科学の力で異世界へ
まるで電撃を浴びたような激痛で目を覚ます
意識が朦朧として、視界もぼやけている
『気絶している場合ではないですよ』
抑揚のない声にせかされて、再び手放してしまいそうな意識を覚醒させる
ゴーグルのようなモニターからは外の景色だろうか、荒れ地で黒煙を上げる鉄屑の山が見える
このままではマズイと理解した瞬間、モニター越しに迫る歪な足…いや、足っぽい何か、か
それはそのままこのモニターへの映像送信元を踏み抜いたのだろう、衝撃とともに映像は途切れてしまった
『ユニットの損傷率が想定値を超えました、シミュレーターを終了します』
抑揚がないのに、どこか残念そうに告げるその声に俺はとても申し訳なく思うのだった…
『おーおー、ひっどい有様だねぇ』
箱のような装置から這い出した俺に声がかけられる、それは出てきた装置の隣にくっ付いているスピーカーからだ
『これが転移先だったら死んでるんだぜ?真面目にやってほしいもんだなぁ!』
なおも後ろから捲し立てる声にウンザリしながら装置の置かれた部屋を無言で後にする
アレに言い返しても馬鹿を見るのは数か月前に体験済みだ
部屋を出るとそこは広いモニタールームのようになっていて、一人の青年が机に座ってモニターを眺めていた
白衣を着た青年は20歳後半ほどで、顎に無精ひげを生やし少し痩せている
「結果は全滅だったけど、判断内容は合格基準だったよ。明日からは生死がかかっているから十分注意してね」
彼はモニターから目を離さずにそう言うと、机の下からペンライトのような物を取り出しこちらに渡してくる
「これが君のパートナーデータだよ、ボディは現地にあるのを使ってね、それじゃあ明日の朝8時にね」
俺は差し出された端末を受け取り、何やら作業を続ける青年に別れを告げて外に続く扉を出ていくのだった
~まず順を追って説明した方がいいだろう
俺の世界は科学が発展しすぎた、昔は人がしていた仕事もすべて機械化され、機械を作る機械が作られ人の出番は本格的になくなってしまったというわけだ
人工知能も発展を遂げ、機械人いわゆるアンドロイドも普通にそこら中にいる
始祖である人間は何もせずとも何でもやってもらえる世界、それがこの世界の現状だ
だが目的を持たない人間は生きる気力を見いだせなくなってしまい、出生率は落ち人口は急速に減った
そんな状況でも特に世界に問題は無く、いつしか人口云々言う者もいなくなって久しい
こんな世界で最近発見されたのが異相空間の別世界、そう異世界の存在だった
御偉方が機械や学者に演算させて、異世界へ転移が可能になるのにそう時間はかからなかったわけだ
しかし、異世界には色々と問題もあった
一つは、異世界の観測はその空間軸でしかできない事、更に必ずしも異世界が安全ではないという事だった
一度調査機を異世界が存在するであろう異空間座標に飛ばし、調査後帰還できたら存在の証明が出来るという、博打じみた調査法しかないわけだ
調査機では、異空間に飛び周囲を10分ほど観測、こちらに再転位する、といった程度しか稼働時間がないので集められる情報も少ない
それでも人の活動が可能かわかるだけでありがたいそうだが…
内容が内容だけに、人間からは立候補式で最低限の適性検査後に訓練過程があり出発となるのだが、思考がほぼ人間と遜色ないといってもアンドロイドだけでは不安だ、という理由で快適なこの世界を離れたい奴など少ないため、立候補者は変人扱いだ
そんな異世界探査になぜ俺が応募したかというと、ただ単純にこの世界に飽きてしまったからだ
一応20歳までの基礎教育はあるが、基本何も課せられずに、全てが与えられる理想郷と言えば聞こえがいいが、こんなのは牧場で管理される家畜と変わらない気がする
別に異世界で一旗上げようって訳ではないし、自分が特別出来る人間だとも思っていない
この6カ月で少しは鍛えたつもりだが、体格も中肉中背で何となく生きてきた普通の人間でしかない、一番打ち込んだのは暇つぶしのダイブ型VRゲームくらいだ
人間が少ないのに異世界に飛ばしていいのかって?
