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第45話:従魔たちとの新たな日常と魔法の成長

 家族会議で僕のおやつが「秘密」にされた次の日も、レイの日常はいつもと変わらず、のんびりと過ぎていった。朝食を済ませると、レイは早速従魔たちと庭へと繰り出した。冷たいおやつ作りで大活躍したペンギン精霊たちは、すっかり冷蔵室の番人気分で、レイが通りかかるたびに「ブエッ!ブエッ!」と愛らしい鳴き声を上げた。彼らの胸を張る姿は、まるで誇らしげな職人のようだった。もはや、彼らの一番の仕事は冷蔵室の管理らしい。

「ペンギンさんたち、今日も冷たいおやつ作る?それとも、今日は別のことする?」

 レイが尋ねると、ペンギン精霊たちは頭を傾げた後、冷蔵室の中を指差した。どうやら昨日作ったおやつがまだ残っているらしく、しばらくはそれらを楽しむつもりらしい。レイはにこりと笑い、彼らの頭を優しく撫でた。ペンギン精霊たちの能力は、単に冷気を放つだけでなく、特定のものを効率的に凍らせたり、逆に解凍したりと、その応用範囲が広がっているようだ。彼らは、レイの魔法と共にあることで、ぐうたらだった昔が嘘のように進化している。まさに、冷菓職人への道を着実に歩んでいる。

 庭の片隅では、フラムが小さな炎を揺らして遊んでいる。冷たいおやつ作りの際、彼はミルクを温めるのに、以前よりもずっと繊細な火加減を見せてくれた。今では、彼の炎はレイの意思に驚くほど忠実に反応する。まるで、レイの指先が直接炎を操っているかのようだ。

「フラム、すごいね。もう僕が何も言わなくても、完璧な火加減が出せるんだね。」

 レイが感心すると、フラムは得意げに「ブォン!」と一鳴きし、その炎をまるで生き物のように踊らせて見せた。彼の炎は、ただ熱いだけでなく、対象の性質を損なわずに温めるような、不思議な優しさを帯び始めている。それは、もはや単なる火ではなく、生命の炎のようだった。もしかしたら、炎の妖精に進化する日も近いのかもしれない。そしてレイは、いつか彼にホットケーキを焼いてもらう日を夢見ていた。

 その日の午後、レイは従魔たちと庭でゆったりと過ごした。木陰に座り込んで絵本を読んでいると、ミルがぴょん、と飛び乗ってきて、レイの肩に張り付いた。時折、レイの顔をぺろりと舐めようとするが、レイはスルリと顔をかわす。ミルは不満そうに「キュー!」と鳴き、レイの耳元で甘えた。「まったく、ミルは甘えん坊だなぁ」とレイが笑いかけると、ミルはますます嬉しそうにレイの首元に顔を擦り付けた。まるで、レイの笑顔がミルのエネルギー源であるかのように。彼の甘えっぷりには、レイもすっかり手慣れたものだった。

 シャドウはレイの足元で丸くなり、穏やかな日差しの中で昼寝を楽しんでいる。金色の瞳は閉じられているが、レイの気配には常に敏感だ。レイが少しでも動けば、すぐにその気配を察知して、小さくしっぽを揺らす。彼にとってレイは、何よりも安心できる、究極の枕なのだろう。時にはレイが動けなくなるほど、どっしりと陣取ることもあった。

 ルーナは少し離れた場所で静かに座り、その美しい月狼の姿でレイを見守っている。その寡黙な佇まいからは、深い忠義と静かな愛情が感じられた。彼の静かな存在感は、庭に落ち着いた雰囲気を醸し出していた。

 バルドルは空高くを旋回し、時折レイの頭上を大きく旋回しては、のんきな声で鳴く。彼の風の祝福は、庭の隅々まで心地よい風を運び、木々の葉を優しく揺らしていた。まるで、レイに涼しい風を送っているかのようだ。その姿は、のんびりとした空の警備員のようでもあり、時々「おーい、元気かー?」と話しかけているかのようにも聞こえた。

 ブモは、ゆったりと牧草をはみながら、時折「ブモォォォォォ!」と満足げに鳴く。彼からもたらされる上質なミルクが、レイのおやつ作りの原動力になっている。彼のミルクは、もはやレイの錬金術と切っても切り離せない、最高の相棒だ。そして、レイは彼がミルクを出すたびに、「ありがとう、ブモ!」と心の中で感謝していた。

 マンちゃんは「きゃっ、ぎゃあぁぁ!」と可愛らしい声をあげながら、畑で元気にちょこまか歩き回り、植物たちを嬉しそうに世話している。隣では、ネクサがキラキラと光る羽根を揺らしながら、命の水を供給していた。そして、その奥ではゴーレムとポポが、静かに、しかし着実に畑を耕し、土の栄養を管理している。彼らは言葉を交わさないが、その連携は完璧だった。まるで、無言の畑の職人チームだ。ふわふわは、レイの周りをぴょんぴょんと飛び跳ねながら、軽やかな足取りで庭を駆け回る。そのふわふわとした体は、まるで綿菓子が踊っているかのようだ。ポポも「もふもふ!」と体を揺らし、小さな口で器用に冷菓を味わっている。彼らの存在が、レイの穏やかな日常を支えているのだ。この屋敷は、もはや巨大な動物園のようだった。

 レイは、従魔たちとのそんな温かい日常の中で、自分の「大地の祝福」が少しずつ、しかし確実に深まっているのを感じていた。植物たちの声が、以前よりもはっきりと聞こえるようになった。彼らが何を求めているのか、瞬時に理解できる。そして、従魔たちとの「契約の王印」も、より強固なものになっている気がする。彼らの感情や思考が、まるで自分のことのように鮮明に伝わってくるのだ。それは、言葉を超えた、魂の繋がりだった。

「みんな、いつもありがとうね。」

 レイがそっと呟くと、従魔たちはそれぞれのやり方で、レイの言葉に応えるかのように身を寄せた。ミルはレイの頬をぺろりと舐め、シャドウは体をレイに擦り付け、ルーナは静かに隣に座った。フラムは小さな炎を揺らし、バルドルは頭上で一回り大きく旋回した。ブモは満足げな声を上げ、マンちゃんとネクサは、喜びでキラキラと輝き、ふわふわはレイの周りを何度も跳ね回った。ポポはレイの足元で「もふっ!」と甘えた声を上げた。彼らは、まるで家族の一員のようにレイを囲み、愛情を表現した。その光景は、絵本から飛び出してきたかのように、温かく微笑ましかった。

 冷たいおやつがもたらした喜びは、レイと従魔たちの絆をさらに深め、彼らの日常をより一層、温かいものに変えていた。そして、レイの魔法の才能もまた、この愛しい日常の中で、静かに、しかし確実に育まれ、新たな目覚めへと向かっているのだった。このまま行けば、レイは本当に世界をひっくり返してしまうかもしれない。でも、それはきっと、美味しいもので満たされた、楽しい世界になるだろう。

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