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9・殿下、テンプレ行動の結果に驚愕す

 日本はまず、太平洋の安定を優先した。南方の国が装甲巡洋艦を砲撃した件など、問題が無いではなかったが、まあ、何とかなっていた。


 そして、それらがひと段落したところで、欧州各国の要請に応える形で院長元帥を総司令官とする陸軍部隊10万人が旅立っていった。


 海軍も散々もめた結果、河内型戦艦2隻、鞍馬型装甲巡洋艦1隻、筑波型装甲巡洋艦1隻など、ある意味で全力出撃で欧州を目指した。


 俺?行こうとしたら兄に止められた。


 陸軍は院長元帥の指揮によってドイツ将校の浸透戦術を効果的に潰しに行っている。そもそも、浸透戦術は院長元帥も考案しているので、その対処法は熟知していた。更に、戦車はともかく迫撃砲という、ようやく欧州で運用が始まった兵器についても、院長元帥は熟知している。

 そんな事もあって、フランスでは院長閣下は引っ張りだこらしいが、性格が性格だ。「これがブシドー!!」と、なんか違う方向に認識されていなくもないらしい。

 ただ、困ったことが無いわけではない。外相らが英国に対して配置について何だかんだと根回ししたらしく、比較的安全なところに配置されているそうなんだが、戦線が安定していようと、戦闘が起きなかろうと。そこには米と味噌が不足している。毎日パンと肉類と豆では、日本兵は戦えない。そこが一番のネックになっている。


 なにせ、味噌と醤油は欧州で手に入らない。米も種類が違うのでお粥のようにして食べるには良いが、炊いて食べるのは不評だ。

 何といっても日本からの輸送もその多くは英国頼りだから、満足に米と味噌を送れていない。常に不足しているのが現状だった。

 もちろん、安全な戦場と言っても限度があり、そこは欧州の塹壕戦が行われているので、どうしても犠牲が出る。ただ、東北の部隊は欧州の冬は暖かく感じるらしく、フランス兵が凍えている横で平気な顔をしているらしい。

 当然、ヤヴァイ部隊も派遣されている。ヤヴァイ部隊のヤヴァイ奴の中にはマタギ兵なども居る。連中、頭も行動もどうかしているらしく、どこに居るのか分らん上に銃声がしたら必ずドイツ兵が倒れているという噂だ。いや、北欧のヤヴァイ人じゃないんだから、大人しくしていて欲しい。

 

 当然、塹壕戦なので敵塹壕に突撃することはある。南の地方のヤヴァイ部隊のヤヴァイ奴は奇声を上げながら刀でドイツ兵を真っ二つにしているらしい。そいつらもそいつらで恐れられているという。だから、少しは大人しくしてほしい。そんなつもりで欧州派兵をしたわけじゃないんだよ?


 そんな事はありながら、院長元帥のように「ブシドー!」と呼ばれたり、ヤヴァイ例外はあるが、だいたいは普通の人だった。そんな部隊は、院長元帥の指揮の下で犠牲を払いながらも善戦していた。

 まあ、出来てしまったバズーカだかRPGモドキの操作法を誤って塹壕内を火焔地獄にする事件を多発させた一件を除いては。だが。


 フランス兵からは魚ばっかり食いたがる上、味方を火焔地獄に落すヤヴァイ奴らと一時期警戒されたのは言うまでもない。ただ、装甲の薄い第一次大戦の戦車に対しては非常に効果的な兵器で、筒先から突っ込んだ棒火矢の柄に仕込んだ火薬に点火して筒の後方から噴射することで反動をほとんど抑え込んでいる無反動砲だ。只の無反動砲では飛距離が出なかったので、発射後、柄にロケット花火よろしく充てんした火薬を燃焼させて飛行していくように作ってある。


 筒の直径は7センチほど、突っ込む棒火矢は10センチ程度、英国の迫撃砲や後のヘッジホッグの弾みたいな形だが、大きさや重さはそれほどでもない。ただ、無反動がいけなかったのかロケットの燃焼が足りないのか、棒火矢の資料にあったような飛距離3kmなんて出せなかった。最大射程でも擲弾筒と変わらない程度だ。何がそんなに違うんだろうね?

 そんな新兵器の運用も、院長元帥は柔軟に採り入れてくれた事にホッとした。なにせ、それを使えば突撃時にトーチカや敵車両も破壊できるという。ちゃんと後方の確認ができていれば効果的だそうだ。


 日本製の効果的なモーターとヤヴァイウエポンは欧州でも話題沸騰中だ。なんせ、珍しがったフランス兵が擲弾筒を脚に載せて撃って骨折したり、突撃時にバズーカモドキの擲弾器を後方も確認せずに撃って味方が負傷したりと話題性豊富だからな。



 海軍の方だが、地中海での護衛だけでなく、英国本国にも呼ばれた。なにせ、日本は金剛の売却要請を拒否し、代わりに河内型を送り込んでいるんだ。性能が劣るとはいえ戦艦は戦艦。なので、戦力の足しにと英国本国へと出向き、大海戦に参戦したらしい。もちろん、地中海での作戦も行われているし、足りない護衛艦は英国に発注して最新機材と共に受領している。時には人員だけ輸送船で送って欧州で艦を受領し、そのまま任務という事も行われている。


「筑波が潜水艦の攻撃で爆沈、河内が海戦時に爆沈・・・」


 だいたいこの時期に爆沈している艦艇が見事に沈んでしまってやがるよ。ちなみに、二隻とも何で爆沈したのかよく分からない。

 筑波は潜水艦の魚雷を受けたが、浸水ではなく大爆発して沈んだというし、河内に至っては激しい砲撃に晒された訳ではないらしい。あの「今日はおかしい」艦隊に居たのではない。なのに、砲撃中に爆発したらしい。


「考えられるとすれば下瀬火薬?」


 鋭敏な塩が出来てしまう純粋物ではなく、より鈍感な新火薬の開発が急務ではないのかと海軍には言っておいた。そして、居住性が悪くて地中海では注意力が低下していたり疲労がたまっている可能性があるので、艦の居住性や教育についても見直す必要があるかも知れない。出来れば軍神の指導方法なんかを根本から変える必要があるんだろう。一度、英国か米国から教育者を招聘すべきかもしれない。居るかどうかは知らんけど。


 


 

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