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12・殿下、テンプレが使えなくなって困惑す

 第一次大戦やシベリア出兵に関わるテンプレを発動した結果、周辺情勢は混とんとしてしまっている。


 ついでに、俺の周りも良く分からなくなっている。


 我が家にやってきた姫君は一応、自分で様々な事が出来るので、深窓の令嬢などでは無い。何処で覚えたのか、日本の伝統にも興味を持っており、よくあるチョンマゲ、ニンジャ、ブシドーと言った偏った知識ではない。

 ただ、牛丼や揚げ皿(和製フィッシュアンドチップス)に驚いたらしい。控えめに言って、お転婆、一般的にじゃじゃ馬と言って良いのではないだろうか?

 さらに、当初は人種的な偏見があるのだと思っていた件だが、どうやらそれは誤解であるらしい。俺以外には普通に接している。男女問わずだ。しかし、何故か俺を避けているんだ。どうしたら良いのかよく分からない。


 まあ、それは置いといて、日本の周辺情勢だが、シベリア東部、沿海州を領土とする真正ロシア帝国が正式に発足し、事態は安定するかに見えたが、真正ロシア帝国は満州里から綏芬河に至る東清鉄道以北を自国領と主張して譲らず、満州軍閥と衝突している。


 そうして満州での中露対立が続くのとは対照的に、日露関係は良好だった。それどころか、ロシアから満鉄以東の日本領有を催促されるほどの関係になっていた。

 理由は簡単だ。朝鮮北部を含むこの地域は資源があり、ここを確保して満鉄と東清鉄道を連結すればロシアに新しく重工業地帯を作ることができる。それはロシアだけでなく日本にとっても利益であり、日本政府や軍もその誘惑に駆られていた。

 だが、今はその時期ではない。


 目を日本に戻すと、欧州戦費とシベリア戦費でとんでもない事になっているにも拘らず、海軍は大艦隊建設構想をぶち上げるし、陸軍はロシアと共同で満州支配に乗り出したくて軍縮にまるで乗り気ではなかった。

 

 陸海軍がそんな状況であるのには理由がある。


 ロシア前皇帝が米国に持って行ったと思われたロシア帝室の資産だが、実際に米国に渡ったのは長男の治療や夫妻の生活に必要な資金と多少の亡命謝礼金程度でしかなく、英国貴族に三女が嫁いだことで、その輿入れ金名目で多額の資金が英国に渡り、四女が俺に嫁いだことで日本にも入っている。

 残る2人の娘たちは真正ロシアに渡っており、新皇帝や娘たちに多くの資産が譲渡されたと言われている。


 陸海軍は俺に入ったとされる金を目当てに暴走していた。


 前皇帝によるこのバラマキによって、真正ロシアだけでなく、どうやら英国も一息つくことが出来たらしい。何より、真正ロシア帝国にとっては国の安定に必要な基盤を前皇帝や多くの反共ロシア人の支援によって築くことが出来、国の振興に大いに役立っていた。早期に国が安定したのもこのためだった。


 ただ一か国、それが面白くない国がある。そう、米国だ。


 ただ、そうは言ってもそんなことで日英露に文句を言えるはずもなく、軍縮を行うという建前で意趣返しをしようと企むこととなった。


 それが、史実とは微妙に様子が違うワシントン軍縮条約となる。


 会議では列強各国の主力艦の保有量が制限されることとなったが、米国はさらに真正ロシアの戦艦保有禁止を主張した。


 まあ、当然だろう。日英が自国の保有枠を外れた戦艦をロシアに譲渡してしまうと、結果として米国への脅威が増してしまうからだ。

 が、それは日英が強硬に反対した事で撤回され、米国が懸念した通りに、日本の保有枠から外れる河内型や鞍馬型をロシアに売却する事で、ロシアの有する主力艦枠を充足させるという話が行われることとなった。

 米国としたらそれには反対できなかった。


 もし、日本や英国が既存艦艇を譲渡しない場合、ロシアへの技術協力として日英が新型戦艦を建造してロシアに売却する恐れがあったからだ。

 公然と新技術を盛り込んだQE改良型や長門改良型戦艦をロシアが手にしたのでは、更なる悪夢になるのは目に見えていた。ならば、既存の戦艦の売却で話を収めた方が良い。


 さらに満州問題も話し合われたが、中国の肩を持つ米国とロシアの肩を持つ日英の溝が埋まる事は無かった。

 というのも、ベルサイユ会議において、史実と違い、中国代表の主張が一蹴され、山東利権が日本に渡ることになったからだ。しかし、これは俺や元老の意見によって英国に譲渡することとなる。そのかいあってか、南方の国が執拗に批判していた日本による南洋統治については、英国が賛成に回り、南方の国は強制的に黙らされることになっていた。


 そうした溝をここでも引きずり、満州問題は英国の主張する日露戦争やその前後の状況を前提として話し合うという事になり、半ば現状を認める事に決着した。いや、満州北部の帰属問題は何も合意がなされていないのでそのままだ。正確には。

 日英同盟も問題とされたが英国が一蹴、真正ロシアの防衛問題に話をすり替え、米国がそれ以上追及できなくしてしまった。

 そのため、日英同盟はそこに真正ロシアを加えた形で、準同盟国として米国の加入も強要された。

 

 こうなると史実から大きく乖離してしまっているが、どうにもすっきりしない。


 

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