プロローグ ー 0 - 1
「あのね、私アンドリンの事が好き。」
心の警告。この返事が来れば、確実に傷つく。
でももうやめるって、終わらせるって、
決めたから。
丁度出会って一年。いろんな事があったけど、
泣いても、叫んでも、これで終わり。
私の震える指は、ゆっくりと、私の好きな人に、
終わりを告げるメッセージを送信した。
答えはもう分かってる。
でも、彼に告げないと、進めない気がするから。
彼は私のわがままに付き合わせられるだけ。
本当に、ただそれだけ。
でもほんのちょっとだけ、
奇跡を願ってる自分がいた。
彼が私のクラスに転校してきたのは8年生から。
スイスでは新学期は夏休みの後に始まる。
クラスの人数はたった24人になってしまった。
転校生は2人だけ。女の子と男の子。
女の子の方は、元々うちのクラスにいた子の従姉妹。
もともとその子、マイとは知り合いだったので、
すぐに打ち解けた。
そして男の子は翠の瞳の、
茶髪をセットした可愛い子。
そんな第一印象だった。
人見知りの私はその男の子、
アンドリンと全く喋らずに、昼休みを迎えた。
食堂で列に並ぶと、前にアンドリンがいた。
プレートが、アンドリンの前の子で空になり、
料理が温まるまで5分待ってと言われた。
2人っきりで知らない子と列に5分並ぶ。
私は何か喋らなきゃと思い、色々考えて
(考えすぎてプチパニックを起こしかけながら)、
「あん、どりん?えーと、あのさー・・・。。」
と話しかけたはいいものの、話題が無かった!
不思議そうな顔で私と彼の瞳があった。
「えーと、どした?みづき、だっけ?」
びっくりした。授業中口を利かない私は、先生にさえ存在を忘れられるほどなのに、
彼は覚えてくれた。
でも、私はさらにテンパり、考えついた質問を、どういう意味か理解するのを放棄して声に出した。
「何の動物が好き…?」
多分それは想定外だったんだろう。
彼は質問の意味を考え、理解し、永遠と思えた5秒後に、
「僕は、イルカが好きだよ」
と答えてくれた。
一方、質問の意味すらもいまだに分かっていない質問者は、「イルカってなんだっけ」とか
考えていた。
多分ぽけーっとして見えたんだろう。(事実)
彼はいきなり私のほっぺをつんつんしてきた。
「にゃぁ?!?!」
「にゃぁってwww 好きなのは猫かな?」
なんてイケボで言う。
彼の声は見た目に反して
(というのも彼は身長が低めでほっぺがぷっくりしてる、いわゆる可愛い子だったのだ)、
声が低く、それでもまだ男の子の声だった。
そして彼の推測通り、私は猫が大好きだ。
猫ラブ=みづきと言うのが皆の認識。
「猫大好きっ!」
私がそういうと、彼は優しく笑った。
その時、新しいプレートが運ばれてきて、会話は終わった。楽しい子だな。が彼の印象。
そして友達になりたいなと思った。
この時、どうして彼に恋に落ちなかったんだろう。
今考えると不思議だが、
この時、いや、あの時私は、4年間の片思いダイアリーを綴っているところだった。