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第36話:畑のミルクと新たなスイーツの予感

 マヨネーズが家族の食卓にすっかり馴染んだ頃、レイの新たな挑戦が始まった。ダンジョンのミルクとは違う、植物性の「ミルク」を作り出すことだ。レイが畑に植えた豆の木や、ココナツの実、アーモンドの木のような植物は、大地の祝福の力と、ポポ、マンちゃん、ネクサの働きで順調に育っていた。彼らはまるで、レイの指示を完璧にこなす、優秀な農夫たちのようだ。

 特に、ココナツの実は生命力に溢れ、みるみるうちに成長していった。木には、まるで宝石のようにたわわにココナツが実り、レイはそれを眺めながら、その可能性に胸を躍らせていた。彼の目には、もうすでにココナツを使った色とりどりの料理やスイーツが見えているかのようだ。

「すごいね、レイ!こんなにたくさん実がなったわ!これじゃあ、ココナツの木が実の重さに悲鳴を上げているみたい!」ミリアが目を丸くして言った。その声には、驚きと、どこか困惑が混じっていた。

「うん!これで色々な『ミルク』が作れるんだよ!どれもこれも、母さんが驚くほど美味しいはず!」レイは嬉しそうに答えた。彼の顔は、まるで宝物を手に入れた子供のようだ。

 まずレイが目をつけたのは、ココナツの実だった。硬い殻を割ると、中からは透き通った液体、ココナッツウォーターが溢れ出す。ミリアが恐る恐る一口含むと、「まぁ、ほんのり甘くて、さっぱりするわね!まるで、森の妖精が作った飲み物のようだわ!」と驚いた。次に、レイは実の内側にある白い果肉を削り取り、それを細かくすり潰して水と混ぜ、布で濾した。すると、白く濃厚な液体が滴り落ちてくる。それが「ココナッツミルク」だった。その見た目は、まるで純粋な雪解け水のようだった。

「わあ、これが『ココナッツミルク』?牛乳みたいだけど、香りが全然違うわ!まるで、南国の風が吹いているようだわ!」ミリアは目を輝かせた。その表情は、新しい発見に興奮している探検家のようだ。

 レイは早速、このココナッツミルクを使って料理を試した。いつものシチューに加えてみると、驚くほどコクと風味が増し、家族全員が「美味しい!」「これ、お店の味じゃないか!?」と声を上げた。シチューの深い味わいに、ヴァルドは思わず腕組みをして唸り声を上げた。デザートには、ココナッツミルクと、これまた畑で採れた甘い果実を煮詰めて作ったソースを合わせたものが出された。その優しい甘さと滑らかな舌触りに、ヴァルドも「これはうまい!何杯でもいけるぞ!これじゃあ、お腹がはちきれてしまう!」と目を輝かせた。彼の顔は、満面の笑みで、まるで子供のようだった。

 さらにレイは、ココナツからココナッツオイルを抽出したり、果肉を乾燥させてココナッツパウダーを作ったりと、次々と加工品を生み出していく。ココナッツパウダーをパン生地に混ぜると、香ばしい風味が加わり、いつものパンが一段と美味しくなった。焼き上がったパンからは、甘く香ばしい匂いが漂い、家族全員の食欲を刺激した。

「ココナツって、本当に色々なものになるのね!もう、ココナツ様とでも呼ばないと失礼だわ!」ミリアは、レイがもたらす新しい「美味しい」に、毎日驚きと喜びを感じていた。彼女の料理の腕も、レイの調味料のおかげで飛躍的に向上していた。

 レイの次なる目標は、豆の木から「豆乳」を、アーモンドの木から「アーモンドミルク」を作り出すことだ。そして、それらの「ミルク」を使って、この世界にはまだ存在しない、新たな「美味しい」スイーツを生み出すことを密かに企んでいた。彼の頭の中では、すでに甘い誘惑が渦巻いている。

「ふふふ……プリンにゼリー、アイスクリームにケーキも、いつか作ってみたいな。僕の手にかかれば、この世界のスイーツは、もっともっと美味しくなるはずなんだ!」レイは、新しい「美味しい」のアイデアに、思わずニヤリと笑った。彼の頭の中には、まだ見ぬスイーツの数々が、色鮮やかに描かれていた。それはまるで、未来のパティシエの夢のようだ。

 レイの「美味しい」探求の旅は、終わりを知らない。彼の好奇心と「もっと美味しいものを食べたい」という素朴な欲求が、今日も新たな発見と家族の笑顔を生み出していく。この世界の食の未来は、レイの小さな手にかかっていると言っても過言ではないだろう。

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