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第5話 そういうの、求めてないんで

「…へ?」


…おいおい、何だこの状況は。俺は戸惑いを隠せないまま、できるだけ客観的に状況を確認する。

隣に引っ越してきたという女性から菓子折を受け取り扉を閉めようとしたところ、その女性によって阻まれた…という感じだったはずだ。


(いや、どういう事だよ!?)


うっかり叫びそうになる衝動を抑えつつ、俺は出来る限り声を荒立てない様に話し掛ける。


「あの…何かご用ですか?」

「せっかくお隣さんになった訳ですし、交流を深めたいな、と思いまして!」

「…今は忙しいので、また今度お願いします」


あまりにもゴリ押し過ぎる隣人に再び頭を抱えつつ、俺はドアを閉めようと試みる。


「ちょいちょいちょーい!待って下さいよ!

悩みとかお聞きしますよ!?」

「隣人が御節介で困ってます」


おっと、口が滑った。だが相手の女性は気にしている様子もなく、再び喋り始める。


「そういうのじゃなくて!何かありません?こう…生活してたらなんかあるでしょ?」

「は、はぁ…」


正直、何故ここまで食い下がるのか疑問でしかない。

もちろん悩みの種が無い訳ではないが、今日会ったばかりの隣人に頼るのはおかしいだろう。


「そう言われても、そうそう見ず知らずの人に悩みを打ち明けるはず無いじゃないですか…」

「むぅ…確かに、それはそうですね…。失礼しました。また今度伺います。」


また来るのか…まぁ、今日はとりあえず引き下がってくれるようなので良しとしよう。


「では、そういうことで!また今度!」


どういうことなのか全くわからないが、これ以上会話を続けるのは面倒なのでそのままドアを閉める。


(…何か、ドッと疲れたな…)


先ほど貰った菓子折を手にし、居間に戻る。すると、所在なさげにキョロキョロと周りを見回すぐる子の姿があった。


「あ、悪い…。」


まだこの家に慣れてないのに、一人にするのはちょっと可哀想だったかもしれないな。


「ほら、貰った菓子があるぞ。後で食べような。」

「うー…?」


お菓子という概念がそもそも無さそうな気はするが、ノートによれば大抵のものは食べられるようなので問題はないだろう。…正直、出処のわからないこのノートの情報を鵜呑みにするのはちょっと怖いのだが。


(後は…服と靴、か。)


いつだったか、超インドア派の知り合いが言った「服を買いに行く為に服が必要」という矛盾を孕んだ迷言を残していたが、少しだけその気持ちが分かる気がする。今の格好では到底外を歩かせる訳には行かない。


(・・・。)


悩んだ末、服飾に詳しいいとこに電話で助けを求めることにした。本人曰く、ネット通販での服の買い方、なるものがあるとか。注意すべき点を一通りメモし、ぐる子の身長と足のサイズを測って、通販でいくつか購入するところまでやると、ちょうど12時の鐘が鳴るところだった。



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