5. そんなこと言わせてごめんな。
話をしよう。女の子を押し倒して胸をわしづかみにしている。以上だ。
「アッ……アッ……」
問題なのは対処法だ。残念ながら、今の俺には変な鳴き声を上げることしかできない。
いっそ押し倒されている方に殴ってもらうのがベターだろう。だが、彼女も対処法を存じ上げない様子で。
「……ぁぁ……ゃぁ……」
顔が完全にゆで上がってる。あれだ。見事に箱入りお嬢様な反応。
ちょっとこう、興奮する。いやそうじゃない。
なんとかせねば。謝ろう。うん、それがいい。「めっちゃやわらかい」って。
うん? 謝ってなくない? それ追い打ちじゃない?
決壊ギリギリの理性をどうにかつなぎとめつつ、対応策を考えていると。
「……だ……め……」
涙でうるんだ栗色の瞳が、覆いかぶさるこちらの顔を向く。
「……たべ……ないで……ください……!」
瞬間、ある甘言が脳裏に飛来する。
――せめて女にキスしてから飛び降りるべきだった。
理性が弾ける音。
気がつくと、俺はその薄桃色の唇にキスをしていた。
「んんぅ!?」
突然の凶行にリルハが呻く。構うものか。こうなったらやるとこまでやるしかねえ。
一度ならず、何度も、何度も、貪るように唇を重ねる。
触れるたび、この世と思えない柔らかさが伝わる。離すたび、吐息が花の香りのように鼻孔をくすぐる。
「んっ……んぅぅっ……んんっ……♡」
次第にリルハの方からも唇が迫る。
お互いに食らいつくように重ねるキス。唾液が混ざり合い、淫靡な音を立てて鼓膜へ響く。
溶け合う理性は次第に右手を動かし、左手をもう一方の乳房へ誘う。
キスしながらもみしだく巨乳は、たしかな弾力と、その下に埋もれたなめらかさに恍惚とする。このような物体がこの世にあっていいのか。
いい。俺の最期と十分釣り合う。
「んっ♡ っんんぅ♡ っうぁぅううん♡♡♡」
喘ぎ声はどんどん艶っぽくなる。完全に愛撫だ。それこそ、この後「本番」に達しかねないほどに。
……さすがにそこは最後の良心がこらえた。
10分ほどそうしていただろうか。絡み続けていた舌を離し、すっかりとろけ切ったリルハの目を見据え、言い放つ。
「――そんなこと言わせてごめんな……」
……満足した。
痴漢冤罪で死んだというカルマを背負ったなら、もはや本当に痴漢する他ないだろう。
リルハは紛れもない聖女で、それをちょこっと汚すのは忍びなかったが、もうケンカ別れでもいい。二度目の人生、せめてそのあたりは自由に――
「――コージィくん……♡」
聞き捨てならない言葉が甘く響いた。
「……しゅき♡……だいしゅきですぅ……♡」
錯視だろうか。彼女の瞳の中に、なぜかハートマークが浮かんでいるように見えて。
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《寵 愛 授 与 完 了》
《[女神の寵児] 寵愛対象登録:リルハ(Lv:45 職業:魔法騎士)》
《【Tips】寵愛を与えた対象はおぬしに全面の愛情を寄せるぞ。さらにその者の取得経験値の倍の経験値を得られ、「おぬしのために尽くす」という目的の上では能力値にブーストがかかるようになるのじゃ!》
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視界の端をよぎる、絶対に見逃せない能力解説。
眼前にある、俺だけを見つめる愛情フルブーストな視線。
……とんでもない能力をゲットしてしまった。
俺はようやく、事の重大性に気付いたのだった。