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第59話:双子襲来!ログハウス、大騒ぎの予感、再び?!

 レイが遺跡でうっかりお宝を発見し、王都の調査団が盛大に胃痛を患っているその頃、ログハウスには、またしても新たな胃痛の種が迫っていた。王都の名門学園で学ぶ、レイの兄と姉、双子のレオンとリィナが、待ちに待った長期休暇でログハウスに帰省することになったのだ。王都調査団は、未だにレイの魔力に振り回され、ログハウスの「奇妙な常識」に頭を抱えながら滞在を続けている。彼らは、この森の異常な魔力反応の源を探ろうと、ひそかに調査を続けていた。

「レオンお兄ちゃん、リィナお姉ちゃんが帰ってくるの?わーい!また一緒に遊べるね!」

 レイは目を輝かせて大喜びだ。しかし、ヴァルドとミリアの顔は、喜び半分、不安半分といったところだ。

「レイ、あの二人は商人コースで学んでいるけれど、学生冒険者として前線でバリバリ戦っているからね。特にリィナは魔力感知に優れているし、レオンも勘が鋭い。あんたの能力のこと、まだ詳しく話してないんだから、うっかり世界をひっくり返しちゃうようなことは、できるだけ見せないようにするのよ?」

 ミリアが釘を刺すように言った。ヴァルドはすでに胃をさすっている。

「そうだな、ミリア。二人には、レイの無自覚な魔力だとか、従魔たちが人間並みに思考していることだとか…考えるだけで胃が痛い。何か質問されても、適当にごまかすんだぞ?」

 ヴァルドが切実に頼み込んだ。レイの無自覚なチートは、家族であってもまだ完全に理解できていないのだ。ましてや、学生冒険者として最前線で経験を積んでいる双子が知ったら、一体どんな反応をするか…考えるだけで胃が痛い。セイリオス先生はそんなヴァルドとミリアを見て、ふふん、と笑った。

「心配することはない。レイの才は、いずれ彼らも知ることになるじゃろう。それよりも、彼らの反応も、また新たな研究材料になるというものじゃ!」

 そんな無責任なセイリオスの言葉に、ヴァルドの胃は限界を迎えそうだった。


 数日後、ログハウスの上空に、見慣れた大型鷲、バルドルの姿が見えた。彼の背には、小さな人影が二つ。レオンとリィナが帰ってきたのだ。バルドルは王都を発つや否や、レイへの会いたさに興奮しすぎたのか、普段ならありえないような高速で飛んできたらしい。

「おーい!レイ、お母さん、お父さん!ただいまーっ!」

 レオンとリィナの声が、バルドルの背から力強く響き渡った。レイは嬉しさのあまり、庭を飛び出してバルドルの元へと駆け寄る。

「バルドルー!レオンお兄ちゃん!リィナお姉ちゃん!」

 バルドルは、双子を無事にログハウスの庭へ送り届けようと、着地地点を慎重に選んでいた。しかし、僅かな風の流れと、レイの無邪気な魔力に引き寄せられたせいか、着地は少しだけずれた。それでも普段の彼なら問題ない範囲だったが、この日はなぜか、彼が降り立った庭の隅から、先日レイが発見した金属製の板(森のGoogleマップ)が、不思議な光を放ち始めた。その光は、レオンとリィナの足元を照らし出す。彼らの荷物の中には、王都の学園の成績表や、レイのためだけに選び抜かれた最高級のおもちゃの山、幻の絵本、そして王都でも入手困難な限定お菓子の箱がぎっしり詰まっている。

「おっと、着地が少しずれたか!いやー、王都からレイの気配が強すぎてな!ちょっと体が勝手にそっちに寄っちまったぜ!」

 バルドルはそう言い訳するが、レオンとリィナは、バルドルの背から降りるや否や、レイへと突進した。

「レイ!会いたかったぞ!この兄は、お前がいない間、寂しくて夜も眠れなかった…いや、眠れたが、夢の中でお前が抱きついてきてだな!枕が涙で湿ったぞ!」

 レオンはレイを力いっぱい抱きしめ、頬ずりした。レイの体から、彼が感じていた尋常ならざる魔力の波動を感じ取ったが、その可愛さの前では、疑問は一瞬でかき消え、ただ「うちの弟が最高すぎる」という結論に至った。

「レイ、このお姉ちゃんは、お前のために、学園のダンジョンで一番可愛い魔物を倒して、その素材で最高級のふわふわのブランケットを作ろうとしたのよ!…結局、素材が手に入らなくて断念したけど、毎日お前の絵を描いてたんだから!気持ちは伝わったかしら?」

 リィナはレイを抱きしめながら、その小さな頭に自分の頬をグリグリと押し付けた。彼女の魔力感知能力は、バルドルの着地で揺らいだ空間から、遥か森の奥の遺跡に由来する、規格外の魔力の痕跡を捉えていたが、それよりもレイの可愛さに意識が集中している。

「レオンお兄ちゃん、リィナお姉ちゃん!」

 レイは満面の笑みで、二人の帰省を心から喜んだ。しかし、両親はすでに顔面蒼白だ。

「レオン…リィナ…二人とも、もう少し落ち着きなさい…」

 ヴァルドとミリアは、双子のあまりの溺愛っぷりに、すでに冷や汗が止まらない。彼らの胃は、すでに警報を鳴らしている。バルドルは、そんな二人の様子を見て、「あちゃー、やっちまったか」と小さく首をすくめた。

 ログハウスに帰ってきた双子の存在は、レイの無自覚なチート能力に、どのような影響を与えるのだろうか。そして、彼らがログハウスにもたらす、新たな騒動とは…?ヴァルドは、今から頭痛と胃痛がひどくなることを確信した。

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