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23・殿下、欧州情勢が史実通りなので警戒す

 内蒙古から帰ってきて、中国やロシア情勢だけでなく、欧州情勢にも目を向けることにした。すると、史実をなぞっている事に気が付いた。


 やはりと言うか、ドイツではチョビ髭が首相に選出されていた。そのうちラインラントに進駐するんだろうが、それまではまだ少し時間がかかるようだ。


 そう思いながら欧州情勢を見ていたのだが、チョビ髭が首相に就任してからのドイツは、米国からの支援もあって経済回復基調にあるらしい。英国も基本的にそれに賛同している。

 しかし、アジアにおいては、米独はスキンヘッド陣営、英国は北京政府を日露と支援しており、その陣営自体は異なる事から不思議に思ったのだが、欧州において今問われているのは朱毒の蔓延だった。

 その危機感に対し、チョビ髭は自国は防波堤だと欧州諸国に訴えているらしい。米国もそのような表明をしている。

 が、こと中国情勢に関していえば、その朱勢力と手を結んだスキンヘッドを支援しているのだからチャンチャラ可笑しいのだが、米独共にそんなことはまるで口に出してはいない。英国としても、そこは重大視していないようだ。  まずは、欧州におけるソ連の浸食を食い止めることが先決らしい。


 そして、日本にとある話が舞い込んだ。


「本当か?」


 俺が例の会議でそのことを聞いて驚いた。なんと、英独海軍協定が近々締結されるのだが、その後には英海軍はその力点を本土と地中海に置くため、手薄になる極東に関しては日本の支援を仰ぎたいという事らしい。

 まあ、もしもを考えるとそうなるだろう。海軍協定でドイツ海軍の戦力が英海軍の四割程度にしかならないという規定だそうだが、英軍は世界中に展開しているので、北海でドイツと対峙する戦力を揃えるには、どこかが手薄になる。それを補う事を求めてきた。


「英海軍の活動範囲を考えた場合、そう言う判断になるのも頷けます。シンガポールまでを日露の支援下で活動すれば、英国の負担は減りますから」


 話を持ってきた人物もそのように言ってくる。


 少し考えて見たが、日本には拒否する理由もないので会議で了承した。


 そんなことをしていると、英国首相がドイツは朱勢力からの防波堤であり、再軍備を過度に批判しないと表明した。


 そのまま史実通りに翌年春にはチョビ髭が再軍備を宣言し、初夏には英独協定が発表された。ことあるごとに朱勢力批判をするチョビ髭だが、そのくせ、米国と共にスキンヘッド支援を続けている。二枚舌にも程があるんではないだろうか?

 スキンヘッドと対峙している北京政府はというと、日露が内蒙古西部を完全に抑えたことで、西の脅威が減退し、モンゴル・ハーン国軍も加わっての更なる西部作戦を行っている。

 その主軸は何と言っても中央アジアを通じた朱勢力の連携に楔を打ち込むことだった。

 モンゴル自体、ソ連と国境を接しており、ロシアによる膨大な支援によって何とか国を保っているが、広大な土地に対してあまりにも人口が少なすぎるため、西部では朱勢力の浸食が起きていたりもする。


 昔からある交易ルート、あのシルクロードが今や朱の蠢く道となっているというのだから戦慄するが、それは当然ながら、モンゴルや東シベリアが朱毒に染まらなかったからだろう。歴史ある砂漠の道に朱色のレールが敷かれようとしていると聞いた時にはビックリしたが、納得もした。

 もし、北京政府が瓦解してしまった場合、ロシアはバイカル湖畔と華北の二正面から朱勢力の攻勢を受けることになる。流石に守り切れるかは怪しいだろう。

 

 そんな最中、米国は日露に対して満州市場の開放を要求してきた。スキンヘッドを支援しながらこちらにそんな要求しても受け入れるはずがないことくらい分からないのだろうかと思ったが、そんなことは理解しているんだろう。


「古い専制国家が新たに生まれようとしているチャイナの邪魔をしている」


 スキンヘッドやその嫁の主張そのままに米国の高官が声明を発表した。


 しかし、実態は「新しく生まれようとしている専制国家の邪魔をしている」ではないのか?しかも朱色の専制国家かもしれないというのに何を暢気な事を言っているのかと呆れてしまった。


 欧州でもそのことに気が付いた国がある。フランスやイタリアと言った日本兵と共に戦った国々だ。何もせずに講和会議の席上で吠えまくった豚の絶叫を覚えている彼らにしてみれば、なぜ米国が肩を持つのか理由は一つしかなかった。

 英国自身もこの頃には米国を警戒する勢力が多くなっていた。


 英国の権益が多い揚子江流域はスキンヘッドと北京政府の戦闘で荒廃し、アヘン以外の利益が出ていない。だが、米独はスキンヘッドと組むことでそんな中でも華南、華中での利を得ている。流石にその姿勢はあからさますぎたというべきだろうか。

 ただ、そうは言ってもソ連の伸張を抑えるためにドイツに一定の譲歩をし、欧州の経済立て直しを行うためには、米国とも表立って対立する訳にもいかないようだった。

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