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届かない想い

 ——どうしたの!?大丈夫!?


 僕の幼馴染は、人が辛そうにしていると一番に駆け寄る。彼女は昔から問題事が率先して前に出たり、泣いている人がいると声をかけたりする、そんな優しい人だ。それを彼女に伝えると、ポカンとした表情で首を傾げる。彼女自身は、特に考えて動いているわけではないようだった。利益を求めず、ただ他人に笑顔を与えている姿はとても輝いているように見えた。だからこそ彼女の光に皆が集まるのだろう。


 いつしか彼女とは学校で話さなくなってしまった。それはいつでも話せるからというわけではない。話す機会がなくなってしまったのだ。彼女周りには常に友だちが集まってくる。そんな彼女の光を奪うようなことは僕には出来ない。彼女にはずっと輝いていて欲しい。僕は彼女の光が作り出す影の一つとして存在できればいいのだ。


 だって僕は、彼女のそんなところに惹かれたから。彼女の光を護れるなら、その隣が僕ではなくても良いのだ。笑顔が他者に向いていると胸が締め付けられる。彼女の顔を見れないと心に穴が空いたように感じる。それでも彼女の輝きが維持できるのならそれでいい。それが僕の一番だ。


 そんなことを考えているからだろうか。僕は彼女のことをずっと目で追ってしまっているらしい。ほら、今も。彼女が目を揺らして僕を見ている。気づいたら彼女に声をかけていた。


 ——大丈夫だから友だちのところに戻って

 そんな顔しないでよ。君から光がなくなったら僕が悲しいから。胸が締め付けられるくらい苦しくなるから。

 でも大丈夫。長年の経験値がある僕だからこそ耐えられる。彼女の光を取り戻すためにこの場から離れよう。


 彼女の香りが遠ざかると、徐々に現実に引き戻されていく感じがする。それほどまでに彼女との距離が開いているという事実に胸が痛んだ。

 それでもいつか気持ちが通じればいいのに――叶いもしない願いが心に広がっていく。


 ——成功したんだ!おめでとう!

 彼女の笑顔を見て、胸に針がいくつも刺さるような痛みに襲われた。あれ?最後に彼女の笑顔を見たのはいつだろうか。なぜ僕の前では辛そうな顔ばかりしているのだろう。

 その事実に不安が押し寄せてきて彼女に触れたくなる。ふと視界に映っていた彼女の瞳から涙が零れていた。無意識に足が動く。

 

 優しく彼女の頭を優しく撫でる。そのとき気づいた。僕を見上げた彼女の笑顔がとても愛おしく感じる。——僕はこんなにも彼女の近くにいたかったんだ。

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