第6話:食卓を彩る炎の料理人、フラム、まさかの「焦げ奉行」?!
レイがシャドウ、ミル、ふわふわと契約を交わして以来、ログハウスの中はさらに賑やかになった。特に食事の時間は、ミリアの腕前と、従魔たちの個性的な振る舞いによって、毎日が小さな宴のようだった。まるで、「ここは動物園、いや、食いしん坊動物園だ!」とでも言いたくなるほどだった。
ある日の夕食時、ミリアが今日のメインディッシュを食卓に運んできた。それは、黄金色に焼き上げられた、見事な魔獣のローストだった。香ばしい匂いが部屋中に広がり、レイだけでなく、従魔たちも目を輝かせている。その瞳は、まさに「肉!肉!肉!」と叫んでいるようだった。
「今日の『黄金猪のロースト』は、最高級の肉質を厳選したわ! レイ、たくさん食べるのよ!」
ミリアが自慢げに言うと、シャドウはレイの膝元で「にゃあ」と小さく鳴き、ミルはレイの肩でぴぴっと跳ねた。ふわふわも足元で尻尾を振っている。レイは食いしん坊の従魔たちに、それぞれの好みに合わせた野菜や果物を分けてやった。だって、みんな可愛いんだもの!
その時、暖炉の中から、小さな、しかし存在感のある影がひょっこりと顔を出した。それは、手のひらサイズの可愛らしい竜だった。真っ赤な鱗は炎のように輝き、瞳は好奇心に満ちた橙色をしている。まるで、「お待たせしました、炎の料理人(見習い)参上!」とでも言いたげだった。
「ガォ……!」
その小さな竜は、ローストの香りに誘われたのか、まだ幼い声で吠えながら暖炉から出てきた。そして、まっすぐに食卓へと向かってくる。レイの〈神霊視〉が、その小さな体から発せられる、強大な炎の魔力を捉えた。「ちっちゃいのに、すごいオーラだ!」レイは内心で驚いていた。
「君は……竜?」
レイが驚いて問いかけると、小さな竜はレイの足元にちょこんと座り込み、きらきらと目を輝かせながらローストを見上げている。まるで「分けてほしい!今すぐ!」とでも言いたげな眼差しだった。
「あら、新しいお客さんね。こんな子が来るなんて珍しいわ」
ミリアもその可愛らしい姿に目を細めた。しかし、レイは知っている。その可愛らしい見た目とは裏腹に、竜は魔獣の中でも特に強力な存在なのだ。この子が、なぜここにいるのだろう? まさか、ローストに釣られてきただけ?
「君、お腹空いてるの?」
レイが優しく尋ねると、竜は大きく頷いた。レイはローストの一部を小さく切り分け、冷ましてから皿に乗せて差し出した。竜はそれをあっという間に平らげると、満足げに「ガォ!」と鳴いた。その食べっぷりは、まさに「肉食系の鑑」だった。
「美味しい? よかった」
レイがにこやかに言うと、竜はレイの膝によじ登り、そのままレイの腕に顔を埋めた。その温かい鱗の感触に、レイは心地よさを感じた。
「君の名前は?」
竜は、名前を尋ねられても特に反応がなかった。レイは、その燃えるような赤い鱗と、料理への情熱を感じて、彼をフラムと名付けることにした。まるで、炎のフランベから来た名前のようだった。
「フラム。君、料理は好き?」
レイが尋ねると、フラムはパッと顔を上げ、嬉しそうに頷いた。そして、突然、小さな口から小さな炎を放ってみせた。それは、暖炉の火を燃やすような、純粋な炎だった。
「わぁ、すごいね!」
レイが褒めると、フラムは得意げに胸を張った。
▪️フラム、料理の道は遠く険しい?!
翌日から、フラムはレイの料理を手伝いたがるようになった。しかし、小さな火竜には、一つ大きな問題があった。
「フラム、それは焦げすぎだよ!」
レイが作った簡単なスープに、フラムが勢いよく炎を噴き付けた結果、鍋の中からは炭と化した具材の残骸が……。まるで、「新手の焦げ料理?」とでも言いたくなるような、見るも無残な姿だった。
「ガォ……」
フラムはしょんぼりと肩を落とす。どうやら、火加減の調整が苦手らしい。得意な炎の魔法が、料理では裏目に出てしまうのだ。まさに、「料理は愛だ!しかし、火加減も愛だ!」という教訓を体現していた。
それでもフラムは諦めなかった。レイが料理をする時には必ず傍らに寄り添い、真剣な眼差しでレイの手元を見つめる。レイもフラムのために、火加減の調整の仕方や、食材の扱い方を丁寧に教えてやった。
「火は、優しく、弱く。料理は焦らず、時間をかけるのが大切なんだよ」
レイがそう教えると、フラムは真剣な顔で頷いた。その健気な姿に、レイはまた新たなモフモフの友達ができた喜びを噛み締めた。
食卓が、ますます賑やかになる。シャドウはレイの影から見守り、ミルはフラムの頭にちょこんと止まっては、彼が失敗するたびに「ぴぴーっ!」と茶化す。そして、ふわふわは、レイが育てた新鮮なハーブをフラムの前に置いては、応援しているようだった。
フラムの加わりで、レイの料理への探求心はさらに深まった。前世の日本の料理レシピと、この世界の食材、そしてフラムの炎の魔法。いつか、フラムが完璧な火加減で、最高の料理を完成させる日が来ることを、レイは楽しみにしていたのだった。