26・殿下、技術加速で国内が発展している事に関心す
さて、なぜ、米国がアラスカ級大型巡洋艦モドキを造る話が出たのかと言うと、史実同様にドイツが装甲艦を就役させているからだ。
当然、フランスは対抗策として30センチ砲搭載の旧式戦艦の代替えとして速力32ノットになる新型高速戦艦を建造している。代替え対象のクーベル級が2万5千トン、30センチ砲12門装備だったが、代替えは同じ排水量であるが、細長い船体に長砲身30センチ砲8門という、同国の大型巡洋艦を戦艦にクラスチェンジしたようなデザインになっている。排水量があるので防御力も戦艦として申し分なく、出力もあるので高速を出せる。完全にドイツ装甲艦をすべての面で圧倒している。敢えて言うなら、史実ダンケルク級の様なフランスらしさが微塵もない面白みのない艦という事だろうか。
米国を見れば戦艦の速力は21ノット程度でしかない、ドイツやフランスの様な26ノットや32ノットという巡洋艦並みの速力を持つ大型艦艇は存在していない。
現在の条約上の制約から言って、36センチ砲よりも30センチ砲が有利と考えたんだろう。そもそも、東京条約はドイツも制約を受け、既存の旧式戦艦の砲口径と排水量を遵守した建艦が英独協定でも義務付けられているため、最大でも1万5千トンの装甲艦しか保有できないのが現状だった。
が、それは見方を変えれば、1万5千トン以内であれば、東京条約で主要国が制約を受ける重巡洋艦にとらわれない高速巨砲艦を多数持てることを意味している。他の国が8インチ(20.3センチ)以上の砲を持つ艦艇が戦艦となるため新規建造できないのに対し、ドイツは8隻程度の高速巨砲艦が持ててしまう計算が成り立った。
各国にとって装甲艦の出現は脅威であり、すぐさま応じたフランスの代替え艦は更なる衝撃をもたらした。
その衝撃を真正面から受け止めて代替え艦の模索を始めたのが米国で、公表されている議会資料によれば、ワイオミング級からネバダ級までの6隻を2万7千トン級の30センチ砲装備、30ノット以上の高速艦で代替えする計画があるのだという。これをアラスカ級と言わずに何だというのだろうか?
日本がガスタービンによる金剛型代替え艦建造を模索するのは当然の流れと言えるだろう。
さて、それをひとまず置いて。
そのような軍事以外に目を向けると、関連技術として造船業界ではすでに溶接の実用化が行われ、瀬戸内の造船所ではブロック工法の話まであるという。
その造船所は造船だけでなく、関連設備として発動機にも手を出している様で、小型ディーゼルの開発に成功している。
さらに他を見てみると、財閥系でも小型ディーゼルの開発をしているが、これは戦車の父が欧州から持ち帰ったものだという。何やらすでに小型のトラクターやコンバインの開発まで島根でやっているんだとか。
調べてみると、小型トラクターやコンバインの実用化って1960年代以降で、30年ほど加速してしまっているんだが。
財閥系、瀬戸内の造船所が技術を加速させているのは明白だった。が、もっと詳しく見ると、関西にあるトンボのマークの農機メーカーが石油発動機の開発、販売を行っている。
トラクターやコンバインを田んぼに入れるにはまだまだ道が狭いが、石油発動機やそれと同じ大きさの小型ディーゼルを使ったテーラーならば問題なくあぜ道を走行できる。
なにより、テーラーであれば耕起だけでなく、リヤカーモドキの台車を曳いて普段の交通にも利用できる特典付きだ。ほら、あの昭和三十年代を扱った映画に出てきたような。
そう、すでにトンボのマークと造船所が共同でテーラーのシャーシを作る会社を興し、販売も行われている。都市部では自動車ばかりしか見ないが、一歩郊外に出れば映画のアレがそろそろ走り出す頃ではないのだろうか?
そして、軍事技術の転用である大型トラクターも満州や北海道で稼働している。これ自体は史実でも同様の試みがあったので別に驚く事ではない。無いのだが、戦車の父がどうも遊び心で九四式軽装甲車よりも小さな一屯半牽引車なるモノを設計し、財閥で製造されることになるそうなんだが、どう見てもケッテンクラートに見える。ただ、用途が限られるため、主には民需用トラクターや飛行場での牽引車として速度は本家と違い低速、牽引力重視になっているらしい。当然、ドーザーを付けると簡易の小型ブルドーザーには出来るだろうから、飛行場では重宝することだろう。最大幅がテーラー並なので、本州以南の農地でも使用可能なトラクターとしても重宝しそうだし、重機としても活用できる。
トラック類に関しても史実より充実しており、財閥は何を考えたのか他社の九四式軽装甲車のシャーシを使ったハーフトラックの開発をしているという。ホント、この世界は色々オカシイ。




