生まれてしまいましたわ…
ここは、乙女ゲームの世界。魔法も剣も、魔王も勇者もいる、ファンタジーな世界。ゲームの名前は「ラブラブ!愛をゲットせよ!」と言う痛々しいもの。まあ、少しは可愛らしくも思えますが。
気がつけば、私は悪役令嬢リイナール・ナイバスとしてこの世界に生まれていました。前世の記憶は、ほんの少しだけ。何を思って、何を行動していたのかはよくわからないのですが、知識だけはきちんと残っていました。そのせいもあってか、私は子供の頃から落ち着いた子で、不気味な子、などとよく呼ばれました。いくら不気味でも、私は私だから仕方がない。いつもそう思って、私は自身を落ち着かせています。
私が覚えている限りでは、リイナールは親に嫌われて10歳から寮のある学園に入れられます。そこで、第一王子ルファー・ラミエル様との出会いを果たすわけですわね。まだ10歳なのに、婚約まで話を進めてしまうなんて。この世界の人間は、なんともややこしい名前だこと。
その後、確か、主人公、平民のララ・ルーニャさんがその頭の良さと魔法の得意さを認められ、学園に入学してくるのでしたね。確か、リイナールが16歳の時のことです。学園は10年通うのが普通ですから、後4年で卒業ということですわね。
「はあ。どうしましょうか。」
その後、ルファー様とララさんは恋に落ちます。私のことなど忘れて。やはり、婚約破棄、されてしまうのでしょうか?ゲームの中では私もララさんをいじめていましたし、それはいけないと思うのですが、こちらは婚約者を奪われてしまったのでしょう?そのまま親にも勘当されていますし…。かなりの仕打ちを受けているようにも思えますが…。
「まあ、いいでしょう。」
とりあえずの予定を立てましょう。
ペンを握って、ノートにすらすらと書き出します。日本語ですから誰にも読むことはできませんし、落書きだと思われて終わりでしょう。なにせ、今の私は5歳ですから。
『①婚約をしない。』
これが一番いい案ですね。婚約さえしなければ、婚約破棄をされることもありませんし。
『②いざという時に魔法を鍛えておく。』
この世界では、魔法を使えるのは一部の人間だけですから。今の時点で私には神聖魔法が発現していますし。
当面は、この目標を達成できるように頑張りましょうか。
そう思いながら私は、拳を小さく握りしめた。