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2017年7月7日記念SSーピッツァ祭りーpart1

改訂版前の閑話をこちらに移動しますノ

「もっと色んな種類のピッツァ食べたーい」


 僕のお勉強最中に家庭教師役のフィーさんが、唐突にこんなことを言い出しました。


「……出来るだけ色々出してますが」

「そーぉじゃなくてー」


 と、椅子の背もたれに顎を乗せて不貞腐れてると言うお子ちゃまのわがままモード発動。

 この人云万年以上生きてる神様だよね? この世界の管理者さんだよね?

 見た目中学生にしか見えないから違和感はないけどさぁ?


「ふゅ、ふゅゆゆ?」


 クラウは意味とかはわからなくないけど、先読みは難しいからか首を傾げている。実際僕もフィーさんが何を言いたいのかよくわかってない。


「具体的に言ってください。僕が何か粗相でもしてしまいましたか?」

「それはないよー? 君は超が100個ついてもいいくらいの良い子ちゃんだもん」

「はぁ……」


 僕のことじゃないなら、一体なんだろうと首を捻るしかない。

 すると、フィーさんはぴっ、と人差し指を立てた。


「ピッツァ一枚を分けっこするのが悪いんじゃないんだ。だけど、だいたい取り合いになって食べれないのがあったりとかするじゃない?」

「まあ、僕のやり方ですと8枚に分ける方法ですから」


 四角くする場合もなくはないが、僕あんまり四角いピッツァを作ったことがないので要練習する必要があるんだよね?

 でも、どっちにしたってあのほとんどが大食いメンバーだから切り方を変えたところで意味がないだろうし、フィーさんが言うこともそうじゃないはず。

 なら、


「ピッツァ祭りをしましょう!」

「へ?」

「ふゅ?」


 そうと決まれば、協力者を募らなくては!







 ◆◇◆








「と言うわけです!」


 僕は上層調理場の一角をお借りして、メンバーに諸々の事情を説明しました。


「なるほどね?」


 まずはファルミアさん。

 今日もまばゆい程のお美しさですよ。不敵な笑みもチャームポイントになっちゃう。


「お手伝い出来るのであれば構いませんよ」

「僕も同意見ですね、料理長」


 この上層調理場を預かる立場のマリウスさんにライガーさんもうきうき気分を隠せない。


「俺はまだ覚えたてだが、具材の選別は任せろっ」

「私も微力ながらお手伝いするね」


 最後は中層料理長のイシャールさんにライガーさんの弟さんで下層料理長のミュラドさん。特にイシャールさんはただでさえ熱い闘志が燃え上がっていくように見えるよ……ヤケド注意だ。

 主要メンバーはこの方達です!


「祭りと言うからにはお前らも手ぇ抜くなよ!」

「「「「『はいっ!』」」」」


 イシャールさんが声がけをしたのは上層調理場のコックさん達。皆さんノリノリですよ。

 中層下層の皆さんは参加すると通常業務が難しくなるので、料理長お2人のみのご参加。後で差し入れは持っていく予定だけどね。


「生地担当は僕とファルミアさん。ソースとカッツの仕込みはマリウスさんとライガーさん。トッピング用の具材調達、調理は最初イシャールさんとミュラドさんにお願いします。生地が出来次第そちらにも回るので」


 と言うわけで、ピッツァの仕度開始です!


