生きる意味
僕たち人間は呼吸をし、食べ、眠りながら生きている。
また、笑い、泣き、怒り、嫉妬をしながら生きている。
目で見て、声を聞いて、好きなものを見つけ、ときには嫌いなものを見つける…きっとそれが生きる意味。
だが、僕には生きる意味がわからない…
キーンコーンカーンコーン
僕は東京に住む高校三年生。杉野陽斗。僕には友達もいなければ、親友なんてもってのほか。何もないことが取り柄。
「ただいま」
僕は誰もいない家に帰って来た。両親は共働きだ。だから両親とは顔を会わせることはほとんどない。
(今日こそは)
そんなことを思いながらロープを握りしめ、リビングにやって来た。僕はロープを天井の柱にきつく結び始めた。
「陽斗ー、入るよー、いないのー?」
(ああ、まただ。また彼女が来た。)
「あ、いた。ちょっとー、いるなら返事ぐらいしてよー」
僕はそんなことを言われても気にしない。
「よし。」
僕はロープを結び終わり、小さく呟いた。そして、首を通そうとした瞬間…
「こら!何がよしよ!」
そう言われて、頭を叩かれた。
(ああ、やっぱりだ。またのがした…)
「また自殺しようとしてたのね」
「うん」
彼女は香川あかり。隣の家の幼なじみ。彼女はいつも僕の邪魔をする。
3年前から僕はあることを疑問に思っていた。僕には生きる意味がわからない。だから僕は『自殺』をしている。いや、でも彼女がいつも止める。
僕が屋上から飛び降りようとしていると、いつの間にか後ろにいて、僕をひっぱる。また、僕がナイフで首を切ろうとしていると、彼女がいつの間にか僕の手からナイフを取りあげている。そんなこんなでもう99回目。また僕は失敗した。正直とても邪魔だ。そんなことを思いながら僕はしぶしぶロープを片付けた。
あれから一週間がたった。僕は風邪をひいたと言って学校を休んだ。100回目。やっと成功する。もう、誰にも邪魔させない。僕は手を止め、耳をすます。誰も来ない…
そこで僕の記憶は途切れた。
僕が目を覚ますと、病院のベッドにいた。
(ああ、また、また失敗したのか。どうして僕は死ねないんだ。)
僕の隣には泣きそうな、怒っているような顔をした彼女がいた。
「何してんの?風邪って言うから信じてたのに。今度は薬の大量摂取?ふざけないでよ!」
「ごめん。」
「ごめんじゃないわよ!あんたが…陽斗が死にたいなら死ねばいい!もう止めない。でも、そしたら私も絶対死ぬから!」
彼女はそう言って泣き出した。僕はとってもびっくりした。だけど、彼女の言葉はとても深く、強く僕の胸に突き刺さった。彼女はバカだ。こんな何もない僕を心配するなんて…だけど、僕は1つ生きる意味を見つけた。
「ありがとう。あかり。」
彼女はとても驚いた顔をしていた。きっとお礼を言われるとは思っていなかったのだろう。だか、僕は言葉を続けた。
「あかりのおかげで、僕の生きる意味1つみつかったよ。」
そう言って僕は彼女にキスをした。
「えっ…じゃ、じゃあもう自殺しない?」
「うん。しないよ。あかりと一緒にいれるなら。」
「じゃあ、私がずーっと一緒にいて、陽斗の生きる意味たくさんみつけてあげるよ!」
「うん。」
5年後、僕はあかりと生涯の愛を誓った。僕の世界を変えてくれたのはあかりだ。あれから僕は1つでも多く、生きる意味を見つけていこうと決めた。もしまた生きる意味がわからなかなっても、きっと誰がそばにいて助けてくれる。きっと誰かが自分を必要としていると信じて。それに僕も僕を変えてくれた彼女のように、誰かの助けになりたい。
生きる意味を見つけるために…