13. おしえて!神さま!(2)
「して、その『貢がれた愛で己を磨け』システムなんですが」
「ぜんぜん変わってないっ! まぁよいわ。今はちゃんと『動くか』どうかが大事じゃ」
動くか、という言い方に引っかかるところがあるが、ひとまず神さまの指示通り「スキル組み立てたい」と念じてみる。
すると、どこぞのRPGの道具屋で見かける「お買い物画面」のようななにかが、眼前に出現する。
視界に直接文字が浮かぶのではなく、ホログラフの画面が目の前に現れているような感じだ。
「よーしよしよし! 問題ない! 問題なく動いたみたいじゃな!」
「動くって、まるで初めて起動させたような言い方ですね?」
「だってさっきおぬしに追加したんだもん」
「はい? さっき? 追加した?」
「指パッチンで一発じゃ。いやーだっての、あんなに親愛付与アイテム集まるのは想定外だったし、活用しないのはもったいないじゃろ?」
「そんなスナック感覚で人間改造できるって恐ろしいですね!?」
やろうと思えばこの場で「全身の感度3000倍」とかもできちゃうのではないか。男にそれやっても虚しいだけだろうけど。
「まぁそんなことはよい。とりあえずこの機能を説明するとだな……」
と、神さまはさぞ楽しげに「親愛御供」の説明を始める。熱っぽいセールスポイントや、前身となってる能力の小話など、もろもろの付随情報を削ぎ落とすと、機能は以下のようにまとまる。
・親愛付与されたアイテムから、「親愛」を引き剥がし、「スキルポイント」に変換できる。
・得られるポイントは、引き剥がした「親愛」一つにつき1ポイント。
・ポイントは「スキル引き換え画面」を呼び出し、スキルと交換できる。
・交換したスキルは自分で装備可能。あるいは、他人に与えることもまた可能。
・ちなみに「親愛」を引き剥がされたアイテムは、ただのアイテムに戻る。
「こう、なんでしょう、この世界もそうなんですが、それ以上にゲーム的システムですね!?」
「ポイント交換制にしたのは意味がある。『愛による奇跡の実行』を定量化するためじゃよ」
「奇跡? 奇跡って文字通りの?」
「恋人が祈ったら力が湧いて勇者が魔王をドーン!っていうのあるじゃろ? あれを『スキルの獲得』という方面にしぼった上で、かつ『愛』をカウント可能なものに変換して消費する。そんな感じじゃ」
「さりげなくすげえことしてますね……」
原理はわかるけど、「恋人の祈りが!」的なロマンティックなものを、ものの見事にシステマティックにしてしまうことがすげえ怖い。それができてしまう俺の今の体はそれはもうヤバいでしょう。
「というわけで、いつでもスキルは交換できるようにしてるからの。うまく使って、おぬしの芸に幅を広げる方面で使うとベターじゃな。主に女が一斉に振り向くような力をアピールするために!」
「下心満開なアドバイスありがとうございます! とはいえ、スキルだけじゃなくて、レベルも上げないとさすがに振り向いてもらえない気もしますねぇ」
「んん? レベル上げのことなんぞ、なぜ心配する?」
「いやまぁ、好意を向けてくれる女の子が経験値を稼いでくれるシステムあるのはいいんですけど、なんというか……自分で大物ぶっ倒して、それでチヤホヤされつつ、経験値もがっつり! みたいなこともしたいじゃないですか!」
「変なところで真面目じゃのう、おぬし」
「モテるにもやはり説得力はほしいので」
「じゃが、それならなおさら問題なかろう。『ついさっき』荒稼ぎしたばっかじゃろ?」
……ついさっき?
クラウンスパイダーのことか? でも、あれだって3レベル分くらいしか上がった記憶ないし、それが正しければ、いまレベル27なはずだけど……
疑念を抱きながらステータスを表示してみると、圧倒的な異常が出現した。
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■コージィ Lv:62
【ステータス】
筋力:620
魔力:625
耐久:618
敏捷:622
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「――――はい!?」
27どころじゃない。この身に覚えのない35レベル、どこからやってきたよ!?
「あっ、そうか、『寵愛対象とのふれあい』システム、説明してなかったっけ?」
「……なーんも説明ないしTipsにも書いてないです」
「うん、じゃあざっくり具体例出しちゃうと、『寵愛対象の子とセックスすると経験値がめっちゃ入る』ってことじゃ!」
「なあああああんだとおおおおお!!!!!?????」
そんなエロゲもAVも真っ青なシステムが実装されているのか!? この俺に!? 俺の体に!?
しかも死に物狂いでモンスター倒して得た経験値もミソッカスに見えるくらいに!?
「いやぁ〜、あのリルハという子、完全にお主にゾッコンじゃしのう! 運命の王子様に抱かれればそりゃ最高の『経験』じゃろう! しかも! おぬしもこれまた『童貞卒業』と『処女とのセックス』というダブルブースト! そのくらいの経験値が入ってもおかしくあるまい」
「いいの!? 経験値ってその『経験』で!? そんな風に融通きかせて大丈夫なの!?」
「経験は主観の産物じゃからの。それが自分を成長させたと思えるなら、レベルの1や100はアップする。そういうものじゃろ?」
存じ上げません。でもたしかに? 過去に20人と付き合ってたとかいう課長、すっげえ堂々とした立派な人に見えたし……そういうことなのか……?
しかし、これで俺にとって明確な「方針」が立ち上がったことになる。
「……要するに神さま、俺、とにかくたくさんの女の子にチヤホヤされつつ、リルハとイチャイチャすれば、それだけで最強になれるってことですか!?」
「なにもあの子一人である必要はないぞ。わらわの推奨プランは4〜5人を嫁にして日夜大車輪大乱舞じゃ」
「あっ! 知ってる! それってハーレムだ!」
「そういうことじゃ! 男の夢! そうじゃろう!」
「まさに……まさに……!」
その通りすぎる。しかも実利に直結したハーレムって、そんな都合のよい話があっていいのか!?
――いいと思う。俺の葬儀を執り行っているであろう両親や、哀れな最期を聞いた友人たちに、堂々と報告できる。
みなさん。俺は痴漢冤罪で悲惨に死にましたが、異世界で元気にヤッております――
「……神さま、俺、やるよ。前世なにもできなかった分、ここで楽しく生きていくよ!」
「――うむ。それでこそわらわの見込んだ逸材よ!」
神さまも満足げな顔になる。異世界に送り出した時よりも、ずっと満足げな、安心したような。
もしかすると、あんな最期とこのチートを持ってしまった俺が、内心では心配だったのかもしれない。
だったら、生みの親ではないけど、「生まれ変わりの親」に心配はさせられまい。俺も踏ん切りはついた。こうなりゃ、ハーレム王でも目指して、邁進するのみ!
「では、わらわはここで退散するかの。あの娘も起きそうじゃしな」
ふと背後を見やれば、ベッドで寝ていたリルハが起きそうな動きをしている。寝ぼけ眼をこする動きは愛らしいが、神さまの姿を見られるのはさすがに問題だろう。
「なにか用があれば適当に祈るがよい。よっぽどでない限り駆けつけてやるからの」
「ありがとうございます神さま!……あっ、最後に一つだけ!」
「ん?」と首を傾げる神さまに、目を覚ましそうなリルハを見て、ふと浮かんだ質問をぶつける。
「――さっきので、リルハ孕んでたりします!?」
「問題ない――今日は安全日じゃ!」
グッ、っと親指を立てて、神さまはゆっくりと消えていった。