「フィーの言い出しっぺからだけど、いつも以上に大勢で仕込むのもいいわね」


 生地をこね出した辺りでファルミアさんがそう言い出した。


「たっくさん仕込んで、たっくさん焼きましょう!」

「今日はここで食べるわけじゃないしね?」


 詳しいことは後ほど。

 とりあえず、えっちらおっちら生地をこねてまとめて発酵休みさせておく。

 ソースは三種類とも主にマリウスさんが、ライガーさんはコックさん達とひたすらシュレッド作業してくださってます。手元が見えないよ皆さん。


「カティアちゃん、ちょっと口開けて?」

「ほぇ?」


 ミュラドさんに肩を軽く叩かれて振り向けば、口に薄い何かを入れられた。

 あむっと歯で噛み切ろうとする前に、唇からひりひりと香辛料特有の辛味成分が拡がっていく。


「か、辛いーーーー⁉︎」

「カティアちゃんがダメなら、このラミートンはダメだねイシャール」

「マジで食わすなよカティアに」


 ひりひりピリピリと痛いよぉ。

 けれど、残しませんとも。痛いと言いながらもあむあむと口の中で咀嚼します。

 辛いけど、これ多分唐辛子と黒胡椒の配合だろうね?

 辛いサラミ系だとペパロニに近いものかな。


「カティには遠慮しておいた方がいいわ。成人前の子でもこの辛さは苦手とする子が多いもの」

「セヴィルさんにはいいのでは?」

「うーん……そうね。お祭りだからこそのアレとしてならいいじゃないかしら。カティ、イシャール、ミュラド。ちょっといいかしら?」

「なんだ?」

「なんでしょう?」


 こしょこしょこしょっと秘密の打ち合わせをすれば、僕とミュラドさんは苦笑い、イシャールさんは目をらんらんと輝かせた。


「おっもしろいじゃねぇか!」

「後でマリウスとライガーにも教えましょう。それ以外には秘密よ?」

「承知しました」

「景品とかどうします?」

「そうね…………それはもう少し練りましょう。今はピッツァの仕込みよカティ」

「はーい」


 手を洗って僕はファルミアさんと一緒にテリヤキチキンを作りに行きます。






 ☆・☆・☆(フィルザス視点)






「やったーやったーやったたった!」

「ふゅゆ、ふゆゆ、ふっゆゆー!」


 クラウを頭に乗っけながら僕は廊下をスキップしていた。

 別に目的のとこには転移してけばいいだろうけど、カティア達のは時間がかかるって言ってたしから自分の足で行った方がいいしね。

 僕は今回言い出しっぺだけど、クラウの世話と伝言係に任命されたから快く引き受けたよ。どんなピッツァが出てくるか楽しみだもの。

 神だからって、雑用は厭わないよ?


「珍しい組み合わせじゃねぇか? えらく上機嫌だが」

「やっほー、サイノス!」


 僕の数倍大っきいサイノスは軽装の騎士服で僕の前にやってきた。控えには近侍達がいたけど、サイノスとは違って少し距離を置いて腰を折っていたよ。

 まあ、エディ含めて神霊(オルファ)の血を引く者くらいしか僕と対等に接しないからね?

 イシャールとかは別だけど。あの子は豪胆なとこがあるし。

 は、置いといて。


「ちょうど良かったよ。伝言に来たよ!」

「俺?」

「うん。大体いつもの面子にー」

「ふゅ、ふゅゆゆ!」


 クラウが我慢し切れないのかぴょんとサイノスに飛びついていく。サイノスはさして驚かずに受け止めればクラウはすりすりと頬ずりしていた。

 サイノスは聖獣や神獣にとっても好かれやすいからね。本人自覚してないけど。


「っつーと、昼餉か八つ時にまたいいもん食わせてもらえんのか?」

「そっそー! 君はどこ行く予定だった?」

「エディのとこだ」

「じゃ、ちょうどいいからそこで説明するよ」

「サイお兄様にフィルザス神様?」

「あれ、クラウがいるね?」

「やっほー、アナ。ユティも」


 呼びに行こうとしてた面子も来て手間が省けるよ。

 さて、エディのとこに行こうか。







 ☆・☆・☆(アナリュシア視点)







