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1話

「で、あなたたちみたいのでも無事2年生になれたわけだけど」

「ひどい! ゆりの口の悪さに磨きがかかってる!」


1年生のときはここまで毒舌ではなかった。

せいぜい、冬休みにほんのちょっとだけ、誤差の範囲に含むくらい、本当に微妙にお肉のついたひよりを指差し、


『妊婦』


と言ったくらいだ。



「げ、下駄箱まちがっただけじゃないか!」

カナが反論する。


「今日は、でしょ」

ゆりは軽くあしらう。


「それに、無事じゃなくて、追試受けたぞ」

カナがまた反論する。


「え、カナ、それは初耳……」

「私も、ひよりに同じく初耳よ」

「なに! おまえらは受けてないのか?」

「うん」

「ええ」

「ズルい!」

カナはクライアウトする。


「追試なんてシステムあったんだ」

「私も知らなかったわ」

「1がついたら、2年生になるための追試がある」

「へー」

「ふーん」

「ちなみに私が追試で何点だったか教えてやろうか?」

「いや、いい」

「興味ないわ」

「なんと、90点!」

「ゆり、今日、帰りにクレープ食べに行かない?」

「商店街のクレープ屋? あそこ不評よ」

「話聞いてくれ! すごいって言ってくれ!」

「すごい。でも安いって聞いたわよ?」

「すごい。ちっちゃいらしいの」

「適当に言うな! 心の底からほめてくれ!」

「じゃあ、たい焼きにする?」

「ずいぶん大幅な変更ね」

「無視しないでくれ!」

「カナはどうするの?」

「……食べる」

「ちなみに駅前のたい焼き屋は不評よ?」

「うぐぅ……どこもかしこも不評ね」

「結局どうするんだ?」


悩める3人の乙女。


「スイーツ(笑)にする?」

「しっかりして。最初からスイーツの話しかしてないわよ」

「(笑)ってなんだ?」

「じゃあケーキ」

「太るわよ?」

「たしかにひよりは節制という言葉を覚えた方がいい」

「カナに言われると非常に腹が立つ」

「今日はまっすぐ帰るのもアリだと思うけど」

「ここまで来たら引き下がれないわ」

「……どこまで来たのよ」


あきれるゆりをよそ目に、ひよりとカナは悩み続けている。


「駄菓子屋ならあるけどな」

「それよ!」

「駄菓子にするの?」

「そうよ」

「そういや、駄菓子なんて久しぶりだな」

「たしかにそうね」

「ね、いいでしょ?」

「わたしの案だけどな」

「早く行って早く帰りましょう」

「んじゃ、出発!」

「ひよりは食べることになると元気だな」

「ほんとね」





「……買いすぎたわ」

「ひより」

「ん、何、ゆり?」

「こんなところにひよりの似顔絵が」


ゆりは優雅にブタメンのカップを差し出す。


「怒るわよ」

「ひより」

「ん、何、カナ?」

「こんなところに、とんこつしょうゆ味」


ポカッ


「いたい! ゆり、ひよりがぶった!」

「え?」

「ひよりがぶった!」

「ひよりが?」

「……ぶった」

「ひよりが?」

「……ぶ…た」


ポカッ


「いたい! 今のは、ゆりの誘導尋問だ!」

「カナはデリカシーがないわ!」

「けんかしないの。ほら、バスが来たわよ」


ひよりはぷんすか、カナは不満そうにしながら、帰りのバスに乗った。


「ゆり、座れそう?」

ひよりが尋ねる。


「無理ね」

「うわ、自分は座ってるぞ」

「その席が最後だったのね」

「ええ、そうみたい」

「くっ、なんてやつだ」


あきらめて、ひよりとカナは立つことにした。


「たまには駄菓子もいいわね」

「そうだな」

「ひよりとカナがけんかしなければ、なおいいけど」

「原因の半分はゆりだぞ?」

「明日は何食べる?」

「ひよりはもう次の食べ物を考えてるし」



話していると、おもむろにゆりが立ち上がった。


「どうしたの、ゆり?」


「妊婦さん」


バスの入り口に目を向けると、妊婦さんが乗ってきたようだった。




人に席を譲る。

簡単そうだけど、やろうとすると、何となく気恥ずかしい感じがする。

意外に難しいことだ、とひよりは思う。

でも、ゆりは簡単にやってのけた。

彼女の心がけや気遣いを立派に思う一方、うらやましくも思った。




正直に言うと、彼女が言葉を発した瞬間、自分の悪口だと思って、チョップしようとした。


ごめんね、ゆり(笑)

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