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第2話 2人で初めての食事

あの後、少女を風呂に入れるのにも一悶着あったのだが(そもそも服を着せる前にやるべきだった)、何とか成し遂げて突っ伏していた。


「ふぃー…どっと疲れた…」


全く、自分で言うのも何だが、少しお人好し過ぎやしないか。いくら目の前の奴が美少女だからって、家に上げて風呂も入れさせて。…あれ、何か足りない気が…


ぐぎゅるるる〜。


静かな居間に、腹の音が響く。…そういや、飯がまだだったなぁ。


「ごはんー…」


顔を上げると、少女はちょっと困ったように眉を下げて、飯をねだっていた…少し図々しい気もするが。


「ま、良いや。そこで座ってろよ?…理解してるのか分からないけどな。」


今日は買い物どころじゃなかったからな…とりあえず家にある食材で作るしかない。そう思って冷蔵庫を開け、食材を幾つか見繕う。


「さて、こんなもんかな…、ん?」


一通り材料を並べて冷蔵庫のドアを閉めると、音を聞きつけたらしい少女がキッチンにやってきた。


「ほれほれ、危ないからあっち行ってろよ。」

「ん〜…?」


追い払う様な仕草をしてみるが、良く分かっていないのか首を傾げている。…明日、赤ん坊用の柵でも用意しなきゃダメか?

そんなことを考えながら具材を切っていたのだが、


「さて、後は肉だけ…あれ?」


用意していたはずの食材が忽然と消えている事に気が付いた。


「おーい、ここに置いた肉知らない…か…」


包丁を一度まな板に置き、いつの間にか静かになった少女の方に目をやると、足元にはビリビリになったビニールと真っ二つに割れた発泡スチロールが。そして、手には生肉の塊を持ち、今まさにかぶりつこうとしている少女の姿があった。


「ちょっと待てっ…流石に生肉はヤバい…!」


俺は慌てて駆け寄るも、時既に遅し。少女は生肉を噛み千切っていた。とても満足そうな表情のまま頬張っている所を見ると、何故か冷や汗が止まらない。


「な、なぁ…それ料理するから返してくれないか?」

「…りょう、りー?」


ヤバい。これは困った。もしかしてどっかの部族の原住民?それにしては肌が白いような…俺のイメージがステレオタイプすぎるだけなのか?


「…まぁいい、それ食べて待ってろ。」


とりあえず肉を入れる事は諦めて、俺は鍋に食材を放り込む。そういや名前も決めてやらないと…そうだ、もしかしたらさっき拾ったノートに書いてあるかもしれないな。出てきた灰汁を掬い、鍋に蓋をしてから少女に話しかける。


「ほら、ご飯もうすぐ出来るから手洗おうな〜」

「んー」


相変わらず理解しているんだか良く分からないが、細かい事を気にしていてはやっていられない。どうみても余りまくっている袖をまくってやり、1から手の洗い方を教える。


「お〜…」


綺麗になった手を眺める少女。石けんの香りが珍しいのか、くんくんと自分の手を嗅いでいる。


「さて、こんなもんかな。…っと、鍋敷き…」


どうにか食事の準備を終え、俺は座布団に座る。少女には箸を扱えそうにないので、代わりにレンゲを用意した。お椀2つに具材をよそって、手を合わせる。


「いただきます」

「…いただき、ますー」


少女が真似をして、一緒に手を合わせた。そして代わりに入れておいた肉団子を割り、口に頬張る。


「あふっ…もごもご…」

「だ、大丈夫か?」


少女は慣れない熱さに驚いたのか、両手で口元を押さえながら悶えている。やがて、それを飲み込むと休む間も無く次の具材を口へ運んだ。


「んー…おいふぃ…」

「そうか。なら良かった。」


そういえば、こうして自分の料理を他人に振る舞うなんて久しぶりだ。普段自分で食べる位の腕しか無いが、やはり褒められるのは悪くない。…っと、そうだ。こいつの名前を決めなきゃな…


_____



「ご馳走様でした、と。」

「…ごちそーさまー…」


結局、雑炊まで作らされた上ほとんど少女に食われたので、明日からはもっと量を増やさないといけないな…と思った。

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