「「ピッツァの祭り⁉︎」」


 フィルザス神様がわたくし達以外、近侍達を人払いさせてご説明いただいたところ、ユティリウス様とエディお兄様が揃ってお声を上げられた。

 お祭りと言うと、わたくしには幼い頃にエディお兄様に連れて行って下さった城下町の豊穣祭などですわね。もう200年以上も昔ですが。


「言い出しっぺは僕だけど、今四凶(しきょう)達が裏庭で即席の窯とか作ってくれてて、カティアとミーアはピッツァ仕込んでくれてるよ」

「かま? ですの?」

「アナは馴染みねぇのは無理ないな。パンとか焼くのに使うもんだ」


 答えてくださったのはサイお兄様。

 想像するのは難しいですが、ピッツァは焼きたて熱々ですものね。そう言うものが必要だと思っておきますわ。


「いい提案じゃねぇかフィー」

「君達が際限なくピッツァ貪るからもあるけどね?」

「ご、ごめん」


 たしかにエディお兄様とユティリウス様はあっという間に召し上がられますもの。先に皿へ取っておかなければ食べ損なうのもしばしばあるくらい。

 それほど、カティアさんのピッツァは美味しゅうございますものね。


「しかし、何故裏庭で焼くのだ?」


 書類の整理をしながらゼルお兄様は不思議そうに首を傾がれていた。

 わたくしとサイお兄様が持って来た書類の最終事項以外はもう終わりそうですわね。


「んー? カティアがすぐに焼きに入れるようにしたいから、食堂も悪くないけど裏庭の方が気兼ねないって」

「けど、匂いを閉じ込める結界張らねぇと誰か来るぞ?」

「「「あー……」」」


 以前サイお兄様がゼンザイの時にいらっしゃいましたものね。あれ以上に食欲がわくピッツァでしたら大変なことになりますわ。


「そこは僕が結界張るよ」

「時間は昼餉か?」

「そっそー! 僕はこれから裏庭に行ってくるからエディ頑張れ!」

「終わらせてやるーー‼︎」


 エディお兄様、いつもその勢いで執務に打ち込んでくださいませ。

 手元が見えないくらいの処理にまで行きますとあっという間ですもの。

 さて、わたくしもあと少しですがきっちり終わらせなくては。








 ◆◇◆







 材料等々を持って、いざ裏庭に突撃!

 と意気込んで行けば、僕はあんぐりと口を開けてしまう。


「……どうしたカティア?」

「どこかおかしいか?」

「ファルの指示通りに作ってみたが」

「不備があるならば遠慮なく申してみよ」

「い、いえ……」


 四凶さん達の言葉に僕は口を閉じながら左右に首を振った。

 僕が驚くのも無理はないと思うんです。

 いくら4人(匹?)がかりとは言っても、2時間弱でピッツァ用の窯がほぼ完成してるなんて思うだろうか?

 しかも、熱消毒まで処理済みとか、この人達の食への探究心はファルミアさん仕込み?


「あら、大体窮奇(きゅうき)が設計した通りね? ヘラ……ピールの準備は?」

「これで良いか?」


 取り出したのは渾沌(こんとん)さん。

 僕がいつもよく使うフィーさん特製のピッツァヘラのピールとなんら遜色ありません。


「だ、大丈夫ですっ」


 他にも即席アイランドキッチンのようなものまで設置されていました。

 後から来る料理長さんメンバーのためかな?

 ライガーさんだけは料理長代理で調理場にいなきゃいけないのでこっちには来ないらしいけど。

 とりあえず、往復しながら僕らは材料すべてをアイランドキッチンに乗せていく。


「裏庭でたぁ、新鮮だな? 野営とも違うが」


 イシャールさんはピッツァ回しをやってみたくてうずうずしているよ。

 けれど、裏庭では僕以外は禁止と上司のマリウスさんがお止めになられたんで不貞腐れながらも麺棒で伸ばすことに。

 まあ、いくら料理長さんでも一朝一夕で出来ないから。

 そうでないと僕の四半世紀以上かけた技の習得がなんだったのかと思っちゃうよ。今でも油断は出来ないけどね?

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