実は最近、人間の人工培養も始まり異世界への人口流出は問題視されていない
まぁ、最早人間至上主義者など消滅しているので文句の出どころも無いのかもしれないが…
話を戻そう、そんなこんなで俺はあっさり採用され、6カ月の訓練日程を終えて明日から異世界へと送り出されるというわけだ
訓練の内容は転移先の異世界に合わせて行われるのだが、俺が行く所はどうやら空気中にこちらの世界にはないエネルギーが観測されているらしく、それを有効活用して調査を進めるようにとのことだった
俺たち異世界人の健康には影響はなく、それを生かすように進化した現地の生物は特殊らしく、先ほどシミュレーターで戦っていたのは凶暴な現地生物の観測データらしい
先遣隊としてアンドロイド3名が1年前に派遣されており、6カ月の現地調査で人間が生活可能か調査し可能なら候補を募り6カ月の訓練ののち現地へ転送、詳しい状況は現地でというのが一連の流れだ
この辺もこちらから観測できない事による欠点であるのかもしれない、行き当たりばったりなのはご愛敬ということだ
なんにしても、俺は明日からの異世界生活に備えて割り振られた家へと帰り睡眠用装置に入るのだった
荷支度を整えた俺は、モニタールームに顔を出していた
昨日の青年が相変わらずこちらを見ずに話しかけてくる
「8時の15分前だけど、君が準備できてるならすぐにでも出発できるよ」
俺が了承の意思を告げると、青年の案内で昨日のシミュレータールームとは反対側の扉に入り100mほど廊下を歩いて行く
突き当りにあるロックされた扉を抜けた先は小部屋になっていて更にロックされた扉をくぐるようだ
「厳重なのは主に向こう側からの侵入に備えてるからなんだよ。不安がることはないよ」
扉のロックを操作しながら青年が説明してくれた。…やはりこちらを見ない
小部屋を抜けた先は更に狭い長方形の小部屋になっていた、どうやら本当に転移するだけの部屋らしい
「それじゃあ、奥の壁が向こうと繋がったらすぐ飛び込んでね。人が通れるくらいのやつは長くても10秒くらいしか繋げないから」
入ってきた扉の向こうで青年はそれだけ告げると早々に扉を閉めてしまう、視線は扉の操作パネルから離さなかったのは言うまでもない
1分ほど待っていると、部屋の奥が歪み楕円形の穴が広がっていく、どうやらあれが異世界への入り口らしい
地味だな、などと考えていたが10秒ほどで閉じるという説明を思い出し、人が通れる大きさになったその穴にすぐさま飛び込む事にする
よくここで覚悟がどうとか言うのが物語の定番だが、開いた穴からは移動先が見えていたので別に特別な感情は湧かなかった
穴をくぐった先はどうやら洞窟の中のようだ、岩肌がむき出しの10畳ほどのかまくらのような空間になっている
後ろを振り返るとちょうど穴がふさがりきるところだった、別に元の世界に未練はないのでこの部屋の出口に向かうとその先にある通路からひょっこりと人影が姿を現した
「あー、そういや今日だったッスね。なんの反応かと思ったッス」
その人影は見るからにアンドロイドだった。
高さは160cmほどで、頭はカメラとスピーカーの構成、AIが搭載された胴体は各種ランプが忙しく点滅している
「いやー人間さんが来るのが今日ってすっかり忘れてたッス、自分は第1129異世界先遣機4号ッス」
4号?確かこちらにいるのは3名のアンドロイドだけのはずなのだが?
「ああ、3号は6カ月前に報告に戻ってるんで替わりにこっちに送られた自分は4号になるっス。そんな事よりまずパートナーの起動をしに行くッス」
最初の部屋と違いしっかり整備された通路を腕を引っ張られながら進み説明を受ける
「転移先は異世界感を出すために石造りにしたッス、普通の部屋より手間かかってるんッスよ?」
異世界感って…、本当にここの先遣隊は大丈夫か不安になってしまう発言だ
「まぁまぁ、んでパートナーのボディなんすけどちょっと作成に手間取って一個しかないッス。ここの特殊エネルギーを活用できるように調整してたら時間かかったらしいッスよ?」
らしいって…なんで把握してないのかやんわり聞いてみたのだが、どうやら物品の製造は4号の管轄外らしい
何だか先が思いやられるがこちらには転移設備はない、一旦帰る事など出来やしないので慣れるしかないのだろう
不安が先行する中、俺の異世界生活が始まるのだった
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
~言い訳欄~
なんとなく書いてみました、意外と小説って難しいぞ
流行りに乗っかった素人小説です、無料の暇つぶしにでもなれば幸いです
SFファンタジーって少ないかな?って思ってノリで書きました
主人公は喋らず見た人の想像に任せる系を目指したら薄味になった
文法とかガン無視なのは許してください
次回は女の子枠が登場できるといいな
仕様がわからんかったから本文にあとがき書いてしまったぞ
次回から気をつけようっと