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こういった経緯があったわけで

 先に巨大化したほうが負ける。

 おそらく相手も同じようなことを考えているだろう。

 目の前には亀を人間大にした怪物。僕の同胞である『トートゴジマ』が中腰で身構えている。

 彼の出現を司令官に報告され、飛び出してきてからかれこれ二時間も過ぎている。

 お互いの戦闘能力はほぼ互角だった。幹部クラスである僕と渡り合えるだけの怪人を送り出してくるとは、上もいよいよ重い腰を上げたらしい。

 ふっと溜息をつく。もっと迅速に行動を起こしていたらこの星は僕らのものになっていただろうか。

 いや、そんなことを今更考えてみてもまるで手遅れだ。何故ならば僕はもうその組織を裏切って人間達の味方となっているのだから。

 「お互い複雑で参るね」

 「まあ、しゃーないでっしゃろ。誰も彼も事情がありまんねん」

 対峙した相手に親しげに話しかけてみると意外にも反応があった。

 こいつこんな口調だったんだ。僕らは宇宙人なのに何故なにわの商人風なんだ……。

 この拮抗した状態を打開する術がないわけでもないが、それにはかなりのリスクが付きまとう。

 ならばもう一つの可能性にかけるしかない。

 こちらの仲間が駆けつけてくれるのを、あの地元の嫌な先輩達を。

 はてさて、あと何分ぐらいこうしていればいいんだろう。


 ※※※


「僕らの星地球は狙われている!」

 こんな布告がなされてすでに三十年が過ぎた。そもそもの発端は、三十年前におおっぴらに地球に対してコンタクトをとってきた異星人の一団だ。

 「僕らの科学力があれば地球マジちょれーっす。一年で征服しちゃうッス」なんて内容の発言を国営放送をジャックして言っちゃったもんだから、もう地球中は大変騒ぎになった。

 逃げ惑う人々。目を白黒させる軍人。現実逃避する政治家達。

 事実、彼らの科学力は三十年前の地球の遥かに上をいっていた。

 国連軍が開発してい最新兵器もそれほど効果的な解決にはならなかった。

 それどころが自分達の兵器のほうがよほど有害だった。

 もうどうしようもない。白旗を振ったほうがよほど楽になる。誰もがそう思ったときにもっけの幸いというか…………まあなんというか、その接触を予期していた天才科学者率いる私設武装組織が果敢に立ち向かい撃退することに成功したのだった。

 まるで子供番組のような、ことの顛末に世界中のお偉方はたいそう恥をかかされたそうな。

 ただし、これで地球を狙ってくる異邦人は消えてなくなったわけじゃなかった、むしろ目をつけられたといってもいい。

 これほどの軍事力を有しながら異星や異次元の開拓を行わず、また種族間のコミュニケーションも出来ず、地形すら思い通りに操作が出来ない。

 というよりもだ、彼らが最も謎に思ったのは「何故地球人は一種族に複数の統治者を用意しているのか?」だった。確かに地球生まれ地球育ちの僕としても複雑怪奇極まる。意思の疎通もとれず、統制されていないこの人間という種は何なのか。

 そしてその謎を解明すべく地球を我が物にせんと数万種の星、組織、次元から地球に侵略者が押し寄せた。

 この期に乗じて地表を我が物にせんとする地底人や、古代文明の生き残りなど地球内組織も名乗りを上げた。

 そしてここでまた新たな問題が発生したのだった。

 『地球を征服するのは容易だが、後ろから撃たれたら敵わん』と、侵略者の心が一つになったのだ。

 まず、武力抗争によって一万の組織が消えた。次に話し合い、脅しによりさらに二万の組織が消えた。

 残ったものは退かず媚びず省みない組織ばかりとなった。

 むしろ諦めの悪い、プライドばかりがやたら高い等等。一言で言い表すなら偏屈な集団ばかりが残った。

 これ以上時間と労力をつぎ込むのは無駄だと判断した侵略者達はある協定を結んだ。

 まずは、くじを引いて順番を決める。

 侵略期間は一年。星をなるべく傷つけない。人類を根絶やしにはしない、なるべく他の侵略者団への協力を求めない仰がない。そして順番が回ってきていない侵略者団は傍観を決め込む。などエトセトラエトセトラ。

 条約は四百をゆうに超える。

 これを『地球ドラフト協定』と呼んだ。

 無法者達である侵略者にとっては噴飯ものの条約であるが、流石に背中から撃たれるのは真っ平なので飲まざるを得なかった。

 このある意味平和的な協定が公布されてから諸事情によって手を引いていた組織もいくつか順番待ちに名を連ねた。

 そして、今年の四月に僕らが所属する組織、「ゴジマ」の順番が回ってきた。三十年前にクジを引かされた時の首領はとうに亡くなっているにもかかわらずだ。

 さて、ここで僕らゴジマのことを説明しておこう。

 僕らはこことは違う太陽系の第三惑星の出身だ。地球と似た大気、地球と似た地形。

 まるっきり映し身といっていい。僕らはその星の支配者だった。

 半人半獣の姿をした僕らはそこそこの科学力と屈強な肉体が武器だった。遥か太古には地球人と似たような姿だったらしいが遺伝子改造の末このような肉体へと変化したらしい。

 だがその栄華は長くは続かなかった。

 直径十キロほどの隕石が直撃して星は滅亡した。選び抜かれた精鋭を人口惑星に乗せ、宇宙を漂流することとなったのだ。

 そして長い旅の果てに件のドラフト会議に出席し、この地球を第二の故郷と決めたのだった。

 

初めて投稿します。もう少し長く書ければよかったのですが、思ったより時間がかかってしまい、ここで次回へつなげたいと思います。

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