表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

5 素敵なクラスメート達の会

 自室にて。

 明日の予習を終えて即スマホを手に取る僕は立派なスマホ中毒者だった。学業に支障をきたすので国際法でスマホを禁止してくれないだろうか。チッ、サツに見つかった! ……サイバーパンクかな?


 とりあえず新着メッセージがないか確認しようとL!NEを開く。一覧の最上列に目がいく。グループラインだった。新着が100件ほど溜まっていた。


「はぁ~」


 僕はクソデカ溜め息を吐いた。スマホの画面には以下の文字列が表示されている。




 『2-3の素敵な仲間たち』




 アプリ《L!NE》のグループチャット名だ。

 所謂クラスラインと呼ばれているもので、同じクラスに所属している生徒は、漏れなく参加している。一昔前の学校裏サイトみたいなものだ。

 当然クラスラインには僕も参加している。僕の名前が2-3のクラス名簿に載っているからだ。実は2-1所属でした、とかいうオチだったら軽く笑える。

 もしあるにしても、僕をハブったクラスラインが内緒で存在しているぐらいだろう。クラスの闇だ……。

 明日の時間割を訊いたら全クラスメートから既読無視された、とかもクラスの闇あるあるだ。ボッチ同士で駄弁るときの鉄板ネタですらある。ただしプロのぼっちは雑談すらしない。つまりこのネタを披露する機会はない。「俺、ぼっちだから~笑」と自慢気に話している輩を稀によく見るが、奴はぼっちを個性だと勘違いしているモグリだ。胸のぽっちを開発して差し上げろ。ぼっちは遊びじゃないんだよ!!


 ……話が脱線した。

 というか何の話だっけ……。あ、そうだ。クソデカ溜め息の原因についてだった。

 L!NEのともだち一覧で異彩を放っているグループ名に目をやる。


『2-3の素敵な仲間たち』

 トップ画面には運動会後の打ち上げで撮影された集合写真が載っている。

 教室に必ず一人はいるお調子者(あれはどういう理屈がはたらいているのだろうか。教師が意図的に配備しているのか?)が前列で横たわってダブルピースをしている。アヘってはいない。列の右側では爽やかな好青年(差し出がましいが注釈を入れる。彼は僕ではない)が女子に囲まれながらお揃いのポーズを決めている。クラス1の秀才(残念ながら彼も僕ではない)がアステロイドを模したポーズをしている。完全に滑っている。クラス1の美少女(彼女はルリではない)が上品に微笑んでいる。僕は画面左端で見切れていた。何故だ。陰湿なイジメにあっている訳ではない。少し存在感が薄いだけだ。椅子に座っている僕に気付かず、クラスメートが僕の膝上に座ってしまうくらい存在感が薄いだけだ。

 ……また話が逸れてしまった。

 溜め息の原因は集合写真で見切れていたことではない。というか、集合写真はどうでもいい。それよりも名前だ。



 そう、僕はグループ名が気に食わないのだ。『2-3の素敵な仲間たち』という名称が。


 自画自賛。


 ……控え目に言わせてもらうが、自己評価高すぎないか?


 自分で自分のことを『素敵』って表現しちゃう感性が素直にすごいと思う。同時にヤバいとも思う。誉め言葉か貶し言葉かどうかは聴き手にお任せする。

 恥じらいという言葉を知らないのか。謙虚と謙遜という日本文化は何処にいってしまったのか。許さんぞ、忌々しい欧米文化め。と、近代以降の欧米による文化的侵略を憂う大和男児のフリをする。


 グループ名に下ネタが入っていようが何だろうが知ったこっちゃないし実害はないし、そもそも僕にとやかく言う権利はない。

 でもさ。

 人間恥じらいも大事だよ。

 クラスの誰が決めたのか知らないけど冷静に考えてほしい。

 自己紹介で「私は素敵です」とか言われたらドン引きするぜ、少なくとも僕は。もっと謙虚と堅実をモットーに生きてほしい。

 名付けた彼(彼女)はきっとクラスの連帯感を高めようという意図があったに違いない。けど、もっとマシなグループ名あったでしょ……。


 『グループ名を変えてほしい』という旨をクラスラインに投稿しようか悩んだが、僕のクラス内の立ち位置的に無謀だった。ぼっちだからね、しょうがないね。

 色々と面倒臭くなってやわらかいスマホをベッドのクソデカ枕に放り投げた。


 再びクソデカ溜め息を吐く。



「アホくさ」




日本語むずかしです

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