第8話:再会と、空を駆ける仲間、そして賑やかすぎる大家族!
レオンとリィナ、そして大型ワシがログハウスに到着したその日、レイの家はいつにも増して賑やかになった。久しぶりの再会に、レイは満面の笑みを浮かべてお兄ちゃんと、お姉ちゃんの手に抱きついた。まるで、会いたかったよー!と全身で叫んでいるかのようだった。
「レイ、大きくなったわね! お姉ちゃん、寂しかったんだから!」
リィナはレイをぎゅっと抱きしめ、頬擦りした。彼女の手には、王都で人気の甘いお菓子が詰まった小さな袋が握られている。袋を開けると、色とりどりの可愛らしい焼き菓子が顔を覗かせた。まさに女子力全開のお土産だった。
「お兄ちゃんも、これ、レイにって」
レオンは少し照れたように、手のひらに乗るサイズの、丁寧に装丁された絵本を差し出した。それは、この世界の様々な魔獣たちが描かれた図鑑のような絵本で、レイの好奇心をくすぐる。将来の図鑑博士を目指すレイにはたまらない一冊だった。
「ありがとう、お兄ちゃん、お姉ちゃん!」
レイはお菓子と絵本を受け取り、嬉しそうに飛び跳ねた。その様子に、ヴァルドとミリアも目を細めている。
「おかえりなさい、レオン、リィナ。長旅お疲れ様」
ミリアが温かいハーブティーを差し出すと、兄姉はホッと息をついた。
▪️モフモフ従魔たち、お兄ちゃんお姉ちゃんにご挨拶!
家族団欒のひと時が過ぎ、レイは従魔たちを兄姉に紹介することにした。シャドウは警戒心が強いため、最初は影の中に潜んでいたが、レイが呼ぶとゆっくりと姿を現し、レオンとリィナの足元に擦り寄った。まるで、「仕方ないな、レイのためだ」とでも言いたげだった。
「わぁ、この黒猫ちゃん、とっても可愛い!」
リィナがしゃがみこんでシャドウの頭を撫でようとすると、シャドウは一瞬身を硬くしたが、レイの「大丈夫だよ」という言葉を感じ取ったのか、撫でられるがままになった。
「こいつが噂の魔獣か。流石にレイに懐いているだけあって、ただ者ではないな」
レオンはシャドウの瞳の奥に宿る知性に気づき、感心したように呟いた。
ミルはレイの肩からひょいと飛び降り、リィナの髪にちょこんと止まった。
「きゃっ! なにこれ、ふわふわで可愛い!」
リィナがはしゃぐと、ミルは得意げに「ぴぴぃ!」と鳴き、リィナの周りを飛び回ってみせた。まるで、自分が髪飾りだとでも言いたげだった。
「これは、飛翔型の魔獣だな。学園での学生枠冒険者登録で、魔獣との戦闘は経験するけど、こんなに懐く魔獣は珍しい」
レオンはミルの動きを目で追った。彼らは将来、自分たちの商会を持つために商人コースで学んでいるが、学園のカリキュラム上、学生枠での冒険者活動は必須で、戦闘スキルも磨いているのだ。
ふわふわは、最初こそ兄姉の大きさに少し怯えていたが、レイが優しく抱き上げ、レオンとリィナに紹介すると、安心したように「ぴぃ……」と鳴き、二人にも頭を撫でられた。
「なんて柔らかい毛並みなの! ずっと触っていたい!」
リィナがふわふわを抱きしめ、顔を埋めた。その姿は、レイと同じようにモフモフ好きであることが伺える。まさに、モフモフ愛は万国共通だった。
フラムは、暖炉の中から顔を出し、警戒しつつも、兄姉が持ってきた王都のお菓子に興味津々で、きらきらと瞳を輝かせている。レイがフラムを紹介すると、レオンはフッと笑い、リィナは「ちっちゃい竜さんだ!」と興奮した。早くも、フラムのお菓子争奪戦が始まりそうな予感がした。
▪️空の王者、バルドルも参戦!ジジィと若造のコミカルバトル?!
そして、最後に、庭で羽根を休めていた大型ワシが、堂々とした足取りでログハウスの中に入ってきた。彼の存在感は、他の従魔たちとは一線を画す。
「やあ、皆。改めて挨拶させてもらおう。余はバルドル。今後、このレイの従魔として、空からの監視役を務めることとなる」
ワシ、バルドルは、セイリオスとはまた違う、威厳のある低い声で自己紹介をした。従魔たちは彼の言葉に驚き、ログハウスの窓からこちらを覗いていたセイリオスは、バルドルを見て一瞬固まったかと思うと、「げ、バルドル!お前、まさかここにも住み着くつもりか!?」と、眉をひそめた。
レイはバルドルを見上げ、にっこりと微笑んだ。バルドルはレイの頭に優しく、しかし確実に、その大きな頭部を擦り付けた。まるで、「今日からよろしくな、相棒」とでも言いたげだった。
夜には、ミリアが腕によりをかけた豪華な夕食が並んだ。食卓には、ヴァルド、ミリア、レオン、リィナ、そしてレイ。その足元や影の中には、シャドウ、ミル、ふわふわ、フラム、そしてバルドル。家族全員、そしてレイの従魔たちが揃った食卓は、いつも以上に賑やかで、笑い声が絶えなかった。これぞまさしく、我が家流「大食いバトルロワイヤル」の幕開けだった。
食事が終わると、レオンとリィナはレイを挟んで、王都の学園での出来事を話してくれた。学園での戦闘訓練や、仲間との冒険の話に、レイは目を輝かせながら耳を傾けた。しかし、彼らが話すのはあくまで「学生枠」としての体験。将来、商人として大成するための経験だと語る。
その最中、セイリオスがいつものように、話を聞きながらウトウトと居眠りを始めた。それを目ざとく見つけたバルドルが、ニヤリと口角を上げた。
「おい、ジジィ。死んだか?」
バルドルの低い声が響く。セイリオスはピクリとも動かない。まるで、彫像と化したかのようだった。
「ジジィ、永眠か?」
バルドルがさらに煽ると、セイリオスはカッと目を見開き、丸眼鏡をクイッと持ち上げた。
「まだピチピチじゃわい! この若造が!」
セイリオスは怒ったようにそう言うと、バルドルの頭を羽根で軽く叩いた。バルドルはケラケラと笑い、セイリオスも呆れたようにフフッと笑う。そのコミカルな掛け合いに、レイたち家族も従魔たちも、和やかな笑い声を上げた。
家族と従魔たちに囲まれ、レイは異世界での新たな生活の温かさを改めて感じていた。この賑やかで、そして少しだけ特別な日常が、これからも続いていく。そして、まだ見ぬ次の従魔との出会いや、世界の秘密が明かされる日を、レイは密かに楽しみにしていたのだった。