第21話:賢梟の特別授業:神霊視と言霊理解の深淵、そしてレイの「未来が見える目」?!
大地の祝福の授業を終え、レイは家庭菜園の新しい作物の成長を日々楽しみにするようになっていた。自分の手で、この世界では珍しい、「なんか甘い」とか「ふわふわ」な植物を育てられることに、大きな喜びを感じていた。ふわふわも、レイの魔法で育つ植物たちを見て、「もっとちょうだい!」とでも言いたげに、いつも以上に嬉しそうにしている。
翌日、セイリオスは再び図書室の書棚に止まり、レイの到着を待っていた。今日の授業は、残る二つの祝福、神霊視と言霊理解だ。セイリオスは、まるで大物マジシャンが次のトリックを披露する前のような顔をしている。
「さあ、レイ。今日は、お主のもう二つの祝福について学んでいくぞ。これもまた、とんでもない力じゃからのう、覚悟するのじゃ!」
セイリオスが丸眼鏡をクイッと持ち上げた。バルドルは窓辺から、ルーナは書棚の片隅から、静かに授業を見守っている。シャドウはレイの影で居眠り中、ミルは肩で毛づくろい、フラムはレイの頭の上で羽を休め、ネクサはレイの周りをフワフワ漂っている。みんな、なんだかんだで興味津々だ。
「まず、神霊視じゃ。これは、神性を持つ存在や、神に連なる力を視認する力と説明したが、具体的に何ができると思う?単に『キラキラが見える』だけではないぞ?」
レイは少し考えた。
「えっと……じぃじが、神様みたいにキラキラしてるのが見えること?あとは、母さんが怒ると、なんか黒いモヤモヤが見えること?」
セイリオスの言葉に、レイは首を傾げた。セイリオスは一瞬、眉をひそめた。
「ふむ、間違いではないが、それはあくまでごく一部じゃ……後半は余計な情報じゃがな。一般的な冒険者も、長い経験と勘で、古代の遺跡や隠された財宝を見つけ出すことはできる。じゃが、それはあくまで『手がかり』や『情報』、そして『推測』に過ぎん。『勘』頼みじゃから、外れることも多々あるのじゃ」
セイリオスは、古びた地図を取り出し、その上を指でなぞった。「ここに宝がある!多分!」とでも言いたげに。
「しかし、お主の神霊視は、対象に宿る『神性の輝き』を直接視認できる。例えば、遥か昔に神々が残したとされる古代の遺跡や、聖なる力を秘めたアーティファクト、あるいは隠された祭壇などに宿る、微かな神性の残滓ですら見抜くことができるのじゃ!これぞ、まさに『真実の目』じゃ!」
セイリオスは、書棚から埃を被った古い壺を取り出した。
「例えば、この壺を見てみよ。並の者が見ればただの古い壺じゃ。下手したらゴミと思うじゃろう。じゃが、お主の目には、何か見えるはずじゃ」
レイが壺に目を凝らすと、微かに、壺の表面に淡い光の粒が舞っているのが見えた。まるで、小さな妖精たちが踊っているようだ。
「なんか、キラキラしてる……なんか、昔の人がこの壺で、美味しそうなお水を飲んでた感じがする!」
「その通りじゃ。この壺は、かつて神殿で使われていた聖なる水を入れるためのものじゃった。今はその力は失われておるが、神性が宿っておった証が、今でもお主の目には見えるのじゃ。お主の神霊視は、もはや『考古学者モード』じゃな!」
セイリオスは満足げに頷いた。
「この力があれば、ただの石ころの中に隠された伝説の宝物を見つけ出したり、複雑なギミックの裏に隠された真の仕掛けを見抜いたりすることも可能になる。危険な魔物の巣窟か、それとも聖なる結界が張られた安全な場所か、その『神性』の有無で判別することもできるじゃろう。もはや『危険予知レーダー』じゃな!」
レイは、自分の持つ力が、単に「見える」というだけでなく、冒険や探索においてどれほど強力な「目」となるのかを理解した。うん、これで迷子になっても大丈夫!
「次に、言霊理解じゃ。これも単なる言語理解ではない。ただの通訳ではないぞ?」
セイリオスは、別の古文書を開いた。そこには、見慣れない奇妙な文字が羅列されていた。まるで、ミミズが這ったような文字だ。
「この書物は、数千年前の古代語で書かれておる。多くの学者や賢者が解読に挑んだが、未だ完全には読み解けておらん。じゃが、お主は、これを『さくっと』読めるはずじゃ。まるで、絵本を読むかのように!」
レイが書物に触れると、文字が頭の中に流れ込んできて、まるで日本語を読むかのように、その内容が理解できた。さらに、文字の羅列だけでなく、書いた人物の感情や、込められた「思い」のようなものまで、漠然とだが感じ取ることができた。まるで、タイムスリップして書いた人の心に触れているようだ。
「えっとね……これは、昔の人が、世界がどうやってできたか、って書いてるみたいだよ。なんか、書いた人、すごく頑張ったんだなあって感じる!」
レイは、書物に書かれている内容を、拙い言葉でだが説明し始めた。その内容は、学者たちが長年解読できなかった、世界の成り立ちに関する貴重な情報だった。セイリオスは、目を丸くしてレイを見つめている。
「その通りじゃ! その古文書には、太古の神々が世界を創造した際の、神話の一端が記されておる! お主の言霊理解は、単に言語を翻訳するだけでなく、文字や言葉の奥に込められた『魂の響き』や『思念』すらも読み取れるということじゃ!もはや『超能力通訳』じゃな!」
セイリオスは、レイの能力に改めて舌を巻いた。バルドルも、その雄大な瞳をわずかに見開いている。ルーナは、その言葉に深く頷いている。
「この力があれば、どんな国の言葉も、どんな古文書も、お主にとっては理解できる。さらには、そこに込められた作り手の『意図』や『感情』まで読み取れるとあれば、歴史の真実を紐解き、世界の謎を解き明かすことも可能になるじゃろう。お主は、この世界のあらゆる知識を、誰よりも早く、そして深く吸収することができるのじゃ。まさに、『知識の吸い込み魔』じゃな!」
セイリオスは、レイの頭を優しく撫でた。
「これで、お主が持つ四つの祝福、全てについて大まかに説明した。どれもが単体で強力な力じゃが、互いに連携することで、さらに大きな力を発揮する。そして、お主の『夢の植物図鑑』や、知っている楽しい遊びと組み合わせれば、この世界をもっと面白く、より良いものにすることも夢ではないぞ。お主は、まるで『魔法の発明家』じゃ!」
レイは、自分の持つ力が、どれほど奥深く、そして可能性に満ちているのかを実感した。
「うん! もっと頑張るね、セイリオス先生!僕、なんだかワクワクしてきた!」
レイの言葉に、セイリオスは満足げに頷いた。この特別授業は、レイの能力への理解を深めるだけでなく、彼がこれから歩むべき道への、確かな指針を与えてくれるだろう。レイは、従魔たちと共に、これからこの世界で何ができるのか、胸いっぱいに期待を膨らませた。うん、レイの「最強への道」は、まだまだ続く!




