恋の神様
私は恋の神様と呼ばれている。
実際はそんな大層なものじゃないのだけれど。
私がやっていることはお手伝いに過ぎない。
それを大げさに言われても困るのだ。
でも悪い気はしない。
私は私で充実しているのから。
女の子はずっと彼と一緒にいたいとよく言う。
本当によく言う。
でも、私は覚悟がない人を手伝うことはない。
覚悟がない人は意味ないから。
それでも覚悟があるという人がいる。
そんな人を手助けしている。
今日も一人、私は送り出す。
彼女が予約した席に座って待っているのが想い人だ。
約束の時間は12時。
12時ぴったりに私は送り出した。
まだ待ち合わせの人が来ていないと断られる。
いえ、お客様のお望みですから。
そして願いは叶えられた。
これでずっと一緒にいられるはずだ。
私は恋の神様と呼ばれている。
実際そんな大層なものじゃないのだけれど。
私はただの料理人なのだから。