アイザ
目が覚めたのは暗い部屋の中。起き上がろうとして周りのものをつかもうとするが、よろめく。
「おいおい。無視するなよ。」
ルイの声が聞こえるが、その姿は見えない。
まさか、視力が落ちてしまったのでしょうか?
けれど、そうではなかった。目に、タオルがかけられていたのだ。
「冷やさないと、腫れちまうだろ?女の子の目が腫れてるのって、きついもんな。」
ルイが見せた精一杯の優しさだった。
「寝たままでもいいから、俺が連れてきたやつにあってくれないか?」
心配そうに言うルイに、笑顔で返事をする。
「はい。お願いします。ここまで運んでくださり、ありがとうございました。」
「おう。」
トライは小さな声で呟き、部屋を出ていった。目に巻かれていたタオルを取ると、そこは木でできた暖かい部屋の中だった。
「連れてきたぞ。」
ガチャリととびらがあく。
「初めまして。お嬢様。アイザールです。アイザとおよびください。」
「ええ、よろしくアイザ。申し訳ないけれど、ここでは私は名乗れないの。ごめんなさいね。」
どこで誰が聞き耳を立てているか、わからないからだ。
それにしても、綺麗な方ね。白い髪に、この世界には珍しい、和服、かしら?
この世界では和服はほとんどない。日本に似た国、カナ国が昔あったらしいのだが、滅びてしまったらしい。
「それでは、お嬢様が寝ている間に調べてきたことをご報告しますね?」
アイザは元気よくそう告げた。