どうか成功するように祈っていてください…!
ギイィ、と音を立てて地下室への扉を開ける。階段に続いているようだ。
「人が来る前にいきましょう。」
光がそっと耳打ちをする。アイザはコクリとうなずいて地下室への階段を降りていった。
コツコツコツ、小さな音を立てながら階段を降りていくと、ぼんやりと明かりが見えた。火のような温かそうな光だ。
「リンか?」
「さあ。」
ルイが返事をしてくれたが、やはりわからないとのことだ。
そりゃそうか…。
小さく、誰にも聞こえないようにはあ、とため息をついた。
慎重に、慎重に。こんな時こそ俺の出番だと言わんばかりに、ヤミが魔法を発動させた。赤黒くひかる、闇の魔法だ。
「@#/&&@__@+=「$^°<」
我々の言語では表せない呪文を、ヤミがポソリと呟くとほぼ同時に、光る部屋の様子が映し出された。
リンだ!
そこには、リンがいた。監視している者もいない。
「いくぞ!」
「「はい!」」「ちょっと待て!」
ヤミが止める。顔色を伺う限り、必死のようだ。
「なにーー
「危ない!」
ドンっという大きい音とともに、ルイがアイザを突き飛ばした。視界が赤く染まる。まるで、地獄のように。
そう、これは地獄だ。友人が剣で刺されるなんて。
警備兵の剣が、ルイの右腕を貫いていた。
「ルイ!」
思わず大きな声で叫ぶ。
リンのところまで声が届いたのだろう。大きな声が返ってきた。
「ルイ?ルイがいるの!?」
その声に反応し、今度は警備兵が
「黙っていろ!」
と叫んだ。そして、もう一振りと警備兵が剣を振り上げたその瞬間…。
「おやめなさい!」
女の子の声が、地下室の中で響き渡った。
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