第46話:魔法の授業の深化と図書室の異変
レイは、セイリオスとの魔法の授業を日々続けていた。基礎的な魔法理論から精霊術、そして錬金術の応用まで、知識の師であるセイリオスの教えは尽きることがない。レイはまるでスポンジが水を吸い込むように知識を吸収し、その能力は着実に深まっていた。この図書室は最高の学び舎だった。ただし、時々セイリオスの長い講義中に、居眠り防止の魔法をかけられるのはご愛嬌だ。
ある日のこと、レイが錬金術の古文書を読み解きながら、セイリオスから与えられた課題に取り組んでいると、突然、図書室の一角が淡い光を放ち始めた。レイは「まさか、あの魔物が図書室に侵入してきたのか?!」と身構えたが、光が収まると、そこには今までなかったはずの小さな机と椅子、そして簡易的な棚が出現していた。棚には、レイが今まさに読んでいた錬金術の本の続きや、それに関連する実験器具が所狭しと並べられている。
「えっ?何これ?! 僕の秘密基地ができたのか?!」
レイは目を丸くして驚いた。その声に、ちょうど図書室に顔を出したミリアとヴァルドも駆け寄ってくる。ミリアは「また始まったわね」とでも言うかのように、どこか楽しげに微笑んだ。
「あら、レイの新しい勉強スペースね!また拡張したのね、この図書室も。ずいぶん物が増えたものねぇ。」
ミリアは慣れたように微笑んだ。ヴァルドも腕を組み、納得したように頷く。彼の顔には「息子が優秀なのは知っていたが、まさか図書室まで動かすとは…」と書かれているかのようだ。
「ふむ。レイの学習意欲が、この図書室をさらに成長させている、ということか。我が王家が代々守りし図書室も、ついにレイの手に堕ちたか…いや、成長したか。」
セイリオスは、金縁の丸眼鏡を押し上げながら、どこか誇らしげに言った。まるで、自分が育てた傑作を見るかのような表情だ。
「その通りだ、ヴァルド。お主がこの図書室の管理者であるからこそ、レイの学ぶ意欲に呼応し、この場所もまた自ら姿を変えていく。まさしく、レイの知識欲が、この生きている図書室の力を引き出しておるのだ。これで、より一層、レイが学びに没頭できるというものだ。そして、わしも楽ができる。」
セイリオスの言葉に、レイは理解したように頷いた。
「へぇ!じゃあ、この図書室も僕のお友達なんだね! 図書室さん、これからもよろしくね!」
レイの言葉に、ヴァルドとミリアは顔を見合わせ、温かい笑みを浮かべた。王家の代々からの稀少な書物が保管され、王都へ転移できる設備まで備わるこの不思議な場所は、レイにとって尽きることのない探求の場となり、彼をさらなる高みへと誘うだろう。ただし、図書室がレイの欲求に応じてどこまで成長するのか、誰にも予測できなかった。その日の授業の後、レイは新しく現れた自分の勉強スペースで、錬金術の実験に没頭した。セイリオスの指導と、図書室が用意してくれた新たな資料のおかげで、レイの魔法の知識は日々深まっていく。そして、図書室のどこかで、かすかに「レイ様、今日の錬金術の課題はこれですよ」と囁く声が聞こえたような、聞こえないような…。




