表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/74

第62話:双子、森の異変に気づく?!

 レイが秘密基地「うっかり工房」で古代の知識と無自覚な魔力を駆使し、快適な隠れ家を築いている頃、ログハウスでは双子のレオンとリィナが、王都調査団との奇妙な共同生活を送っていた。そして、その頭上には、常に「常識鷲」バルドルが目を光らせていた。

「レオン、最近森の奥から、なんか変な、こう、もっふもふでピカピカした魔力の気配がしない?」魔力感知に優れたリィナは、古文書の隅に落書きされたレイの絵に目をやった。

 レオンはリィナの言葉に頷き、腕を組んだ。「ああ、感じるぞ、リィナ。妙に心惹かれる、というか…お菓子でも作ってるような、甘くて誘惑的な魔力だ。しかし、僕らが調査しようとすると、なぜか道に迷うんだが…。」

 彼らは学生冒険者として最前線で活躍するエリートだ。しかし、レイの魔力は、彼らの実力どころか、本能レベルで「可愛い弟の安寧」を優先させてしまう。その結果、双子の思考は常に「レイへの溺愛」と「森の異変」の間で迷走していた。

「まさか、レイが森で秘密のお菓子工場でも作ったのか?僕を差し置いて?それは許されない!」レオンは急に立ち上がり、レイがよく使うと見られる森の小道へと向かった。リィナも目を輝かせた。「うん!レイが何か隠してるなら、私も協力する!もしかしたら、新しい可愛い魔物が見つかるかもしれないし!」

 二人は早速、森の小道へと足を踏み入れた。彼らの行動を、ログハウスに滞在中の王都調査団の団長が冷や汗を流しながら見ていた。

 ヴァルドは、王都の冒険者ギルドから自宅であるログハウスに帰宅したばかりだった。長時間の書類仕事とギルド運営で疲れた体に鞭打ち、ようやく一息つこうとした矢先、森へ向かう双子の姿を見て、既に胃がキリキリと痛み始める。

「セイリオス先生…あの二人は、レイのこととなると盲目になる。止めても無駄だ…。」


 バルドル、一部始終を目撃!

 バルドルは上空から、双子の一挙手一投足をつぶさに観察していた。

「おお、来たか、カオス製造機ツインズめ。救世主様も大変だな。いくら隠蔽工作をしても、あの溺愛フィルターの前では意味をなさん。」

 バルドルは翼を広げ、ゆっくりと双子の上空を旋回し始めた。

 レオンとリィナは、森の奥へと誘うような、微かな魔力の輝きを感じ取るたび、彼らの目はレイへの溺愛で輝いた。しかし、その輝きが増すほど、道はなぜか複雑に絡み合い、トゲのある蔓が彼らの行く手を阻むように伸びてくる。

「くっ!このいばらは、一体何なんだ!レイの可愛いお顔に傷でもつけたらどうする!」レオンは憤慨しながら、魔法でいばらを切り裂いた。

 リィナは言った。「レオン、待って!このいばら、可愛い魔物の毛並みみたいにフワフワしてるけど、近づくとチクチクするわ!レイがもし触ってたら大変!」リィナもまた、いばらの奇妙な質感に興味津々で、自分の服でそっと触れようとしていた。

 上空からそれを見ていたバルドルは、思わず額を押さえた。

「おいおい、植物たちも頑張って道を隠しているというのに…あの双子の溺愛力の前では、ただの障害物レースか。しかも、相手はレイを守るために必死なんだぞ…可哀想に。」

 植物たちは、レイを愛するあまり、彼の秘密基地を守ろうと頑張っていた。しかし、その愛が強すぎる双子の前では、まるで遊び相手を求めているかのように機能不全を起こしているのだ。

 双子は何度か道に迷い、気づけば来た道を戻っていたり、見覚えのない場所に出たりと、まるで奇妙な迷路に嵌まったかのようにさまよった。そのたびに、彼らは「レイが僕らを試しているんだ!きっと秘密基地の謎解きだ!」とポジティブに捉え、さらにやる気を漲らせていた。

 バルドルは疲れたようにため息をついた。

「はぁ…あの知識のじー様は、この光景をどう研究するつもりなんだ?俺には理解できん。きっと、また『レイの才は無限大じゃ!』と訳の分からんことを叫ぶだけだろうな。俺ももう慣れたが…」

 彼の視線の先では、双子が相変わらずレイの残した魔力の痕跡を辿ろうと奮闘しており、王都調査団は頭を抱えていた。ヴァルドは、そんな彼らの様子を見て、静かに胃薬をもう一錠口に放り込んだ。

「救世主様よ…自重を覚えてくれ…」

 王都への通勤疲れと、森の異変と、そして何より我が子たちの行動に、ヴァルドの胃は悲鳴を上げていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