お揃い
今日はお揃いの日なんだって、とぽつりとお前が言った。それも、何処か遠くを見る瞳で。
「は?何だよ、いきなり」
隣の席から椅子を引っ張ってきて近くに座る。それでもこいつは目を合わせようとしなかった。
「何だよ?お揃いの日って」
頬杖をついたまま、教室の窓の外を見ている。
「11月11日。数字の1が並ぶ日。月と日が一緒だから、お揃いの日」
ふうん、と俺は何の気なしに頷いた。
「とある有名なお菓子の日だけじゃないんだ」
ちら、とそいつの目が動く。机の奥から箱が出てきた。
それ、どこから出してきたんだよ。ってか、いつのだよ。そう突っ込む前に、そいつはぱりぱりと銀色の袋を開けていく。細長い焼き菓子。下端を除いてチョコがかかってるやつ。
「ん」
そいつはチョコのかかっていないところをくわえ、俺に差し出した。
「は?」
眉間にシワを寄せ、俺は疑問を吐き出した。しきりにそいつは菓子を指差している。それでもまだ疑問符が消えない俺に、そいつは一本食べてしまった。
「やる?ゲーム」
「げっ…」
それって、お兄様とかお姉様とかが飲み会の席でやるような、合コンとかでやるような、両端をギリギリまで食べていくアレですか。
その声が届いたのか、にいっと笑った。
「そ。やる?」
あの、俺達、男同士ですよ…、春人さん。
「やらない?希」
もう一本くわえやがった、こいつ。
あああ、もう!誰か来たって、知らないからな!!
自棄になった俺と彼の、誰もいない放課後の教室での出来事。
お揃いの日の、全然お揃いじゃない俺たちの、お揃いな気持ち。