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if白雪姫・白雪の逃避行  作者: 秋和翔
9/10

王子様

「白雪、しっかりしてください。もう大丈夫ですよ」

 白雪はその言葉で、正気を取り戻しました。目の前には昔よく遊んだ王子の顔がありました。

「よかった。白雪、王子様が助けに来てくれたんだよ。お城まで連れて行ってくれるって」

 白雪姫とハクアは王子様と馬車に乗ってお城に向かいました。白雪姫は頭の整理がつかないまま、馬車で体を揺らしていました。

「ほら、つきましたよ。僕のお城です。もう部屋は用意してあるのでゆっくりするといいですよ。すぐに食事も部屋に運ばせます」

 王子はそう言うと、兵になにか指示を出しました。白雪姫とハクアはその兵に部屋まで案内されました。部屋はとても広く、懐かしいものでした。

「あぁ、こんな広い部屋なんていつぶりだろう。ハクア、ここまでついてきてありがとう。」

「ううん。こっちこそお礼を言わなくちゃ。白雪とあの日出会わなければ、私は流れ星になっていたよ」

 2人はこれまでを振り返りました。客観的には数日しか経っていないのに、主観的には何ヶ月も何年も一緒に過ごしているように感じていました。

 お食事をお持ちしました。その言葉に2人はパッと顔を明るくしました。

「白雪、安心して食事ができるね。いっぱい食べよう」ハクアの言葉に、白雪姫も笑ってうなずきました。そう、今日ぐらいは今までのことを忘れるくらいに楽しく過ごしたかったのです。幸せに浸りたかったのです。

 白雪はハクアと食事を味わい、そしてふかふかのベッドに包まれながら眠りにつきました。


 コンコン。次の日、白雪姫は王子の部屋の扉をノックしました。

「白雪です。王子様、これからのことについて相談したいことがあります。よろしいですか」

「いいですよ。僕も白雪とゆっくり話したかったんです。どうぞ入ってください」

 白雪は扉を開け中に入りました。

「どうぞ、座って。久しぶりだね。白雪の国のことはある程度のことは分かっています。乗っ取られているようなものなんですよね。僕の父上も心配しておりました」

「そう・・・だったみたいですね。恥ずかしながら昨日初めてそのことを知りました。それで、この国の力を貸して欲しいのです」

「そういうと思っていました。父上もそうしたいと願っていました。ですが一国の主としてその決断は最後まで取らなかった。国民を危険に巻き込むわけにはいきませんからね。僕も父上のその意志を継ぐものとして簡単に首を縦に振るわけにはいきません」

「では、力は貸していただけないということでしょうか」

「国としては力をお貸しすることは出来ません。ですが、僕個人としては白雪の力となりたい。ですがこのままの関係では、僕個人としても力を貸すことは出来ません。そこで、こんな無粋な形で言いたくはなかったのですが、僕のお嫁さんになってはくれないでしょうか。そうすれば、旦那として家族として白雪を助けるのに充分な理由です」


 王子の突然の発言に白雪姫の目は点になりました。白雪姫が何も返せずにいると王子は言いました。

「突然のことで驚くのも無理のないことです。ゆっくり考えてください」そして扉を開けて白雪姫に部屋を出るように言いました。ですが白雪姫は席を立たないまま言いました。

「いえ。王子様のお嫁になることに何も言うことはございません。私にとっては貴方は私の王子様だったのですから。だけど・・・こんな形で結ばれるのは少し寂しいものです。王子様は本心から、心の底から私を欲しいと思ってくれていますか。私は同情や情けで結ばれるのは悲しいです」

「そんな心配をする必要はないですよ。私は白雪を愛しています。昔からずっと愛しています。こんな形でプロポーズをするつもりなんてありませんでした。こんな卑怯者がするような手で君に想いをげたくはなかった。でもそれにこだわっていれば、前には進めないから。だからこんな形でも貴方をお嫁にしたいと言いました。同情でも情けでもありませんし、助けるため力を貸すためなんて建前です。愛のもとに私は貴女を白雪をお嫁にしたいのです」

「そういってもらえて安心しました。その言葉を求めていました。喜んで王子様のお嫁になりましょう」

「ありがとう。でもこれからが大変だ。あの王妃をどうにかしなければいけない。戦は出来るだけ避けたいが・・・・話し合いでどうにかなるとは到底思えない。どうしたものか・・・・」

「私に考えがあります。考えというより私がすべきことだと考えることなのですが・・・」

「遠慮せずに白雪の考えを教えておくれ」

「はい。私は、私は裁判をすべきだと思っています。事実を明らかにして、正々堂々と王妃に立ち向かうべきだと思います。暴力ではなく理性で勝ちを得るべきだと考えます」

「でもそれではきっと勝てない。万が一王妃が裁判を開くことを認めたとしても、裁判員や検事、弁護士、その他この件に関わるほとんどの者が王妃の息がかかった者でしょう。そんな勝てない裁判をしても意味がない」

「えぇ。きっと普通に裁判をすれば私の負けでしょう。ですから私がするのは国民全員が参加する裁判です。国民自身が判断するのです。どちらが悪でどちらが善なのかを。そして私の弁護は王子様、貴方がしてください。旦那としてお嫁を守ってください」

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